中国で発見されたデニソワ人かもしれない人類化石
種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)について記事をまとめて(関連記事)から4年近く経過し、まとめ記事を更新しよう、とここ1~2年はずっと考えてきましたが、当ブログで取り上げただけでもデニソワ人関連の研究はそれなりにあり、整理するのが大変なので、手をつけていません。そこで、まず簡潔にまとまっているオーストラリア博物館のデニソワ人に関する記事を訳しました(関連記事)。今回は、デニソワ人に分類できるかもしれない、中国で発見された中期~後期更新世のホモ属遺骸をまとめます。
デニソワ人は、シベリア南部のアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で発見された人類遺骸のDNA解析により初めて存在が確認された、現生人類(Homo sapiens)ともネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とも異なるホモ属の分類群です。デニソワ人が特異的なのは、基本的には形態学的に定義されている他の人類系統の分類群とは異なり、遺伝学的に定義されていることです。デニソワ人の全身骨格はまだ確認されておらず、既知のホモ属遺骸の中にデニソワ人に分類できるものがある可能性は高そうですが、そうした化石ではまだDNAが解析されておらず、デニソワ人なのか否か、確認できません。
これはデニソワ人の存在が初めて報告された時から変わっていませんが、その時から、中国で発見された分類の曖昧な中期~後期更新世ホモ属遺骸の中に、デニソワ人に分類できる化石があるのではないか、との見解が提示されており(関連記事)、この見解はその後の研究の進展によりますます有力になっている、と言えるかもしれません。まず、チベット高原に位置する中華人民共和国甘粛省甘南チベット族自治州夏河(Xiahe)県のチベット高原の白石崖溶洞(Baishiya Karst Cave)で発見されたホモ属の下顎骨化石(夏河下顎骨)が、タンパク質の総体(プロテオーム)を解析し、アミノ酸配列を識別することで、デニソワ人と同系統と明らかになりました(関連記事)。これにより、デニソワ人がデニソワ洞窟よりずっと東方にも存在していたことが示されました。
さらに、台湾沖で発見された、非現生人類ホモ属の澎湖1号(Penghu 1)下顎骨(関連記事)が、夏河下顎骨と同じく大臼歯で3本の歯根(3RM)が確認されたことから、デニソワ人かもしれない、と指摘されましたが、その見解をめぐって議論になっています(関連記事)。ただ、3RM以外にも、澎湖1号には歯の大きさの点でデニソワ人との類似性があります。仮に、澎湖1号もデニソワ人だとすると、デニソワ人はチベット高原と台湾沖付近にも存在したことになるわけで、その地理的分布からも、中国で発見された分類の曖昧な中期~後期更新世ホモ属遺骸の中にデニソワ人に分類させる化石がある、という見解の傍証となるでしょう。
具体的なデニソワ人候補となると、古くから知られている化石では、中国で発見された河北省張家口(Zhangjiakou)市の陽原(Yangyuan)県の侯家窰(Xujiayao)遺跡で発見された12万~6万年前頃の歯(関連記事)、河南省許昌市(Xuchang)霊井(Lingjing)遺跡で発見された、125000~105000年前頃の頭蓋(関連記事)、広東省韶関市の馬壩(Maba)遺跡の13万年前頃の頭蓋、陝西省渭南市の大茘(Dali)遺跡の25万年前頃の頭蓋、遼寧省営口市の金牛山(Jinniushan)遺跡の30万~20万年前頃の頭蓋、安徽省池州市(Chizhou)東至県(Dongzhi County)の華龍洞(Hualongdong)遺跡の30万年前頃の頭蓋などがあります。
澎湖1号を報告した研究(関連記事)では、中国で発見された分類の曖昧な中期~後期更新世ホモ属遺骸のうち、大きな歯と頑丈な(厚い)下顎骨という点で澎湖1号と類似しているのは安徽省馬鞍山市(Ma'anshan)の和県(Hexian)の中期更新世の下顎骨ではあり、他の中国の中期~後期更新世ホモ属遺骸とは似ていない、と指摘されています。ただ、ラオスで発見された164000~131000年前頃となるホモ属の歯をデニソワ人と分類した昨年(2022年)公表された研究(関連記事)からも示されるように、デニソワ人系統は広範に分布していたようなので、遺伝学的研究(関連記事)からも示唆されるように大きく分岐していき、形態に大きな違いが生じたかもしれず、澎湖1号も許昌市霊井遺跡の頭蓋も広義のデニソワ人系統に分類される可能性はあるでしょう。
デニソワ人との関連で注目される近年報告された中国のホモ属頭蓋としては、一昨年に公表された、黒竜江省ハルビン市で発見された309000~138000年前頃と推定される化石(ハルビン頭蓋)があります(関連記事)。ハルビン頭蓋と夏河下顎骨の歯が類似していることも報告されており、ハルビン頭蓋がデニソワ人に分類される可能性は高そうです。ハルビン頭蓋は新種ホモ・ロンギ(Homo longi)と分類できる、とも指摘されており、ハルビン頭蓋がDNA解析かプロテオーム解析によりデニソワ人に分類されれば、デニソワ人の正式な分類名はホモ・ロンギとなるのでしょうか。ハルビン頭蓋も含めて、中国で発見された中期~後期更新世の分類の曖昧なホモ属遺骸の全てをデニソワ人系統に分類できるわけではないかもしれませんが、そのうち複数がデニソワ人系統に分類される可能性は高い、と考えています。
デニソワ人は、シベリア南部のアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で発見された人類遺骸のDNA解析により初めて存在が確認された、現生人類(Homo sapiens)ともネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とも異なるホモ属の分類群です。デニソワ人が特異的なのは、基本的には形態学的に定義されている他の人類系統の分類群とは異なり、遺伝学的に定義されていることです。デニソワ人の全身骨格はまだ確認されておらず、既知のホモ属遺骸の中にデニソワ人に分類できるものがある可能性は高そうですが、そうした化石ではまだDNAが解析されておらず、デニソワ人なのか否か、確認できません。
これはデニソワ人の存在が初めて報告された時から変わっていませんが、その時から、中国で発見された分類の曖昧な中期~後期更新世ホモ属遺骸の中に、デニソワ人に分類できる化石があるのではないか、との見解が提示されており(関連記事)、この見解はその後の研究の進展によりますます有力になっている、と言えるかもしれません。まず、チベット高原に位置する中華人民共和国甘粛省甘南チベット族自治州夏河(Xiahe)県のチベット高原の白石崖溶洞(Baishiya Karst Cave)で発見されたホモ属の下顎骨化石(夏河下顎骨)が、タンパク質の総体(プロテオーム)を解析し、アミノ酸配列を識別することで、デニソワ人と同系統と明らかになりました(関連記事)。これにより、デニソワ人がデニソワ洞窟よりずっと東方にも存在していたことが示されました。
さらに、台湾沖で発見された、非現生人類ホモ属の澎湖1号(Penghu 1)下顎骨(関連記事)が、夏河下顎骨と同じく大臼歯で3本の歯根(3RM)が確認されたことから、デニソワ人かもしれない、と指摘されましたが、その見解をめぐって議論になっています(関連記事)。ただ、3RM以外にも、澎湖1号には歯の大きさの点でデニソワ人との類似性があります。仮に、澎湖1号もデニソワ人だとすると、デニソワ人はチベット高原と台湾沖付近にも存在したことになるわけで、その地理的分布からも、中国で発見された分類の曖昧な中期~後期更新世ホモ属遺骸の中にデニソワ人に分類させる化石がある、という見解の傍証となるでしょう。
具体的なデニソワ人候補となると、古くから知られている化石では、中国で発見された河北省張家口(Zhangjiakou)市の陽原(Yangyuan)県の侯家窰(Xujiayao)遺跡で発見された12万~6万年前頃の歯(関連記事)、河南省許昌市(Xuchang)霊井(Lingjing)遺跡で発見された、125000~105000年前頃の頭蓋(関連記事)、広東省韶関市の馬壩(Maba)遺跡の13万年前頃の頭蓋、陝西省渭南市の大茘(Dali)遺跡の25万年前頃の頭蓋、遼寧省営口市の金牛山(Jinniushan)遺跡の30万~20万年前頃の頭蓋、安徽省池州市(Chizhou)東至県(Dongzhi County)の華龍洞(Hualongdong)遺跡の30万年前頃の頭蓋などがあります。
澎湖1号を報告した研究(関連記事)では、中国で発見された分類の曖昧な中期~後期更新世ホモ属遺骸のうち、大きな歯と頑丈な(厚い)下顎骨という点で澎湖1号と類似しているのは安徽省馬鞍山市(Ma'anshan)の和県(Hexian)の中期更新世の下顎骨ではあり、他の中国の中期~後期更新世ホモ属遺骸とは似ていない、と指摘されています。ただ、ラオスで発見された164000~131000年前頃となるホモ属の歯をデニソワ人と分類した昨年(2022年)公表された研究(関連記事)からも示されるように、デニソワ人系統は広範に分布していたようなので、遺伝学的研究(関連記事)からも示唆されるように大きく分岐していき、形態に大きな違いが生じたかもしれず、澎湖1号も許昌市霊井遺跡の頭蓋も広義のデニソワ人系統に分類される可能性はあるでしょう。
デニソワ人との関連で注目される近年報告された中国のホモ属頭蓋としては、一昨年に公表された、黒竜江省ハルビン市で発見された309000~138000年前頃と推定される化石(ハルビン頭蓋)があります(関連記事)。ハルビン頭蓋と夏河下顎骨の歯が類似していることも報告されており、ハルビン頭蓋がデニソワ人に分類される可能性は高そうです。ハルビン頭蓋は新種ホモ・ロンギ(Homo longi)と分類できる、とも指摘されており、ハルビン頭蓋がDNA解析かプロテオーム解析によりデニソワ人に分類されれば、デニソワ人の正式な分類名はホモ・ロンギとなるのでしょうか。ハルビン頭蓋も含めて、中国で発見された中期~後期更新世の分類の曖昧なホモ属遺骸の全てをデニソワ人系統に分類できるわけではないかもしれませんが、そのうち複数がデニソワ人系統に分類される可能性は高い、と考えています。
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