大河ドラマ『どうする家康』第16回「信玄を怒らせるな!」

 今回は徳川と武田との対立の激化が描かれました。武田信玄の調略により徳川領が切り崩されていき、脅威に思った徳川家康は上杉謙信と提携しようとしますが、信玄に悟られ、信玄は各地に家康非難の書状を送ります。ただ、家康はこれによって信玄が怒ったというよりも、信玄は当初から遠江侵攻を考えており、口実に使っただけで、遠江への侵攻時期を窺っているだけだ、と見抜いているようで、ここは家康の成長を感じさせます。確かに、家康は関係の悪化した武田信玄に対抗するため上杉謙信との提携を図り、これが徳川と武田との対立を決定的なものにしたようではあるものの、その時点では武田は北条と対立しており、徳川領へと全面的に侵攻するだけの余裕はなかったようです。

 今回は武田家に人質に出ていた家康の異父弟である久松源三郎の奪還作戦にかなりの時間が割かれましたが、これも含めて家康と信玄のやり取りは、未熟な家康と大人物の信玄という対比が強調されていました。信玄は家康に戦国時代の領主としての視覚と覚悟を伝えた感もあり、家康にとってこれまでその模範は今川義元でしたが、今後は信玄の教えも活かしていき、ついには天下人になる、という話になるのでしょうか。本作では家康と信玄が1回直接会っており(おそらく実際には直接会ってはいないでしょうが)、同じく徳川家康を主人公とする1983年放送の大河ドラマ『徳川家康』と比較して、信玄の存在が大きいように思います。

 信玄は余命が短いことを悟っているようで、大勝負に出た、ということでしょうか。武田勝頼は今回が初登場となります。勝頼はかなり厳しい教育を受けて育ったようで、単なる我儘な後継者とは描かれていません。余命が短いことを悟った信玄は、貧しい国に生まれて飛躍が遅れたことを怨んできた、と息子の勝頼に打ち明け、その自身の夢を勝頼に託しており、これが勝頼にとっての束縛というか呪いになるのでしょうか。勝頼の最期がどのように描かれるのかも注目されます。家康を襲撃して捕らえられた井伊虎松(直政)は釈放され、強烈な印象を残したものの、本格的な登場はもう少し先になりそうで、こちらも楽しみです。

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