大相撲名古屋場所千秋楽

 今場所は、直近2場所が三役でどちらも二桁勝利を挙げ、合計勝利数が21勝の豊昇龍関と21勝の若元春関と22勝の大栄翔関という3関脇の大関昇進が注目されました。また、不祥事で大関から三段目まで番付を下げた朝乃山関が東前頭4枚目と、上位陣と本格的に対戦するまで戻ってきたことも話題になりました。先場所長期休場明けで優勝した横綱の照ノ富士関は出場しましたが、角番を脱出した大関の貴景勝関と新大関の霧馬山改め霧島関が初日から休場となり、関脇陣が充実しているとはいえ、寂しさは否めませんでした。

 照ノ富士関は3日目に翔猿関に敗れて膝の状態が悪化したようで、4日目から休場となりました。膝の状態はかなり悪そうだったので、照ノ富士関がいつ引退しても不思議ではなく、横綱不在が長引くかもしれません。その代わりのように、4日目から新大関の霧島関が出場してきましたが、正直なところ、今場所は全休すべきではないのか、と思いました。霧島関はやはり本調子から程遠かったようで、一時は持ち直したように見えたものの、結局6勝7敗2休と負け越してしまいました。状態が戻れば、霧島関が来場所角番から脱出する可能性はかなり高いと思いますが、この強行出場が今後大きく影響するのではないか、と懸念されます。

 大関昇進のかかった3関脇は、全員勝ち越したものの、終盤までにそれなりに負けており、終盤に入って3関脇ともに緊張しているのかな、とも思う相撲内容が相次いだので、12日目を終えた時点では、全員今場所後に大関には昇進できないのではないか、とも思いました。けっきょく、14日目を終えて、豊昇龍関は11勝3敗、若元春関は9勝5敗、大栄翔関は9勝5敗で、大関昇進の可能性が残っているのは事実上、3関脇で唯一優勝争いに残った3敗の豊昇龍関だけでした。若元春関と大栄翔関ともに9勝6敗に終わったなか、小結で4場所連続勝ち越しとなり、小結で初めて二桁勝って11勝4敗とした琴ノ若関の方が、先に大関に昇進するかもしれません。豊昇龍関の大関昇進の可能性が高そうなので、琴ノ若関は来場所ついに関脇に昇進しそうです。琴ノ若関は来場所13勝以上で優勝なら大関に昇進しそうですが、まだそこまでの地力は感じられず、年内に大関に昇進できるかとなると、微妙なところです。

 3関脇の大関昇進は優勝争いとも絡んでいましたが、今場所は、終盤に入って平幕の錦木関が首位に立ち、北勝富士関が追いかける展開となり、近年ではすっかり慣れてしまいましたが、番付重視の観点からはまたしても荒れる展開となりました。北勝富士関は三役経験もある実力者とはいえ、もう3年以上平幕で31歳ですし、錦木関も同じく31歳で、腰の重さがあるとはいえ、三役経験もないだけに、かなり意外な展開でした。しかし、終盤になって緊張あるいは疲れがあったのか、平幕相手に4連敗し、10勝5敗で優勝を逃しました。さらに、まだ入門してから4場所目の伯桜鵬関が13日目に二桁勝利として優勝争いに絡んできたのには驚きました。確かに、伯桜鵬関は入門時から大器と注目されていましたが、肩の状態が悪そうな中で、終盤には上位陣とも対戦して勝ったのは見事だと思います。ただ、相撲の上手さや度胸はまだ入門してから4場所とは思えないくらいですが、大関から横綱に昇進するには、力強さが足りないように思います。

 千秋楽を迎えた時点で、優勝争いは3敗の豊昇龍関・北勝富士関・伯桜鵬関に絞られました。まず北勝富士関がと錦木関と対戦し、引き落としで勝ち、優勝決定戦進出を決めました。次に結び前の一番で豊昇龍関と伯桜鵬関が対戦し、やはり地力と経験の差から豊昇龍関が上手投げで勝ち、優勝決定戦進出を決めました。優勝決定戦では、豊昇龍関が現在の実力差を反映して押し出しで勝ち、初優勝を果たしました。豊昇龍関は大関昇進をほぼ確実とし、貴景勝関が以前の状態に戻れるのか不明なだけに、相撲協会の期待は大きいでしょう。ただ、豊昇龍関にはまだ横綱に昇進できるだけの力強さがないように思いますし、強引な相撲が多いので、負傷も心配です。

 朝乃山関は7日目に豊昇龍関に負けたさいに腕を痛めて8日目から11日目まで休場しましたが、12日目から再出場し、8勝4敗3休と勝ち越しました。再出場後の状態は明らかに悪かったものの、さすがに地力はあります。朝乃山関が出場停止中に3関脇をはじめとして上位陣が力をつけてきてきおり、関脇までは復帰できそうですが、大関復帰はかなり難しいように思います。それでも、処分が重かったことへの同情や、「正統派」力士ということもあってか、朝乃山関の人気は高く、大怪我をしなければ、長く上位で人気力士として活躍できそうです。

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