森恒二『創世のタイガ』第11巻(講談社)
2023年3月に刊行されました。第11巻は第10巻に続いて、主人公たち現生人類(Homo sapiens)側とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)側(とはいっても、その指導者は第二次世界大戦のドイツとフランスの国境付近の戦場から来たドイツ人ですが)との戦いを中心に描かれました。第11巻は、ネアンデルタール人側の「王族(第二次世界大戦の戦場から過去に来たドイツの軍人と、そのドイツの軍人とネアンデルタール人との間に生まれた子供たちを指すのでしょうか)」であるデニス(父と同名の息子)が、現生人類側の「王」であるナクムを「雷の杖(銃)」で撃った場面から始まります。ナクムは吐血し、自分を残して逃げるよう、仲間に命じますが、仲間でもとくに怪力のカイザは、ナクムを連れて帰る、と主張してナクムを背負い、ネアンデルタール人の追撃から逃げます。
現生人類の集落に戻ったタイガは、ユカがネアンデルタール人に連れ去られたとアラタから聞いて、まだ集落に戻っていないナクムを救出しようとしますが、レンがナクムの救出に向かうと言い、タイガはティアリと狼のウルフを連れてユカの救出に向かいます。ユカを連行したネアンデルタール人側の王族であるヴォルフ(父と同名の息子)は、仲間を呼ぼうとして狼煙をあげ、タイガはユカを発見します。そこへ、ネアンデルタール人でも最強と思われる、現生人類の集落襲撃で指揮官も務めたドゥクスとその配下のネアンデルタール人が駆けつけ、タイガとドゥクスは互いを自陣営にとって最大の脅威と考えて、一騎討ちを始めます。タイガはドゥクスの怪力に圧倒されかけますが、ドゥクスが現生人類の集落を襲撃したさいにレンとアラタから受けた傷を見て、少しずつ傷つけて出血量を増やし、戦いを有利に進めようとします。タイガは、この時代の人間が知らないボクシングのジャブを使って、ドゥクスの出血量をじょじょに増やしていきます。やがてドゥクスはタイガの意図に気づき、自分はタイガに勝てないと悟り、ヴォルフに逃げるよう促し、せめて自分はタイガを相打ちで止めようとします。ドゥクスは力が残っているうちに一気に勝負に出ますが、タイガに手首を切り落とされます。しかし、タイガとティアリが倒れているユカを気遣っている間に、ドゥクスは逃亡します。ティアリはウルフにドゥクスを追撃させようとしますが、ドゥクスはもう助からないだろうから、と考えてタイガはウルフに追撃しないよう命じます。タイガは、まずナクムたちの救出を優先すべきと考えていました。
レンは逃げるナクム一行を発見し、弓でネアンデルタール人の追撃を防ごうとしますが、ついに矢が尽きてネアンデルタール人に殺されそうになります。そこへアラタとタイガとウルフが現れ、ネアンデルタール人たちはタイガとウルフに怯えて進撃が鈍ります。リクから矢の補充を受けたレンも戦い、形勢が不利と見たデニスは一度撤退を命じ、同じくネアンデルタール人側の「王族」であるゲオルグ(父と同名の息子)に、現生人類側の集落を2部隊で襲撃するよう命じ、自身は3部隊を率いることにします。ナクムは何とか集落の自宅に戻りましたが重体で、ナクムの妻となったユカも案じます。ネアンデルタール人側に集落を包囲されたと悟ったタイガは、とても勝てる戦力差ではないと考えて、集落の子供たちから情報を得て、自分に懐いているマンモス(当時の現生人類の言葉ではドゥブワナという設定)のアフリカをティアリとともに探しに行きます。アラタはタイガに、アフリカと会えなかったらティアリと逃げて、現生人類の歴史を途絶えさせないよう、勧めます。しかしタイガは、一族の戦士なので必ず戻ってくる、と言ってアフリカを探しに行きます。
デニスはタイガとティアリとウルフが集落から逃げるのを見て、配下のネアンデルタール人に追撃を命じますが、タイガはウルフに指示を与えつつネアンデルタール人を倒していき、ついにアフリカと再会します。ゲオルグはタイガがマンモスを探しに行ったと警戒し、デニスはその進言により、夜明け前に決着をつけようと考えて、攻撃を開始します。現生人類側は総力で戦うものの、人数で圧倒されているので、苦戦します。その様子を察したナクムは起き出し、妻子に別れを告げて戦いにでますが、ついに力尽きて倒れます。そこへタイガがアフリカとともに戻り、ついにネアンデルタール人は撤退します。瀕死の状態のナクムは、自分たちはこの世に何かを残すために生まれたと悟った、と語り、タイガを王とするよう、遺言を残して没し、タイガは号泣します。
これで第11巻は終了となりますが、第一部の完結でもあり、第二部は、掲載誌の『イブニング』が休刊となったため、白泉社の『ヤングアニマル』誌に移籍しての連載となります。今後も連載が続くようで、安心しました。第一部でナクムが没し、タイガが現生人類の「王」となったわけですが、ネアンデルタール人との戦いはまだ続くようです。ネアンデルタール人側で最強の戦士だったと思われるドゥクスはさすがに死んだでしょうが、主戦派の「王族」であるデニスは健在なので、今後も現生人類とネアンデルタール人の戦いを中心に話が展開するのかもしれません。ただ、ユカはネアンデルタール人側の「王族」であるヴォルフと親しくなっており、ヴォルフはユカを特別な存在と考えていますから、ユカとヴォルフが、現生人類とネアンデルタール人の敵対的な関係を変える契機になる可能性も考えられます。ついにタイガが現生人類側の「王」となり、どのように話が展開し、結末を迎えるのか、たいへん楽しみです。なお、第1巻~第10巻までの記事は以下の通りです。
第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html
第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html
第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html
第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html
第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html
第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html
第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html
第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html
第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html
第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html
現生人類の集落に戻ったタイガは、ユカがネアンデルタール人に連れ去られたとアラタから聞いて、まだ集落に戻っていないナクムを救出しようとしますが、レンがナクムの救出に向かうと言い、タイガはティアリと狼のウルフを連れてユカの救出に向かいます。ユカを連行したネアンデルタール人側の王族であるヴォルフ(父と同名の息子)は、仲間を呼ぼうとして狼煙をあげ、タイガはユカを発見します。そこへ、ネアンデルタール人でも最強と思われる、現生人類の集落襲撃で指揮官も務めたドゥクスとその配下のネアンデルタール人が駆けつけ、タイガとドゥクスは互いを自陣営にとって最大の脅威と考えて、一騎討ちを始めます。タイガはドゥクスの怪力に圧倒されかけますが、ドゥクスが現生人類の集落を襲撃したさいにレンとアラタから受けた傷を見て、少しずつ傷つけて出血量を増やし、戦いを有利に進めようとします。タイガは、この時代の人間が知らないボクシングのジャブを使って、ドゥクスの出血量をじょじょに増やしていきます。やがてドゥクスはタイガの意図に気づき、自分はタイガに勝てないと悟り、ヴォルフに逃げるよう促し、せめて自分はタイガを相打ちで止めようとします。ドゥクスは力が残っているうちに一気に勝負に出ますが、タイガに手首を切り落とされます。しかし、タイガとティアリが倒れているユカを気遣っている間に、ドゥクスは逃亡します。ティアリはウルフにドゥクスを追撃させようとしますが、ドゥクスはもう助からないだろうから、と考えてタイガはウルフに追撃しないよう命じます。タイガは、まずナクムたちの救出を優先すべきと考えていました。
レンは逃げるナクム一行を発見し、弓でネアンデルタール人の追撃を防ごうとしますが、ついに矢が尽きてネアンデルタール人に殺されそうになります。そこへアラタとタイガとウルフが現れ、ネアンデルタール人たちはタイガとウルフに怯えて進撃が鈍ります。リクから矢の補充を受けたレンも戦い、形勢が不利と見たデニスは一度撤退を命じ、同じくネアンデルタール人側の「王族」であるゲオルグ(父と同名の息子)に、現生人類側の集落を2部隊で襲撃するよう命じ、自身は3部隊を率いることにします。ナクムは何とか集落の自宅に戻りましたが重体で、ナクムの妻となったユカも案じます。ネアンデルタール人側に集落を包囲されたと悟ったタイガは、とても勝てる戦力差ではないと考えて、集落の子供たちから情報を得て、自分に懐いているマンモス(当時の現生人類の言葉ではドゥブワナという設定)のアフリカをティアリとともに探しに行きます。アラタはタイガに、アフリカと会えなかったらティアリと逃げて、現生人類の歴史を途絶えさせないよう、勧めます。しかしタイガは、一族の戦士なので必ず戻ってくる、と言ってアフリカを探しに行きます。
デニスはタイガとティアリとウルフが集落から逃げるのを見て、配下のネアンデルタール人に追撃を命じますが、タイガはウルフに指示を与えつつネアンデルタール人を倒していき、ついにアフリカと再会します。ゲオルグはタイガがマンモスを探しに行ったと警戒し、デニスはその進言により、夜明け前に決着をつけようと考えて、攻撃を開始します。現生人類側は総力で戦うものの、人数で圧倒されているので、苦戦します。その様子を察したナクムは起き出し、妻子に別れを告げて戦いにでますが、ついに力尽きて倒れます。そこへタイガがアフリカとともに戻り、ついにネアンデルタール人は撤退します。瀕死の状態のナクムは、自分たちはこの世に何かを残すために生まれたと悟った、と語り、タイガを王とするよう、遺言を残して没し、タイガは号泣します。
これで第11巻は終了となりますが、第一部の完結でもあり、第二部は、掲載誌の『イブニング』が休刊となったため、白泉社の『ヤングアニマル』誌に移籍しての連載となります。今後も連載が続くようで、安心しました。第一部でナクムが没し、タイガが現生人類の「王」となったわけですが、ネアンデルタール人との戦いはまだ続くようです。ネアンデルタール人側で最強の戦士だったと思われるドゥクスはさすがに死んだでしょうが、主戦派の「王族」であるデニスは健在なので、今後も現生人類とネアンデルタール人の戦いを中心に話が展開するのかもしれません。ただ、ユカはネアンデルタール人側の「王族」であるヴォルフと親しくなっており、ヴォルフはユカを特別な存在と考えていますから、ユカとヴォルフが、現生人類とネアンデルタール人の敵対的な関係を変える契機になる可能性も考えられます。ついにタイガが現生人類側の「王」となり、どのように話が展開し、結末を迎えるのか、たいへん楽しみです。なお、第1巻~第10巻までの記事は以下の通りです。
第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html
第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html
第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html
第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html
第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html
第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html
第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html
第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html
第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html
第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html
この記事へのコメント