アマゾン森林地帯の1万以上の土構造物

 アマゾン森林地帯の土構造物を報告した研究(Peripato et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。先住民社会はアマゾン川流域に12000年間以上居住しており、昔から土構造物を造るとともに景観に手を加えてきましたが、アマゾンの森林に対するその影響の規模は不明なままです。それは、そうした土構造物が人里離れた場所にあり、密生した植物によって覆い隠されていることが多いからです。そのため、アマゾン川流域にあるアメリカ大陸先住民の遺跡について、包括的な調査が行われたことはありませんでした。

 本論文はアマゾン川流域全体の5315km²の範囲から得られたLIDAR(light detection and ranging、光による検知と測距)というリモートセンシング技術から得られた情報を用いての発見を報告し、そのうち24点は以前には検出されなかった林冠下の先コロンブス期土構造物でした。アマゾン全域の大規模な考古学的遺跡の分布と存在量のモデル化から、10272~23648ヶ所の遺跡がまだ発見されておらず、そのほとんどは南西部で発見されるだろう、と示唆されます。以前には、LIDARを用いて先スペイン期アマゾン川流域の集落も特定されました(関連記事)。

 土構造物の出現率と顕著に関連する53種の栽培化された樹木も特定され、以前にもアマゾン川流域における植物栽培化の可能性が指摘されていましたが(関連記事)、改めて過去の植物管理が示唆されます。本論文で提示されたLIDAR調査データの範囲はアマゾン川流域の総面積の0.08%だけで、アマゾン全域の閉鎖林冠林は数千もの未発見の考古学的遺跡を含んでいる可能性が高く、そうした遺跡の周囲では先コロンブス期社会が活発に森林を改変しており、この発見は、アマゾンに対する古代人の影響の規模および現在の状態のより深い理解への機会を開きます。


参考文献:
Peripato V. et al.(2023): More than 10,000 pre-Columbian earthworks are still hidden throughout Amazonia. Science, 382, 6666, 103–109.
https://doi.org/10.1126/science.ade2541

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