ハインリッヒイベント型の気候変動の両極への影響
ハインリッヒイベント(Heinrich Event、略してHE)型の気候変動の両極への影響エピに関する研究(Martin et al., 2023)が公表されました。HEは人類の進化において重要な影響を及ぼした、と考えられています(関連記事)。最終氷期の間、ローレンタイド(Laurentide)氷床では極端な氷山の放出事象が起き、これらの事象は北大西洋の堆積物に記録されています。こうしたHEは、水文学的循環および生物地球化学的循環の広範な崩壊を含めて、広範囲にわたり気候に影響を及ぼしました。こうした事象は、大西洋鉛直循環がきわめて弱くなった寒冷期である、ハインリッヒ亜氷期に起きました。ハインリッヒ型の変動は、年代が充分に決定された温度代理指標であるグリーンランドの水同位体比には明確に見られず、これが、地域的な気候に対するその影響や、南極の気候変動との同期評価の取り組みを複雑にしています。
本論文は、HEがグリーンランドの温度に検出可能な影響を及ぼさず、いくつかのハインリッヒ亜氷期の開始時期に寒冷化が起こっており、両方の種類のハインリッヒ型の変動が南極の気候に明瞭な痕跡を残している、と示します。南極の氷床コアは、HE時のメタン増加と同時期に起こった温暖化の加速を示しており、グリーンランドの気候の兆候は見られないにも関わらず、大気の遠隔相関を示唆しています。高感度の温度代理指標であるグリーンランドの氷床コアの窒素安定同位体比は、ハインリッヒ亜氷期1(1950年を基点として17800年前頃)の開始時に約3度急激に寒冷化したことを示しています。南極の温暖化は、この寒冷化より133±93年遅れて生じており、これは海洋の遠隔相関と一致します。逆説的ですが、近い場所の方が遠い場所よりHEの影響が小さいので、空間的に複雑な事象の動態が示唆されます。HEは人類進化とも深く関わっているかもしれず、研究の進展が注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
気候科学:ハインリッヒ型気候変動の両極への影響と同期
気候科学:ハインリッヒイベントの両極への影響
今回、氷山の大群が北大西洋に放出された事象が、グリーンランドの気温にはほとんど影響を及ぼさなかったことが示されている。一方、こうした「ハインリッヒイベント」は、同時期の南極の温暖化と関連していた。
参考文献:
Martin KC. et al.(2023): Bipolar impact and phasing of Heinrich-type climate variability. Nature, 617, 7959, 100–104.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-05875-2
本論文は、HEがグリーンランドの温度に検出可能な影響を及ぼさず、いくつかのハインリッヒ亜氷期の開始時期に寒冷化が起こっており、両方の種類のハインリッヒ型の変動が南極の気候に明瞭な痕跡を残している、と示します。南極の氷床コアは、HE時のメタン増加と同時期に起こった温暖化の加速を示しており、グリーンランドの気候の兆候は見られないにも関わらず、大気の遠隔相関を示唆しています。高感度の温度代理指標であるグリーンランドの氷床コアの窒素安定同位体比は、ハインリッヒ亜氷期1(1950年を基点として17800年前頃)の開始時に約3度急激に寒冷化したことを示しています。南極の温暖化は、この寒冷化より133±93年遅れて生じており、これは海洋の遠隔相関と一致します。逆説的ですが、近い場所の方が遠い場所よりHEの影響が小さいので、空間的に複雑な事象の動態が示唆されます。HEは人類進化とも深く関わっているかもしれず、研究の進展が注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
気候科学:ハインリッヒ型気候変動の両極への影響と同期
気候科学:ハインリッヒイベントの両極への影響
今回、氷山の大群が北大西洋に放出された事象が、グリーンランドの気温にはほとんど影響を及ぼさなかったことが示されている。一方、こうした「ハインリッヒイベント」は、同時期の南極の温暖化と関連していた。
参考文献:
Martin KC. et al.(2023): Bipolar impact and phasing of Heinrich-type climate variability. Nature, 617, 7959, 100–104.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-05875-2
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