大河ドラマ『どうする家康』第22回「設楽原の戦い」

 今回は長篠合戦が描かれました。長篠合戦については、本作の時代考証を担当している平山優氏の著書があり、先進的な織田家と後進的な武田家という把握に説得力はなく、長篠の戦いの結果を先進的・後進的という枠組みで説明することに妥当性がない、と指摘されています(関連記事1および関連記事2)。本作では長篠合戦がどのように描かれるのか、注目していましたが、新たな合戦のやり方を印象づけるような描写になっており、この点では旧説というか俗説を踏襲した感があって、合戦場面はなかなか迫力があったので、娯楽ドラマとしてこれでもよいのではないか、と思います。

 長篠合戦といえば酒井忠次の活躍は比較的よく知られているでしょうが、本作では徳川家臣で重要人物の一人と位置づけられているだけに、見せ場はあるとしても、ひねってくる作風なのでどう描かれるのか、注目していました。今回は、織田方が示し合わせて徳川軍に奇襲をやらせた、という話になっており、本作における現在の徳川と織田の微妙な関係も反映した、なかなか面白い話になっていました。ただ、酒井忠次の活躍自体はほとんど描かれず、まあ残念ではありますが、徳川家康と織田信長の関係性が本作の軸の一つになっているので、大きな問題ではないと思います。今回、家康は信長に仕えることを決断しましたが、一方で信長が徳川家を強く警戒するようになり、信康が大きく変わっていったことも気になります。こうした変化が、信康事件とつながるのでしょうか。また、佐久間信盛追放につながるような描写も注目されます。

 武田勝頼は、本作では武勇だけではなく知略に優れ、器も大きい人物として描かれてきたように思います。その武田勝頼を長篠合戦でどう敗北させるのか、という点も注目していましたが、重臣が撤退を進める中で、撤退が上策と認識しつつ、父である武田信玄の手堅いやり方では天下を取れない、と考えて、父を超えるべく撤退せずに突撃した、という話になっていました。慢心から、また重臣との軋轢から焦って無謀な突撃に出たのではなく、これまでの人物造形に沿った描写になっており、上手く構成されていると思います。主人公側ではない大河ドラマで武田家が描かれるさいには、もちろん家臣はあまり登場しませんが、山県昌景は登場することが多く、本作では武田家臣として初期から登場していた山県昌景は、今回の討ち死にのさいにかなりの見せ場があったのは、よかったと思います。

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