大河ドラマ『どうする家康』第36回「於愛日記」

 今回は於愛の退場が描かれました。於愛はこれまで何度か見せ場があったものの、全体的にはさほど目立っていませんでしたが、今回は於愛の心情が掘り下げられました。それと関連して本作の特徴である過去の突然な描写が今回もあり、於愛が夫を失い、ひどく落ち込んでいるのに無理に明るく鷹揚に振舞っていて、瀬名(築山殿)から家康に仕えるよう指示されても、当初は家康を慕っていなかった、との心情が初めて示されました。織田信長と同様に退場間近で過去の重要な描写があり、その心情が明かされました。こうした手法は大河ドラマには向かない、と今まで否定的でしたが、大河ドラマの「作法」を堅苦しく考える必要もないわけで、本作の手法も娯楽ドラマとしては有かな、とも思います。
 
 成人の豊臣秀頼と千姫に片桐且元や大野治長や林羅山の配役も発表されているのに、成人役がまだ発表されていない茶々は、ついに今回初登場となりました。多くの人が予想していたように、母であるお市の方を演じた北川景子氏が茶々も演じることになり、確かに、これは大きな話題になるかもしれませんが、予想していた人がかなり多そうなことを考えると、残念ながら制作陣の期待ほどには話題にならないでしょう。茶々は今回顔見世程度の出番でしたが、一見するとかなり我儘な感じです。しかし、母の気の強さと無念を受け継ぎ、天下を取ると決意しているので、秀吉に取り入り、秀吉を翻弄し操ってやろうと考えての振る舞いなのかな、とも思います。本作の茶々は狂気を秘めた禍々しい感じの人物で、凛とした感じのお市の方とは別人のように見えますが、これは意図的な脚本と演出なのでしょう。茶々は家康を慕っていたお市の方の娘で、母の死に関して家康を恨んでいるので、家康にとって茶々が本作終盤最大の敵という位置づけになりそうで、今後の茶々の描写はたいへん注目されます。ただ、今回で於愛が退場となるのに、成人役の茶々もついに最後の方で登場となり、さらには再登場の千代をめぐる話にもかなりの分量が割かれたので、於愛にだけ注目が集まることにはならなさそうなのは、演じる広瀬アリス氏には不幸だったかな、とも思います。

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