『卑弥呼』第110話「本当の真」
『ビッグコミックオリジナル』2023年7月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハとミマアキが、津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)国のアビル王が伝えた大陸の情勢は正しいのか、悩んでいるところで終了しました。今回は、暈(クマ)の国の山中にて、逃亡するアカメとナツハ(チカラオ)を、鞠智彦(ククチヒコ)の配下の志能備(シノビ)が追っている場面から始まります。鞠智彦の配下の志能備は、足音からアカメの動きが止まったことを悟り、逃げても無駄と諦めたのだろう、と推測します。足音からは多くのイヌとオオカミがいることも推測され、ナツハがなぜ自分たちを裏切るのか、鞠智彦の配下の志能備には理解できません。2人だけとはいえ、ナツハもアカメも志能備なので、警戒した鞠智彦の配下の志能備は、先に兵を行かせることにします。暈の兵が進むと、多くのイヌとオオカミが待ち構えていました。それでも暈の兵は進軍し、ナツハはイヌやオオカミと連動して暈の兵士を殺害していきます。暈の兵は全滅し、鞠智彦の配下の志能備はナツハが志能備としてさらに腕を上げたことに感心します。鞠智彦の配下の志能備のスサが1人で進み、ナツハの術を見破りますが、アカメが背後からスサを刺します。鞠智彦の配下の志能備は激昂しますが、頭領は形勢が変わったと判断して撤退します。その直後に兵を率いたヌカデが現れ、鞠智彦の配下の志能備の頭領は、いち早くそれに気づいたのでしょう。
伊岐(イキ、現在の壱岐諸島でしょう)国では、那(ナ)国の大夫であるトメ将軍が、津島国のアビル王が禁じているにも関わらず、加羅(伽耶、朝鮮半島)に渡ろうと考えていました。アビル王の話が嘘か真か、自ら確かめる必要があり、それには実際に大海を渡るしかない、というわけです。津島国に寄港せずして加羅へ渡航すするのは不可能だ、と伊岐国のイカツ王はトメ将軍を諭しますが、アビル王は現在那国の客人なので、王が不在なら国の警固に隙ができるのではないか、とトメ将軍は意図を説明します。すると一瞬考えこんだイカツ王は、津島国の日守(ヒマモ)りで、黒島に縁戚のいるアシナカを呼びます。アシナカは加羅への航路をトメ将軍とヤノハと旧知の漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)である何(ハウ)に説明します。加羅へは通常、伊岐の都から津島南端の豆酘港(ツツノミナト)を経て、津島の都に寄港し、加羅に向かいします。黒島と津島の近くの島ですが、波が荒いため、手練れの舟乗り以外は座礁してしまい。容易に近づけず、黒島側の海から加羅にたどり着いた者を聞いたことがない、とイカツ王はトメ将軍と何に説明します。黒島にはアシナカの縁戚がいるので水と食糧を補給してもらえるわけですが、まだ成功例が知られていない航路です。それでもトメ将軍は、何事も初めてはある、と言って黒島側からの航海を決断します。するとアシナカは、黒島まで自分が示斎(ジサイ、航海のさいに、万人の不幸を引き受けて人柱になる神職)を務める、と提案し、トメ将軍と何は感謝します。
山社(ヤマト)では、ヤノハが無事帰還したアカメとナツハとヌカデをミマアキとともに迎えていました。報告があるなら直接ヤノハに伝えるよう、ミマアキに促されたアカメは、自分がヤノハの影の存在であることから、躊躇います。するとヤノハは、アカメはもはや自分の影ではなく友だと言って、皆の前で話すよう、アカメに促します。アカメは、津島国のアビル王が海の彼方の大国(漢王朝でしょうか)の歴史を偽っている、と報告します。アカメからの報告を聞いてミマアキが微笑み、これで「本当」の真が手に入った、とヤノハが満足そうに言うところで、今回は終了です。
今回は、アカメとナツハの山社への無事の帰還に、大陸情勢をめぐる駆け引きが描かれました。窮地のアカメとナツハを救ったのは、やはりヤノハからアカメの救出を命じられたヌカデでした。これにより、ヤノハとヌカデとアカメの絆もいっそう強くなりそうです。トメ将軍は津島国を経ずに加羅へ渡海しようと考えており、これにより、大陸の現在の正確な情報がヤノハに伝えられ、津島国のアビル王の裏切りをヤノハが確信するようになるのでしょうか。ただ、遼東半島から朝鮮半島にかけて公孫氏が勢力を築いていることも確かで、魏への遣使はまだ先になりそうですから、今後しばらくは公孫氏が重要な役割を担うのかもしれません。いよいよ大陸情勢が本格的に描かれそうで、ますます壮大な話になってきたので、今後の展開もたいへん楽しみです。
伊岐(イキ、現在の壱岐諸島でしょう)国では、那(ナ)国の大夫であるトメ将軍が、津島国のアビル王が禁じているにも関わらず、加羅(伽耶、朝鮮半島)に渡ろうと考えていました。アビル王の話が嘘か真か、自ら確かめる必要があり、それには実際に大海を渡るしかない、というわけです。津島国に寄港せずして加羅へ渡航すするのは不可能だ、と伊岐国のイカツ王はトメ将軍を諭しますが、アビル王は現在那国の客人なので、王が不在なら国の警固に隙ができるのではないか、とトメ将軍は意図を説明します。すると一瞬考えこんだイカツ王は、津島国の日守(ヒマモ)りで、黒島に縁戚のいるアシナカを呼びます。アシナカは加羅への航路をトメ将軍とヤノハと旧知の漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)である何(ハウ)に説明します。加羅へは通常、伊岐の都から津島南端の豆酘港(ツツノミナト)を経て、津島の都に寄港し、加羅に向かいします。黒島と津島の近くの島ですが、波が荒いため、手練れの舟乗り以外は座礁してしまい。容易に近づけず、黒島側の海から加羅にたどり着いた者を聞いたことがない、とイカツ王はトメ将軍と何に説明します。黒島にはアシナカの縁戚がいるので水と食糧を補給してもらえるわけですが、まだ成功例が知られていない航路です。それでもトメ将軍は、何事も初めてはある、と言って黒島側からの航海を決断します。するとアシナカは、黒島まで自分が示斎(ジサイ、航海のさいに、万人の不幸を引き受けて人柱になる神職)を務める、と提案し、トメ将軍と何は感謝します。
山社(ヤマト)では、ヤノハが無事帰還したアカメとナツハとヌカデをミマアキとともに迎えていました。報告があるなら直接ヤノハに伝えるよう、ミマアキに促されたアカメは、自分がヤノハの影の存在であることから、躊躇います。するとヤノハは、アカメはもはや自分の影ではなく友だと言って、皆の前で話すよう、アカメに促します。アカメは、津島国のアビル王が海の彼方の大国(漢王朝でしょうか)の歴史を偽っている、と報告します。アカメからの報告を聞いてミマアキが微笑み、これで「本当」の真が手に入った、とヤノハが満足そうに言うところで、今回は終了です。
今回は、アカメとナツハの山社への無事の帰還に、大陸情勢をめぐる駆け引きが描かれました。窮地のアカメとナツハを救ったのは、やはりヤノハからアカメの救出を命じられたヌカデでした。これにより、ヤノハとヌカデとアカメの絆もいっそう強くなりそうです。トメ将軍は津島国を経ずに加羅へ渡海しようと考えており、これにより、大陸の現在の正確な情報がヤノハに伝えられ、津島国のアビル王の裏切りをヤノハが確信するようになるのでしょうか。ただ、遼東半島から朝鮮半島にかけて公孫氏が勢力を築いていることも確かで、魏への遣使はまだ先になりそうですから、今後しばらくは公孫氏が重要な役割を担うのかもしれません。いよいよ大陸情勢が本格的に描かれそうで、ますます壮大な話になってきたので、今後の展開もたいへん楽しみです。
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