大相撲九州場所千秋楽

 今場所も横綱の照ノ富士関は全休となりました。巡業では状態が悪そうだったので、休場になりそうだな、とは思っており、意外ではありませんが、今年(2023年)皆勤したのは夏場所だけで、こうも休場が続くと、稀勢の里関の件から横綱の休場を直ちに厳しく咎めるとがめる気にはならなかった私も、さすがにそろそろ横綱審議委員会が何か勧告してもよいのではないか、とも思います。照ノ富士関は、次の横綱の昇進まで引退しづらい、との気持ちもあるのかもしれませんが、あるいは、まだ年寄株を入手できていないのでしょうか。

 今場所最大の注目は先場所優勝した貴景勝関の横綱昇進だったでしょうが、先場所優勝したとはいえ11勝で、先々場所は全休、3場所前は8勝7敗、4場所前は途中休場で負け越していただけに、多くの報道で指摘されていたように、場所前には横綱昇進の機運は盛り上がっていなかったように思います。貴景勝関は初日から3連勝したものの、中日までに3敗し、今場所後の横綱昇進は絶望的となり、あるいは負け越しもあるのではないか、とさえ思いましたが、何とか勝ち越して勝敗としました。これで横綱昇進は白紙となったでしょうが、今場所の相撲内容からも、やはり貴景勝関は横綱に相応しくない、と改めて思いました。元々は貴乃花部屋に所属していただけに、応援したい気持ちもありますが。

 優勝争いは近年の通例のように終盤に入った時点では混戦模様でしたが、その中から霧島関と熱海富士関が抜け出し、2敗で後続に星二つの差をつけた両者が14日目に対戦し、やはりまだ力の差は大きいのか、霧島関が寄り切って勝ちました。千秋楽は、まず3敗の熱海富士関が琴ノ若関と対戦し、やはりまだ力の差があるのか、引き落としで敗れてしまい、霧島関の2回目の優勝が決まりました。2敗の霧島関は結びで貴景勝関と対戦し、今場所の勢いの差を反映してか突き落として勝ち、幕内では自身最高となる13勝としました。

 霧島関は、照ノ富士関を除けば、現時点で最も安定した実力がある、と言えそうで、その意味では最も横綱に近いのかもしれませんが、よく指摘されるように、「型がない」のは気になるところです。霧島関はこのままでも横綱に昇進できるかもしれませんが、横綱として安定した成績を残すのは難しいように思います。熱海富士関は初優勝を逃したものの、2場所続けて終盤まで優勝争いに加わったのは大きな財産となりそうで、まだ実力では上位陣とはっきりした差があるように思いますが、若いだけに期待も大きく、今後の大相撲を支える看板力士に成長してもらいたいものです。熱海富士関は横綱の照ノ富士関を筆頭に関取の多い伊勢ケ濱部屋所属であることも恵まれており、大怪我をしなければ、来年のうちに大関に昇進する可能性もあるとは思います。

 豊昇龍関は終盤になって優勝争いから脱落し、10勝5敗で場所を終えました。「型がない」とよく言われる豊昇龍関ですが、それとともに、大関としてはやや非力なところも今後の課題になりそうです。将来は横綱も期待されている豊昇龍関ですが、横綱昇進の課題はまだ多いように思います。また、すでに勝ち越していると、優勝争いから脱落した場合に気力が低下するように見えることも気になります。大関昇進と初優勝を期待された琴ノ若関も終盤に失速したものの、11勝4敗で踏みとどまりました。大関昇進にはまだ力不足といった感じですが、来場所13勝以上か12勝で優勝ならば、大関昇進となりそうで、急速に力をつけて大関に昇進しても不思議ではないだけの潜在的能力があるようにも思います。

 大栄翔関はこのところ三役で安定して勝ち越しを続けており、今場所も9勝6敗と勝ち越しましたが、押し相撲ということもあって不安定感はやはり否めず、大関に昇進できるだけの成績を残すのは難しそうです。7場所連続勝ち越し中だった若元春関は、6勝9敗と負け越しました。この間、小結で2場所、関脇で3場所連続勝ち越していましたが、これで大関昇進は完全に白紙となりましたし、年齢からしても大関昇進は難しそうです。初日から休場していた朝乃山関は8日目から出場し、4勝しました。体調を整えれば、関脇までは復帰できるでしょうが、若手も力をつけてきましたし、大関復帰は難しそうです。

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