ペルム紀末の大絶滅から急速に回復した海洋生態系

 海洋生態系のペルム紀末の大絶滅からの急速な回復を報告した研究(Dai et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。化石群集の保存状態が良好であることは、深部時間における進化的革新を理解するうえできわめて重要な知見です。現在見られるような海洋生態系の構造は、約2億5200万年前のPTME発生後に出現しました。PTMEにより、地球の生物の大部分が姿を消し、海洋種の80%以上が絶滅しました。PTME後から前期三畳紀にかけて海洋生物が回復した時期は、進化的変化にとって重要な時期で、この間に、現在海洋に広がる生態系の基礎が築かれた、と広く考えられています。しかし、この重要な時期の海洋化石が相対的に少ないため、PTME後の海洋生物相の変化については、ほとんど解明されていません。これまで、PTME後の海洋生態系回復は漸進的で段階的だった、との見解も提示されていました。

 この研究は、中華人民共和国貴州省貴陽市近郊の大冶層(Daye Formation)から産出した、ひじょうに保存状態の良好な三畳紀初期の化石群集「貴陽生物相」を報告します。高精度ウラン鉛年代測定の結果、貴陽生物群の年代は2億5083万+7万/-6万年前と判明しました。これはペルム紀-三畳紀の大量絶滅(PTME)からわずか108万±8万年後で、この化石群集はこれまでに発見された中生代最古の化石産出地を示します。貴陽市の生物群は少なくとも12綱19目から構成され、多様な魚類や甲殻類が含まれ、栄養的に複雑な海洋生態系と明らかにされました。したがって、PTME後の海洋生態系回復は漸進的で段階的だった、との見解と異なり、この生物群はPTME後に現代型の海洋生態系が急速に出現したことを示唆しています。


参考文献:
Dai X. et al.(2023): A Mesozoic fossil lagerstätte from 250.8 million years ago shows a modern-type marine ecosystem. Science, 379, 6632, 567–572.
https://doi.org/10.1126/science.adf1622

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