大河ドラマ『どうする家康』第21回「長篠を救え!」

 今回は長篠合戦へと至る経緯が描かれました。武田軍が徳川方の長篠城を包囲し、鳥居強右衛門が徳川家康に救援を要請し、家康は織田信長に、大軍を派遣しなければ織田と手切れする、と伝えて信長は自ら大軍を率いて出陣しますが、信長と家康との間には緊張感が漂い、信長はこの機に徳川を家臣にする、と秀吉から家康と家臣に伝えさせます。確かに、織田と徳川の関係は、次第に徳川が織田に従属していく傾向にあったとはいえ、さすがに家康がこのように信長を脅迫したり、信長が直接家康に臣下となるよう伝えたりしたのは、考えにくいように思います。ただ、時代考証担当の平山優さんの指摘によると、援軍に来なければ織田と手を切り武田と合力する、と家康が言ったとされる史料は、近世のものではあるものの存在するそうです。まあ、娯楽ドラマとして、織田と徳川との関係の変化を家康や信長や秀吉の直接的やり取りで戯画化した演出は、そこまで批判すべきでもないかな、とは思います。このやり取りは、信康と瀬名(築山殿)の死につながっていくのでしょうか。

 緊迫した家康と信長の関係を救ったのは鳥居強右衛門の信長への決死の訴えでした。前回の大岡弥四郎もそうでしたが、今回の鳥居強右衛門もいきなり登場して見せ場を作ってすぐに退場となり、お市の方の侍女の阿月もほぼ1回だけの登場だったように、どうも本作は、1回だけ見せ場のある人物を唐突に登場させる傾向があります。正直なところ、この傾向に私はかなり否定的で、1回でも大きな見せ場を作るのなら、夏目広次のように短くてもそれ以前から何回か登場させるべきなのではないか、と思います。「声の大きな」大河ドラマ愛好者もしくは「評論家」には罵倒されることが多いように思われる本作を、私は比較的楽しんで視聴してきましたが、本作のこうした傾向には疑問が残るところです。

 前回最後に瀬名と武田の間者である千代が接触し、瀬名が千代とどのような駆け引きをするのか、注目していましたが、2人で徳川と武田の戦いを回避し、平和をもたらすべく裏で画策する、ということでしょうか。あるいは、これが武田と通じたとみなされて、瀬名は殺害されるか自害に追い込まれるのでしょうか。今回は、家康と信長や秀吉とのやり取りなど、「声の大きな」大河ドラマ愛好者もしくは「評論家」には罵倒される要素が多かったように思いますが、鳥居強右衛門の妄想や、一旦は武田に屈しながら亀姫の想いを思い出して奥平家臣としての道を全うしたことなど、娯楽ドラマとして工夫もあり、不満もありますが、全体的には楽しめました。今回は亀姫が目立っており、演者の當真あみさんは、将来の朝ドラ主演の有力候補ではないか、と思います。

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