オルドビス紀の脊椎動物の頭部軟骨化石
オルドビス紀の脊椎動物の頭部軟骨化石を報告した研究(Dearde et al., 2023)が公表されました。神経頭蓋は脊椎動物の頭部の不可欠な要素で、それ自体が重要な進化的新機軸です。しかし、その初期の進化はまだほとんど解明されておらず、顎口類(有顎脊椎動物)と円口類(ヌタウナギ類およびヤツメウナギ類)という2つの現生脊椎動物群の間では、形状に大きな相違があります。カンブリア紀の脊椎動物の出現と、三次元に保存されたものとして最初期の脊椎動物の神経頭蓋の間には1億年の年代的空白があり、これが現在の状態の起源をさらに不明瞭にしています。
本論文は、CT(コンピューター断層撮影)を用いて、アメリカ合衆国コロラド州のハーディング砂岩(Harding Sandstone)層から出土したオルドビス紀のステム群顎口類であるエリプティチウス・アメリカヌス(Eriptychius americanus)の頭蓋の構造を明らかにする。エリプティチウス・アメリカヌスの化石化した頭部には、眼窩前方の神経頭蓋と解釈された左右対称の軟骨群が保存されており、そこには、側部に位置する眼窩の前部、末端に配置された口と嗅球と松果体が取り囲まれていました。
これは、この最初期の顎口類では、円口類とは異なり、ガレアスピス類や骨甲類や板皮類と同様に、神経頭蓋が皮膚骨格と脳の間の空間を満たしていた、と示唆しています。一方、これらの軟骨群は融合して単一の神経頭蓋単位を形成しておらず、これは顎口類の派生的な形質と示唆されました。エリプティチウス・アメリカヌスは、顎口類の頭部の進化についての理解に存在する大きな時間的・系統的空白を埋めるもので、現生および絶滅分類群を含めて、これまでに記載されたどの脊椎動物とも構造が異なる神経頭蓋を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:脊椎動物の初期進化過程を解明する手掛かりをもたらす古代の魚
約4億5500万年前のものと推定されているオルドビス紀の無顎魚の頭部軟骨の化石を分析したところ、この頭部軟骨が、三次元的に保存された脊椎動物の頭蓋内骨格としては最古のものであることが分かった。この分析結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この研究は、脊椎動物の頭部の進化に関する重要な知見をもたらしている。
オルドビス紀の無顎魚は、最も初期の脊椎動物として知られている。この魚は、軟骨性の内部骨格を持っていたが、関節が連結した状態の遺骸化石はほとんど見つかっておらず、解剖学的構造がほとんど分かっていない。今回、Richard Deardenらは、4億5500万年前のハーディングサンドストーン層(米国コロラド州)から出土した無顎魚(Eriptychius americanus)の頭部化石をCT(コンピューター断層撮影)によって分析した。この頭部化石には、末端に位置する口や側方に配置された眼窩などの構造が収容された左右対称の融合していない軟骨(脳頭蓋の眼窩より前の部分)が含まれていた。この配置は、他の既知の脊椎動物の現生種と絶滅種とは大きく異なっている。
E. americanusは、古代の魚という点だけでなく、脊椎動物の系統発生上の位置付けという点からも重要視されている。この魚は、脳頭蓋を持つ他の魚類分類群(例えば骨甲類やガレアスピス類)とは進化的に遠い関係にある。E. americanusの解釈は非常に難しいが、最も初期の有顎脊椎動物が持っていた頭蓋の骨格がどのように形成されていたかを解明する手掛かりになる。
古生物学:最古の三次元的に保存された脊椎動物神経頭蓋
古生物学:オルドビス紀のステム群顎口類の立体的な神経頭蓋
今回、米国コロラド州のハーディング砂岩層から出土した、オルドビス紀の顎のないステム群顎口類Eriptychiusの頭部化石が報告されている。これは、三次元的に保存された頭部の軟骨群としては既知最古のものであり、最初期の脊椎動物の頭蓋形態の復元を試みる研究者たちの頭を悩ませるような特徴が数多く見られた。
参考文献:
Dearde RP. et al.(2023): The oldest three-dimensionally preserved vertebrate neurocranium. Nature, 621, 7980, 782–787.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06538-y
本論文は、CT(コンピューター断層撮影)を用いて、アメリカ合衆国コロラド州のハーディング砂岩(Harding Sandstone)層から出土したオルドビス紀のステム群顎口類であるエリプティチウス・アメリカヌス(Eriptychius americanus)の頭蓋の構造を明らかにする。エリプティチウス・アメリカヌスの化石化した頭部には、眼窩前方の神経頭蓋と解釈された左右対称の軟骨群が保存されており、そこには、側部に位置する眼窩の前部、末端に配置された口と嗅球と松果体が取り囲まれていました。
これは、この最初期の顎口類では、円口類とは異なり、ガレアスピス類や骨甲類や板皮類と同様に、神経頭蓋が皮膚骨格と脳の間の空間を満たしていた、と示唆しています。一方、これらの軟骨群は融合して単一の神経頭蓋単位を形成しておらず、これは顎口類の派生的な形質と示唆されました。エリプティチウス・アメリカヌスは、顎口類の頭部の進化についての理解に存在する大きな時間的・系統的空白を埋めるもので、現生および絶滅分類群を含めて、これまでに記載されたどの脊椎動物とも構造が異なる神経頭蓋を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:脊椎動物の初期進化過程を解明する手掛かりをもたらす古代の魚
約4億5500万年前のものと推定されているオルドビス紀の無顎魚の頭部軟骨の化石を分析したところ、この頭部軟骨が、三次元的に保存された脊椎動物の頭蓋内骨格としては最古のものであることが分かった。この分析結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この研究は、脊椎動物の頭部の進化に関する重要な知見をもたらしている。
オルドビス紀の無顎魚は、最も初期の脊椎動物として知られている。この魚は、軟骨性の内部骨格を持っていたが、関節が連結した状態の遺骸化石はほとんど見つかっておらず、解剖学的構造がほとんど分かっていない。今回、Richard Deardenらは、4億5500万年前のハーディングサンドストーン層(米国コロラド州)から出土した無顎魚(Eriptychius americanus)の頭部化石をCT(コンピューター断層撮影)によって分析した。この頭部化石には、末端に位置する口や側方に配置された眼窩などの構造が収容された左右対称の融合していない軟骨(脳頭蓋の眼窩より前の部分)が含まれていた。この配置は、他の既知の脊椎動物の現生種と絶滅種とは大きく異なっている。
E. americanusは、古代の魚という点だけでなく、脊椎動物の系統発生上の位置付けという点からも重要視されている。この魚は、脳頭蓋を持つ他の魚類分類群(例えば骨甲類やガレアスピス類)とは進化的に遠い関係にある。E. americanusの解釈は非常に難しいが、最も初期の有顎脊椎動物が持っていた頭蓋の骨格がどのように形成されていたかを解明する手掛かりになる。
古生物学:最古の三次元的に保存された脊椎動物神経頭蓋
古生物学:オルドビス紀のステム群顎口類の立体的な神経頭蓋
今回、米国コロラド州のハーディング砂岩層から出土した、オルドビス紀の顎のないステム群顎口類Eriptychiusの頭部化石が報告されている。これは、三次元的に保存された頭部の軟骨群としては既知最古のものであり、最初期の脊椎動物の頭蓋形態の復元を試みる研究者たちの頭を悩ませるような特徴が数多く見られた。
参考文献:
Dearde RP. et al.(2023): The oldest three-dimensionally preserved vertebrate neurocranium. Nature, 621, 7980, 782–787.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06538-y
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