非鳥類獣脚類恐竜の小型化と大型化

 体の大きさがさまざまな、非鳥類獣脚類恐竜クレード(単系統群)の小型化と大型化に関する研究(D'emic et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。進化の過程で、多くの種がひじょうに大きな体格に進化してきました。動物の進化史において多くの分類群が大型化もしくは小型化し、きわめて近縁の種でも体の大きさに違いが見られることもあります。一般的に、動物は成長速度の増加に基づいて大型化する、と考えられてきました。しかし、この問題を多くの種にわたって、比較系統学的な枠組みで検討した研究はほとんどありません。その理由は部分的には、こうした問題について評価できるだけの多様な体の大きさがみられるクレードで、生息期間が長く、豊富な標本が得られるものは殆どないからです。羊膜類においても、体の大きさの進化を支える主要な発生戦略は、成長期間よりも成長速度の調整である、と考えられています。しかし、この原理を支持する理論的および実験的研究の多くは、対での比較に焦点を当てており、明確な系統的枠組みを欠いています。

 この研究は、さまざまな体の大きさ(長さ5m未満から長さ12m超越まで)の非鳥類獣脚類恐竜を対象に、体長進化の基盤となる発生戦略を検討した初めての大規模な系統的比較分析を行ないました。より具体的には、非鳥類獣脚類恐竜42種から得られた化石測定(1年間に沈着した皮質骨の成長線など)を用いて、体の大きさと成長の速度に関する包括的な組織学的データセットが構築されました。その結果、予想に反して、成長速度と成長期間の変化が非鳥類獣脚類の体格差の進化にほぼ等しい役割を果たしたことと、おそらく無脊椎動物全般の体格差の進化に等しい役割を果たした、と明らかになりました。


参考文献:
D'emic MD. et al.(2023): Developmental strategies underlying gigantism and miniaturization in non-avialan theropod dinosaurs. Science, 379, 6634, 811–814.
https://doi.org/10.1126/science.abo7452

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