ブドウの栽培化と進化史
ブドウの栽培化と進化史に関する研究(Dong et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。人類は栽培化と家畜化により周囲の生物を広範に変化させてきました。ブドウは現代人にとって身近な栽培化された植物であるため関心が高いようで、フランスの鉄器時代から中世までの種子のゲノム解析(関連記事)や、ヨーロッパの葡萄酒用ブドウの広範なゲノム解析(関連記事)などが報告されており、後者では葡萄酒用の栽培品種(Vitis vinifera)はアジア南西部(コーカサス南部である可能性が最も高そうです)での1回の栽培化に由来し、その後、ヨーロッパの野生ブドウとの複数回の交配を経た、と示されました。しかし、現代の栽培品種の標本抽出にばらつきがあるため、その起源を特定することは困難で、葡萄酒用のブドウは食用のブドウより先に栽培化された、といったさまざまな仮説が提示されました。
この研究は、世界中の3525の栽培品種と野生品種を用いて、ブドウの進化と栽培化の歴史を明らかにします。更新世において、厳しい気候が継続的な生息地の分断を引き起こし、野生のブドウの生態型が分離しました。その後、11000年前頃にアジア西部とコーカサスで同時に栽培化が進み、食用ブドウと葡萄酒用ブドウが誕生しました。アジア西部の栽培化されたブドウは初期の農耕民とともにヨーロッパに拡散し、古代の野生の西洋生態系に浸透して、その後、後期新石器時代までに、人類の移動経路に沿ってマスカットと独特の西洋葡萄酒用ブドウの祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)へと多様化しました。また、栽培化形質の解析から、果実の嗜好性、両性具有性、マスカットの風味、果実の色合いに対する選択について、新たな知見が得られました。これらのデータは、ユーラシア大陸における農耕の初期段階において、ブドウの木が果たした役割を実証しています。
参考文献:
Dong Y. et al.(2023): Dual domestications and origin of traits in grapevine evolution. Science, 379, 6635, 892–901.
https://doi.org/10.1126/science.add8655
この研究は、世界中の3525の栽培品種と野生品種を用いて、ブドウの進化と栽培化の歴史を明らかにします。更新世において、厳しい気候が継続的な生息地の分断を引き起こし、野生のブドウの生態型が分離しました。その後、11000年前頃にアジア西部とコーカサスで同時に栽培化が進み、食用ブドウと葡萄酒用ブドウが誕生しました。アジア西部の栽培化されたブドウは初期の農耕民とともにヨーロッパに拡散し、古代の野生の西洋生態系に浸透して、その後、後期新石器時代までに、人類の移動経路に沿ってマスカットと独特の西洋葡萄酒用ブドウの祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)へと多様化しました。また、栽培化形質の解析から、果実の嗜好性、両性具有性、マスカットの風味、果実の色合いに対する選択について、新たな知見が得られました。これらのデータは、ユーラシア大陸における農耕の初期段階において、ブドウの木が果たした役割を実証しています。
参考文献:
Dong Y. et al.(2023): Dual domestications and origin of traits in grapevine evolution. Science, 379, 6635, 892–901.
https://doi.org/10.1126/science.add8655
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