カンブリア紀の化石の見直し
カンブリア紀の化石の見直しを報告した研究(Yang et al., 2023)が公表されました。多様な動物門とそれらに関連するボディープランは、5億年以上前のカンブリア紀に起こった単一の爆発的進化事象に端を発しています。群体性の「苔動物」である苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)門はその例外であり、この生体鉱物化するクレード(単系統群)の説得力のある骨格は、カンブリア紀の地層では見つかっていません。これは一部に、苔虫動物である可能性のある化石が、他の動物群や藻類群のモジュール式骨格と識別困難なためです。現時点でステム群苔虫動物の最も有力な候補は、オーストラリアと中国南部で出土した、カンブリア紀前期の起立性で二層性の二次的にリン酸塩化したミリメートルサイズの化石で、プロトメリッシオン・ガテホウセイ(Protomelission gatehousei)と命名されました(関連記事)。
本論文は、中国の小石壩(Xiaoshiba)化石鉱脈で発見された、プロトメリッシオンと似ている大型化石の保存状態が極めて良好な非鉱物化構造について報告します。詳細な骨格構成と、「個虫の開口部」の考え得る化石生成論的起源を合わせると、プロトメリッシオンはステム群苔虫動物ではなく最初期のカサノリ類緑藻類と解釈するのがより妥当で、これは、カンブリア紀初期の群集において底生の光合成生物が果たした生態学的な役割を浮き彫りにします。この解釈では、プロトメリッシオンから苔虫動物のボディープランの起源に関する情報は得られず、有望な候補が増えてはいるものの、カンブリア紀の明白な苔虫動物は引き続き存在しないことになります。
また、プロトメリッシオンに類似している化石と地理的に広く分布したcambroclaveの小さな脊椎状の化石を比較され、cambroclaveの一部もカサノリ目藻類かもしれない、と指摘されています。これらの知見から、前期カンブリア紀の生態系では、生体内で鉱物形成が起こる底生海藻が、これまで考えられていたよりも大きな貢献をしていた、と示されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:あるカンブリア紀の化石の真の正体
5億年以上前のカンブリア紀の化石を再解釈した結果、動物ではなく藻類の化石であったことが示唆されたことを報告するMartin Smithたちの論文が、Natureに掲載される。この研究知見は、カンブリア紀の動物の進化と生態系における藻類の役割に関する学説に異論を唱えるものとなった。
カンブリア紀における動物の進化は、化石記録から明らかになっているが、苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)だけがカンブリア紀の地層から見つかっていない。今回のSmithたちの論文では、2021年にNatureに掲載された論文に示されたカンブリア紀の化石Protomelissionを苔虫動物とした解釈に異論を唱えている。今回の論文には、中国南部のシャオシバ・ラーゲルシュテッテンで発見されたProtomelissionに似た保存状態の良い化石が記述され、これが緑藻植物門カサノリ目に属する底生光合成藻類の一種だと結論付けられている。この研究知見は、苔虫動物の化石であることが明確なカンブリア紀の化石が依然として見つかっていないことを意味している。
また、Smithたちは、このProtomelissionに似た化石と地理的に広く分布したcambroclaveの小さな脊椎状の化石を比較し、cambroclaveの一部もカサノリ目藻類である可能性があると結論付けた。以上の知見を総合すると、前期カンブリア紀の生態系では、生体内で鉱物形成が起こる底生海藻が、これまで考えられていたよりも大きな貢献をしていたことが示されている。
進化学:Protomelissionはカンブリア紀の苔虫動物ではなく初期のカサノリ類藻類である
進化学:幻だったカンブリア紀の苔虫動物
今回、新たに発見された保存状態の極めて良好な化石を含む、複数の標本の分析によって、カンブリア紀の謎めいた化石Protomelissionが、当初考えられていた苔虫動物ではなく、カサノリ類の緑藻類と見られることが示された。
参考文献:
Yang J. et al.(2023): Protomelission is an early dasyclad alga and not a Cambrian bryozoan. Nature, 615, 7952, 468–471.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-05775-5
本論文は、中国の小石壩(Xiaoshiba)化石鉱脈で発見された、プロトメリッシオンと似ている大型化石の保存状態が極めて良好な非鉱物化構造について報告します。詳細な骨格構成と、「個虫の開口部」の考え得る化石生成論的起源を合わせると、プロトメリッシオンはステム群苔虫動物ではなく最初期のカサノリ類緑藻類と解釈するのがより妥当で、これは、カンブリア紀初期の群集において底生の光合成生物が果たした生態学的な役割を浮き彫りにします。この解釈では、プロトメリッシオンから苔虫動物のボディープランの起源に関する情報は得られず、有望な候補が増えてはいるものの、カンブリア紀の明白な苔虫動物は引き続き存在しないことになります。
また、プロトメリッシオンに類似している化石と地理的に広く分布したcambroclaveの小さな脊椎状の化石を比較され、cambroclaveの一部もカサノリ目藻類かもしれない、と指摘されています。これらの知見から、前期カンブリア紀の生態系では、生体内で鉱物形成が起こる底生海藻が、これまで考えられていたよりも大きな貢献をしていた、と示されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:あるカンブリア紀の化石の真の正体
5億年以上前のカンブリア紀の化石を再解釈した結果、動物ではなく藻類の化石であったことが示唆されたことを報告するMartin Smithたちの論文が、Natureに掲載される。この研究知見は、カンブリア紀の動物の進化と生態系における藻類の役割に関する学説に異論を唱えるものとなった。
カンブリア紀における動物の進化は、化石記録から明らかになっているが、苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)だけがカンブリア紀の地層から見つかっていない。今回のSmithたちの論文では、2021年にNatureに掲載された論文に示されたカンブリア紀の化石Protomelissionを苔虫動物とした解釈に異論を唱えている。今回の論文には、中国南部のシャオシバ・ラーゲルシュテッテンで発見されたProtomelissionに似た保存状態の良い化石が記述され、これが緑藻植物門カサノリ目に属する底生光合成藻類の一種だと結論付けられている。この研究知見は、苔虫動物の化石であることが明確なカンブリア紀の化石が依然として見つかっていないことを意味している。
また、Smithたちは、このProtomelissionに似た化石と地理的に広く分布したcambroclaveの小さな脊椎状の化石を比較し、cambroclaveの一部もカサノリ目藻類である可能性があると結論付けた。以上の知見を総合すると、前期カンブリア紀の生態系では、生体内で鉱物形成が起こる底生海藻が、これまで考えられていたよりも大きな貢献をしていたことが示されている。
進化学:Protomelissionはカンブリア紀の苔虫動物ではなく初期のカサノリ類藻類である
進化学:幻だったカンブリア紀の苔虫動物
今回、新たに発見された保存状態の極めて良好な化石を含む、複数の標本の分析によって、カンブリア紀の謎めいた化石Protomelissionが、当初考えられていた苔虫動物ではなく、カサノリ類の緑藻類と見られることが示された。
参考文献:
Yang J. et al.(2023): Protomelission is an early dasyclad alga and not a Cambrian bryozoan. Nature, 615, 7952, 468–471.
https://doi.org/10.1038/s41586-023-05775-5
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