『卑弥呼』第105話「物忌み」
『ビッグコミックオリジナル』2023年4月20日号掲載分の感想です。前回は、筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)連合軍が日下(ヒノモト)連合軍を破り、金砂(カナスナ)国の青谷(アオタニ)邑(現在の鳥取市青谷町でしょうか)で、ヤノハが山社(ヤマト)連合国の諸王と兵士に、戦は終わったのでともに故郷に帰ろう、と呼びかけるところで終了しました。今回から新展開となり、日下連合軍との戦いより半年前の、暈(クマ)の国の仲島(ナカノシマ、現在の鹿児島県出水郡の長島町でしょうか)で、巫女の田油津日女(タブラツヒメ)が暈の5人の王の1人であるサジキ家のタケルの前で舞っている場面から始まります。
舞い終わった田油津日女をサジキ家のタケル王は引き止めようとしますが、田油津日女の配下の男性は、急いでイ家のタケル王を訪れねばならないからと言って、断ります。しかし、田油津日女は留まり、サジキ家のタケル王から盃を受けます。田油津日女を演じていたアカメは、暈の5人のタケル王の前でトンカラリンの洞窟に入り、そのまま出てこず、暈の5人のタケル王が帰ったところで洞窟から現れましたが、そこを暈の大夫である鞠智彦(ククチヒコ)配下の志能備(シノビ)に襲われて捕らえられました(第78話)。サジキ家のタケル王は、田油津日女がトンカラリンの洞窟から出てこず、翌日トンカラリンの洞窟から出たことを知っており、日見子(ヒミコ)に祭り上げられることを嫌ってわざと隠れていたのか、と田油津日女に問いかけますが、田油津日女は否定します。サジキ家のタケル王はそれを不問として、代わりに、厲鬼(レイキ)、つまり疫病が消えるまで祈祷し、舞い続けてもらいたい、と要請します。仲島の厲鬼は弱まったものの、出水(イズミ、現在の鹿児島県出水市でしょうか)の民は家から出られないままだ、というわけです。サジキ家のタケル王は、暈の5人のタケル王のうち、殺しても死にそうになかったヤ家のタケル王が死に、それは田油津日女がヤ家の領地を出立した直後で、その後でヤ家の領地である囎唹(ソオ、現在の鹿児島県曽於市でしょうか)から厲鬼は一掃された、と田油津日女に伝えて、せめて10日は祈祷して欲しい、と要請したわけです。
田油津日女の配下の男性が断ろうとすると、サジキ家のタケル王は却下します。田油津日女から耳打ちされた配下の男性は、サジキ家のタケル王が物忌みのお籠もりを行なうなら厲鬼は退散するだろう、と伝えます。いつから斎戒するのか、とサジキ家のタケル王に問われた田油津日女の配下の男性は、今からと答えます。するとサジキ家のタケル王はもう1杯だけ酒を飲もうとして、田油津日女から耳打ちされた配下の男性は、もう物忌みは始まっている、と言ってそれを止めようとしますが、サジキ家のタケル王は酒を飲みます。その直後、サジキ家のタケル王は苦しみだして吐き、動かなくなり、周囲を警固していたサジキ家のタケル王の兵は騒ぎますが、田油津日女の配下の男性は兵士に、今タケル王は示斎(ジサイ、万人の不幸を引き受けて人柱になる神職)になり、領地から厲鬼を退散させるために身を犠牲にした、と伝え、サジキ家のタケル王のから厲鬼は消え去ったと伝令を出すよう、指示します。
その後、日下連合軍との戦いより1ヶ月前、暈の浮土(ウト、現在の熊本県宇土市でしょうか)では、田油津日女の一行をカマ家のタケル王が兵士とともに出迎えていました。配下の男性を通じて到着の遅れを詫びる田油津日女に、串岐(クシキ、現在の鹿児島県いちき串木野市でしょうか)から馳せ参じてくれたのだろう、とカマ家のタケル王は気にしていないようです。しかしカマ家のタケル王は、イ家のタケル王に附子(ブス、トリカブト)を盛る隙がなかったか、と田油津日女に問いかけます。ヤ家とサジキ家とイ家のタケル王が田油津日女の舞の後に次々と怪死したことをカマ家のタケル王は知っていたわけです。暈の5人のタケル王は鞠智彦の力を削ぐため、田油津日女を日見子に担ごうとしましたが、カマ家のタケル王は田油津日女が鞠智彦の手先と悟り、カマ家のタケル王は田油津日女を殺そうとしますが、田油津日女と配下はカマ家のタケル王とその配下の兵士を圧倒し、皆殺しにします。そこへ鞠智彦の配下である志能備たちが鞠智彦の配下のウガヤとともに現れ、残りは一人と伝え、アカメが鞠智彦の配下の志能備たちに捕らわれた場面が回想されます。志能備たちはアカメを殺そうとしますが、ウガヤが現れ、その探り女(サグリメ)と話をしたい、と声をかけます。志能備の頭は、これは志能備の掟なので、いかにウガヤ様でも、とアカメを殺そうとしますが、ウガヤは、他のみを訊けば助けてやる、とアカメに言います。場面は日下連合軍との戦いより1ヶ月前に戻り、カワカミ家のタケル王を殺せばお前は自由の身だ、とアカメに伝えます。アカメは、暈の5人のタケル王の殺害を条件に、ウガヤに救われたようです。
場面は現在の山社に戻り、ヤノハ(日見子)が5人の重臣(ミマト将軍、イクメ、テヅチ将軍、ヌカデ、ミマアキ)と今後の方針を話し合っていました。6人の見解は、日下は1年間戦をせず、喪に服すだろうが、その後は再び攻めてくるだろう、ということで一致しているようです。ミマト将軍は、次の戦場が筑紫島になった場合に勝てるのか、案じており、イクメは暈国の動きを警戒しています。ヤノハから自分の不在時に暈に不穏な動きがあったのか、尋ねられたテヅチ将軍は、まだ厲鬼に汽船しているようで、4人のタケル王が相次いで死に、しかも強力な祈祷女(イノリメ)が現れ、厲鬼を退散させつつある、と答えます。ヤノハからその祈祷女の名を尋ねられたテヅチ将軍は、確か田油津日女と答えます。テヅチ将軍から、民の噂にすぎないものの、暈の日見子として擁立するため、鞠智彦は田油津日女を領土から出さないつもりらしい、と聞いたヤノハが笑い、田油津日女が鞠智彦に捕らわれているならば、どうしても助け出さねばならない、と力強く宣言するところで、今回は終了です。
今回は、アカメの動向が久しぶりに描かれました。雑誌の連載では実に1年3ヶ月振りとなります。アカメは重要人物のようなので、鞠智彦配下の志能備に捕らわれてそのまま殺されるとは考えていませんでしたが、鞠智彦の配下のウガヤからの助命条件を受け入れて、暈の5人のタケル王を殺害することになり、4人まで殺害しています。ヤノハと鞠智彦の間では密約が交わされており、アカメを助けることになっているのかな、とも思いましたが、アカメが捕らわれる過程と、今回のヤノハの発言からは、アカメはヤノハからの任務を全うして山社に帰ろうとしたところを捕らわれ、生き延びるためにウガヤの助命条件を受け入れたように思われます。もっとも、ヤノハの真意は容易には明かされないので、真相がどうだったのか、断定はできません。日下連合軍との戦いが終わり、しばらくは暈との関係を中心に話が展開しそうで、たいへん楽しみです。
舞い終わった田油津日女をサジキ家のタケル王は引き止めようとしますが、田油津日女の配下の男性は、急いでイ家のタケル王を訪れねばならないからと言って、断ります。しかし、田油津日女は留まり、サジキ家のタケル王から盃を受けます。田油津日女を演じていたアカメは、暈の5人のタケル王の前でトンカラリンの洞窟に入り、そのまま出てこず、暈の5人のタケル王が帰ったところで洞窟から現れましたが、そこを暈の大夫である鞠智彦(ククチヒコ)配下の志能備(シノビ)に襲われて捕らえられました(第78話)。サジキ家のタケル王は、田油津日女がトンカラリンの洞窟から出てこず、翌日トンカラリンの洞窟から出たことを知っており、日見子(ヒミコ)に祭り上げられることを嫌ってわざと隠れていたのか、と田油津日女に問いかけますが、田油津日女は否定します。サジキ家のタケル王はそれを不問として、代わりに、厲鬼(レイキ)、つまり疫病が消えるまで祈祷し、舞い続けてもらいたい、と要請します。仲島の厲鬼は弱まったものの、出水(イズミ、現在の鹿児島県出水市でしょうか)の民は家から出られないままだ、というわけです。サジキ家のタケル王は、暈の5人のタケル王のうち、殺しても死にそうになかったヤ家のタケル王が死に、それは田油津日女がヤ家の領地を出立した直後で、その後でヤ家の領地である囎唹(ソオ、現在の鹿児島県曽於市でしょうか)から厲鬼は一掃された、と田油津日女に伝えて、せめて10日は祈祷して欲しい、と要請したわけです。
田油津日女の配下の男性が断ろうとすると、サジキ家のタケル王は却下します。田油津日女から耳打ちされた配下の男性は、サジキ家のタケル王が物忌みのお籠もりを行なうなら厲鬼は退散するだろう、と伝えます。いつから斎戒するのか、とサジキ家のタケル王に問われた田油津日女の配下の男性は、今からと答えます。するとサジキ家のタケル王はもう1杯だけ酒を飲もうとして、田油津日女から耳打ちされた配下の男性は、もう物忌みは始まっている、と言ってそれを止めようとしますが、サジキ家のタケル王は酒を飲みます。その直後、サジキ家のタケル王は苦しみだして吐き、動かなくなり、周囲を警固していたサジキ家のタケル王の兵は騒ぎますが、田油津日女の配下の男性は兵士に、今タケル王は示斎(ジサイ、万人の不幸を引き受けて人柱になる神職)になり、領地から厲鬼を退散させるために身を犠牲にした、と伝え、サジキ家のタケル王のから厲鬼は消え去ったと伝令を出すよう、指示します。
その後、日下連合軍との戦いより1ヶ月前、暈の浮土(ウト、現在の熊本県宇土市でしょうか)では、田油津日女の一行をカマ家のタケル王が兵士とともに出迎えていました。配下の男性を通じて到着の遅れを詫びる田油津日女に、串岐(クシキ、現在の鹿児島県いちき串木野市でしょうか)から馳せ参じてくれたのだろう、とカマ家のタケル王は気にしていないようです。しかしカマ家のタケル王は、イ家のタケル王に附子(ブス、トリカブト)を盛る隙がなかったか、と田油津日女に問いかけます。ヤ家とサジキ家とイ家のタケル王が田油津日女の舞の後に次々と怪死したことをカマ家のタケル王は知っていたわけです。暈の5人のタケル王は鞠智彦の力を削ぐため、田油津日女を日見子に担ごうとしましたが、カマ家のタケル王は田油津日女が鞠智彦の手先と悟り、カマ家のタケル王は田油津日女を殺そうとしますが、田油津日女と配下はカマ家のタケル王とその配下の兵士を圧倒し、皆殺しにします。そこへ鞠智彦の配下である志能備たちが鞠智彦の配下のウガヤとともに現れ、残りは一人と伝え、アカメが鞠智彦の配下の志能備たちに捕らわれた場面が回想されます。志能備たちはアカメを殺そうとしますが、ウガヤが現れ、その探り女(サグリメ)と話をしたい、と声をかけます。志能備の頭は、これは志能備の掟なので、いかにウガヤ様でも、とアカメを殺そうとしますが、ウガヤは、他のみを訊けば助けてやる、とアカメに言います。場面は日下連合軍との戦いより1ヶ月前に戻り、カワカミ家のタケル王を殺せばお前は自由の身だ、とアカメに伝えます。アカメは、暈の5人のタケル王の殺害を条件に、ウガヤに救われたようです。
場面は現在の山社に戻り、ヤノハ(日見子)が5人の重臣(ミマト将軍、イクメ、テヅチ将軍、ヌカデ、ミマアキ)と今後の方針を話し合っていました。6人の見解は、日下は1年間戦をせず、喪に服すだろうが、その後は再び攻めてくるだろう、ということで一致しているようです。ミマト将軍は、次の戦場が筑紫島になった場合に勝てるのか、案じており、イクメは暈国の動きを警戒しています。ヤノハから自分の不在時に暈に不穏な動きがあったのか、尋ねられたテヅチ将軍は、まだ厲鬼に汽船しているようで、4人のタケル王が相次いで死に、しかも強力な祈祷女(イノリメ)が現れ、厲鬼を退散させつつある、と答えます。ヤノハからその祈祷女の名を尋ねられたテヅチ将軍は、確か田油津日女と答えます。テヅチ将軍から、民の噂にすぎないものの、暈の日見子として擁立するため、鞠智彦は田油津日女を領土から出さないつもりらしい、と聞いたヤノハが笑い、田油津日女が鞠智彦に捕らわれているならば、どうしても助け出さねばならない、と力強く宣言するところで、今回は終了です。
今回は、アカメの動向が久しぶりに描かれました。雑誌の連載では実に1年3ヶ月振りとなります。アカメは重要人物のようなので、鞠智彦配下の志能備に捕らわれてそのまま殺されるとは考えていませんでしたが、鞠智彦の配下のウガヤからの助命条件を受け入れて、暈の5人のタケル王を殺害することになり、4人まで殺害しています。ヤノハと鞠智彦の間では密約が交わされており、アカメを助けることになっているのかな、とも思いましたが、アカメが捕らわれる過程と、今回のヤノハの発言からは、アカメはヤノハからの任務を全うして山社に帰ろうとしたところを捕らわれ、生き延びるためにウガヤの助命条件を受け入れたように思われます。もっとも、ヤノハの真意は容易には明かされないので、真相がどうだったのか、断定はできません。日下連合軍との戦いが終わり、しばらくは暈との関係を中心に話が展開しそうで、たいへん楽しみです。
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