遺伝的多様性を考慮した多遺伝子得点の正確度
遺伝的多様性を考慮した多遺伝子得点(Polygenic score、略してPGS)の正確度に関する研究(Ding et al., 2023)が公表されました。PGSは、異なる個体集団間での可搬性が、たとえば、祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)や健康の社会的決定要因などによって限られており、その公平な使用が妨げられています。PGSの可搬性は通常、人口集団水準で総計した単一の統計値(R2など)を用いて評価されており、人口集団内の個体間変動は無視されています。
本論文は、大規模で多様なロサンゼルス・生物銀行(ATLAS、 36778個体)をイギリス王国生物銀行(United Kingdom biobank、略してUKBB)の487409個体とともに用いることで、従来は「均一」と分類されていた遺伝祖先系統でも、検討した全ての人口集団において、PGSの正確度が連続的な遺伝的祖先系統に沿って個体間で低下することを明らかにします。この低下傾向は、PGS訓練データからの遺伝距離(genetic distance、略してGD)という連続的指標によってよく把握され、GDとPGSの正確度の間のピアソン相関は、84形質の平均で−0.95でした。UKBBで「白人」のイギリス人として分類された個体で訓練したPGSモデルを、ATLASのヨーロッパ祖先系統の個体に適用したところ、最も遠いGD十分位数の個体の正確度は、最も近い十分位数の個体を14%下回っていました。
注目すべきことに、ヒスパニック・ラテン祖先系統の個体群の最も近いGD十分位数には、ヨーロッパ系個体の最も遠いGD十分位数と同等のPGS成績が認められました。GDには、84形質中82形質でPGS推定値そのものとの有意な相関があり、PGSの解釈において連続的な遺伝的祖先系統を組み込むことの重要性がさらに強調されています。この結果から、PGSを検討するさいには、離散的な遺伝的祖先系統のクラスタ(まとまり)ではなく、連続的な遺伝的祖先系統を検討することの必要性が明らかにされています。本論文は人類の進化と拡散と適応に関するより詳細な研究とも関わってきそうで、その点でも注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
遺伝学:多遺伝子スコアの正確度は連続的な遺伝系統において変動する
遺伝学:多遺伝子スコアに多様性を取り入れる
今回、遺伝系統を連続体としてモデル化して、個体レベルでの多遺伝子スコア(PGS)の正確度が調べられ、遺伝系統を均一な集団と見なす従来の手法では、PGSの正確度が低下することが示されている。
参考文献:
Ding Y. et al.(2023): Polygenic scoring accuracy varies across the genetic ancestry continuum. Nature, 618, 7966, 774–781.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06079-4
本論文は、大規模で多様なロサンゼルス・生物銀行(ATLAS、 36778個体)をイギリス王国生物銀行(United Kingdom biobank、略してUKBB)の487409個体とともに用いることで、従来は「均一」と分類されていた遺伝祖先系統でも、検討した全ての人口集団において、PGSの正確度が連続的な遺伝的祖先系統に沿って個体間で低下することを明らかにします。この低下傾向は、PGS訓練データからの遺伝距離(genetic distance、略してGD)という連続的指標によってよく把握され、GDとPGSの正確度の間のピアソン相関は、84形質の平均で−0.95でした。UKBBで「白人」のイギリス人として分類された個体で訓練したPGSモデルを、ATLASのヨーロッパ祖先系統の個体に適用したところ、最も遠いGD十分位数の個体の正確度は、最も近い十分位数の個体を14%下回っていました。
注目すべきことに、ヒスパニック・ラテン祖先系統の個体群の最も近いGD十分位数には、ヨーロッパ系個体の最も遠いGD十分位数と同等のPGS成績が認められました。GDには、84形質中82形質でPGS推定値そのものとの有意な相関があり、PGSの解釈において連続的な遺伝的祖先系統を組み込むことの重要性がさらに強調されています。この結果から、PGSを検討するさいには、離散的な遺伝的祖先系統のクラスタ(まとまり)ではなく、連続的な遺伝的祖先系統を検討することの必要性が明らかにされています。本論文は人類の進化と拡散と適応に関するより詳細な研究とも関わってきそうで、その点でも注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
遺伝学:多遺伝子スコアの正確度は連続的な遺伝系統において変動する
遺伝学:多遺伝子スコアに多様性を取り入れる
今回、遺伝系統を連続体としてモデル化して、個体レベルでの多遺伝子スコア(PGS)の正確度が調べられ、遺伝系統を均一な集団と見なす従来の手法では、PGSの正確度が低下することが示されている。
参考文献:
Ding Y. et al.(2023): Polygenic scoring accuracy varies across the genetic ancestry continuum. Nature, 618, 7966, 774–781.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06079-4
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