愛知県の縄文文化遺跡の人類遺骸のミトコンドリアDNA
取り上げるのが遅れてしまいましたが、愛知県の縄文文化遺跡の人類遺骸のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Waku et al., 2022)が公表されました。渥美半島に位置する愛知県田原市の伊川津貝塚遺跡の人骨(IK002)では核DNAの解析が成功しており(関連記事)、現代日本人の遺伝的構成の地域差に関する研究(関連記事)など、さまざまな研究で引用されています。本論文は、同じく伊川津貝塚遺跡で発見された別個体(IK001)のmtDNA解析結果を報告します。
●要約
伊川津貝塚遺跡から得られた縄文時代女性のドラフト全ゲノム配列が、最近報告されました。この成人女性個体(IK002)は、子供1個体(IK001)とともに発掘されました。成人の上に位置する子供の埋葬状況のため、この2個体【IK001とIK002】は母子関係と考えられました。この研究は、標的捕獲配列決定を実行し、IK001のミトコンドリアゲノム配列の258倍の網羅率を得ました。IK001とIK002のmtDNAヌクレオチド配列を比較すると、相互に明らかに異なる、と分かりました。したがって、このミトコンドリアゲノム配列分析は、両個体【IK001とIK002】が母子関係にないことを明らかにしました。この結果は、縄文考古学における埋葬と親族関係との間の関係に新たな光を当てます。
●研究史
古代DNA解析は現在、人口集団における系統と同様に、遺跡における親族関係の検討に不可欠な手法です。母系継承のミトコンドリアゲノム(完全なmtDNA)は、母系の親族関係と系統の研究に用いられてきました。初期の研究では、ヌクレオチド配列はmtDNAの超可変領域のみで決定されました。最近では、次世代配列決定(next-generation sequencing、略してNGS)により、ミトコンドリアゲノムの完全な配列を迅速かつ容易に取得できるようになりました。完全なミトコンドリアゲノム配列の決定は、遺跡から得られた遺骸の親族関係の分析において標準になりつつあります。
縄文文化の埋葬様式に関して、研究者は集団埋葬パターンにおける個体間の親族関係に関心を抱いてきました。2個体の事例(二重埋葬)、とくに成人と子供では、個体間の遺伝的関係の存在の有無が、縄文社会の構造理解にたいへん重要と考えられました。子供が成人の上に位置するなど、埋葬位置が明確な場合、子供と成人との間に親族関係があった、と推測する研究者がいた一方で、親族関係とは無関係な配置で、むしろ行為の子供とその奴隷だと考える研究者もいました。したがって、成人と子供の埋葬パターンが親族関係を反映しているのかどうか、この親族関係が縄文社会において可能性は高いものの普遍的ではないのかどうか、議論があります。
この研究は、母子関係が疑われる埋葬パターンを調べました。伊川津貝塚遺跡で、中年後期の女性(IK002)が幼児個体(IK001)とともに発掘され、IK001はIK002の胸部から腹部にかけて横たわっていました。最近、IK002の全ゲノム配列が報告され(関連記事)、IK002の系統がユーラシア東部大陸の人口史の観点から分析されました(関連記事)。利用可能なDNA量がひじょうに少なかったため、IK001でゲノム配列決定は実行されませんでしたが、mtDNAのDループの短い断片の予備的なポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、略してPCR)の直接的な配列決定は、IK001がIK002とは異なる配列を有している、と示唆しました。IK001とIK002との間の関係がある場合、その性質を確認するため、IK001について全mtDNAの標的捕獲配列決定が実行されました。258倍の完全なミトコンドリアゲノム配列が得られ、IK001とIK002は母指ではなかった、と確証されました。本論文は、IK001のmtDNA配列を報告し、これら2個体【IK001とIK002】間のあり得る関係を検討します。
●標本
図1は、愛知県の渥美半島に位置する伊川津貝塚遺跡の第12穴の場所を示しています。2010年に行なわれた発掘の過程では、5ヶ所の埋葬坑が見つかりました。全ての埋葬坑には、4号を除いて骨格遺骸一式が含まれており、4号埋葬坑には、幼児(IK001)と成人(IK002)の2個体が含まれていました。IK001はIK002の胸部から腹部にかけて横たわっていたので、この両個体間の関係は、通常の考古学に基づいて母(IK002)と子(IK001)と考えられました。以下は本論文の図1です。
IK001のDNAが抽出され、内在性DNAの比率が低い(1.0%未満)ため、各DNAライブラリではDNA抽出の2倍へと入力量が変更されました。古代DNAの特徴である死後損傷が調べられ、図2では、古代DNAの特徴である損傷が青線(グアニンからアデニンへの変化)と赤線(シトシンからチミンへの変化)で示されています。IK001のmtDNA配列の系統樹は、他のmtDNA配列データを用いて、系統解析は、近隣結合(neighbor-joining、略してNJ)法により構築されました。以下は本論文の図2です。
●解析結果
IK001の完全なミトコンドリアゲノム配列が得られ、網羅率の平均深度が258.28倍で、4279233のマッピング(多少の違いを許容しつつ、ヒトゲノム配列内の類似性が高い処理を同定する情報処理)された読み取りが生成されました(図3)。IK001の完全なミトコンドリアゲノムには16571塩基対が含まれ、改定ケンブリッジ参照配列(rCRS)より2塩基対長いことになりますが、これはC領域における追加の2塩基対のためです。信頼性の高い配列により、単一ヌクレオチド変異と同様に正確なミトコンドリアハプロタイプを得ることが可能となりました。IK001のmtDNAハプログループ(mtHg)はM7a1に分類されました(図3)。IK002のmtHgは以前に、N9b1に分類されました。mtHg-M7a1(約7.5%)はmtHg-M7a1(約2.1%)よりも現代日本人では一般的ですが、両者は縄文人【縄文文化関連個体群】ではより一般的でした。したがって、IK001とIK002は異なるmtHgに分類されました。以下は本論文の図3です。
IK001とIK002との間のmtDNAの異なる系統を明らかにするため、日本列島の古代人(関連記事)と現代人を含む系統樹が構築されました(図4)。IK002は縄文時代早期の居家以岩陰遺跡【群馬県長野原町】から発見された8300年前頃の人類遺骸3個体とクラスタ化します(まとまります)。このクラスタはmtHg-N9bに含まれ、縄文時代後期の船泊遺跡【北海道の礼文島】の2個体(関連記事)を含む先行研究の結果と一致します。一方、IK001は縄文時代中期となる千葉市の加曽利貝塚、縄文時代早期となる佐賀市の東名貝塚遺跡(関連記事)、縄文時代前期となる熊本県宇土市の轟貝塚、縄文時代後期となる沖縄県糸満市の摩文仁ハンタ原遺跡の個体群とクラスタ化します。このクラスタはmtHg-M7aに含まれます。以下は本論文の図4です。
●考察
本論文が提示したIK001の完全なミトコンドリアゲノム配列決定は、IK001とIK002の間で観察された埋葬状況から推測される母子関係と矛盾しました。本論文は非母子関係との調査結果に基づいて、二つの可能性を提案します。一方は、成人と子供は遺伝的に完全に無関係である、ということです。もう一方は、両者【IK001とIK002】は母方系統を共有していないものの、依然として親族関係はある、ということです。
前者の可能性については、いくつかの興味深い考古学的データに基づいて推測できます。IK002は「4I」様式の抜歯で、これは渥美半島の縄文時代後期では一般的な習慣でした。1979年の研究では、「4I」様式のヒト遺骸は渥美半島に由来する個体に、別の抜歯様式である「2C」の個体は、外部集団から来て結婚した個体に属していた、と解釈されました。2009年の研究では、(1)mtHg-N9bおよびM7aは日本列島に居住している人々を除いて現代人集団では見つからず、(2)mtHg-N9bとM7aの間には地理的領域で違いがあり、mtHg-N9bが日本列島の東部において一般的なのに対して、mtHg-M7aは日本列島の西部において一般的である、と報告されました。ミトコンドリアゲノムハプロタイプでは、IK001がM7aに分類された一方で、IK002はN9bに分類されました。これは、IK002が渥美半島出身で、IK001が移民だったことを直ちに証明するわけではありませんが、IK001とIK002がそうしたmtHgに含まれる事実は興味深い結果です。
しかし、以前の考古学的研究に基づくと、第二の可能性【IK001とIK002は母方系統を共有していないものの、親族関係はある】の方がより妥当かもしれません。1996年の研究では、年齢差により、成人と子供の二重埋葬は親子ではなく祖父母と孫でもあるかもしれない、と指摘されました。IK001は、乳歯の萌出状態に基づいて約6歳と考えられています。一方、IK002は下顎大臼歯が歯周病のためすでに失われていたので、中年もしくは初老だったようです。縄文時代における女性の初産は早ければ10代後半だったので、縄文時代の女性には30代後半で孫がいたかもしれません。二重埋葬で発掘されたIK001とIK002の年齢さを考えると、IK002が祖母で、IK001が孫だったかもしれません。IK002がIK001の父親の母【父方祖母】だったならば、そのミトコンドリアゲノムがヌクレオチド配列で異なっていたかもしれません。したがって、IK001とIK002は、母方系統を共有していないものの、依然として親族関係にあるかもしれません。
IK001の全ゲノム配列については、DNAの保存状態がひじょうに悪いためまだ得られていないので、IK001とIK002が親族関係にあるのかどうか、結論づけることはできません。IK002は頭から首にかけて赤い顔料が散布されており、IK002の頭は典型的な縄文土器である五貫森様式土器に接していました。これらの発見の考古学的意味はまだ分かりません。縄文時代の精神文化には、再生と循環としての死生観と、生死の系譜観が含まれます。IK001とIK002の二重埋葬は、「縄文人」が直接的な親子関係を超えた系図的つながりを知っていた証拠かもしれません。この仮説を検証するため、近い将来、第12穴区域で発掘された他の4個体の全ゲノム解析が実行され、IK001では核DNA捕獲配列決定が実行されるでしょう。
参考文献:
Waku D. et al.(2022): Complete mitochondrial genome sequencing reveals double-buried Jomon individuals excavated from the Ikawazu shell-mound site were not in a mother–child relationship. Anthropological Science, 130, 1, 39–45.
https://doi.org/10.1537/ase.2012132
●要約
伊川津貝塚遺跡から得られた縄文時代女性のドラフト全ゲノム配列が、最近報告されました。この成人女性個体(IK002)は、子供1個体(IK001)とともに発掘されました。成人の上に位置する子供の埋葬状況のため、この2個体【IK001とIK002】は母子関係と考えられました。この研究は、標的捕獲配列決定を実行し、IK001のミトコンドリアゲノム配列の258倍の網羅率を得ました。IK001とIK002のmtDNAヌクレオチド配列を比較すると、相互に明らかに異なる、と分かりました。したがって、このミトコンドリアゲノム配列分析は、両個体【IK001とIK002】が母子関係にないことを明らかにしました。この結果は、縄文考古学における埋葬と親族関係との間の関係に新たな光を当てます。
●研究史
古代DNA解析は現在、人口集団における系統と同様に、遺跡における親族関係の検討に不可欠な手法です。母系継承のミトコンドリアゲノム(完全なmtDNA)は、母系の親族関係と系統の研究に用いられてきました。初期の研究では、ヌクレオチド配列はmtDNAの超可変領域のみで決定されました。最近では、次世代配列決定(next-generation sequencing、略してNGS)により、ミトコンドリアゲノムの完全な配列を迅速かつ容易に取得できるようになりました。完全なミトコンドリアゲノム配列の決定は、遺跡から得られた遺骸の親族関係の分析において標準になりつつあります。
縄文文化の埋葬様式に関して、研究者は集団埋葬パターンにおける個体間の親族関係に関心を抱いてきました。2個体の事例(二重埋葬)、とくに成人と子供では、個体間の遺伝的関係の存在の有無が、縄文社会の構造理解にたいへん重要と考えられました。子供が成人の上に位置するなど、埋葬位置が明確な場合、子供と成人との間に親族関係があった、と推測する研究者がいた一方で、親族関係とは無関係な配置で、むしろ行為の子供とその奴隷だと考える研究者もいました。したがって、成人と子供の埋葬パターンが親族関係を反映しているのかどうか、この親族関係が縄文社会において可能性は高いものの普遍的ではないのかどうか、議論があります。
この研究は、母子関係が疑われる埋葬パターンを調べました。伊川津貝塚遺跡で、中年後期の女性(IK002)が幼児個体(IK001)とともに発掘され、IK001はIK002の胸部から腹部にかけて横たわっていました。最近、IK002の全ゲノム配列が報告され(関連記事)、IK002の系統がユーラシア東部大陸の人口史の観点から分析されました(関連記事)。利用可能なDNA量がひじょうに少なかったため、IK001でゲノム配列決定は実行されませんでしたが、mtDNAのDループの短い断片の予備的なポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、略してPCR)の直接的な配列決定は、IK001がIK002とは異なる配列を有している、と示唆しました。IK001とIK002との間の関係がある場合、その性質を確認するため、IK001について全mtDNAの標的捕獲配列決定が実行されました。258倍の完全なミトコンドリアゲノム配列が得られ、IK001とIK002は母指ではなかった、と確証されました。本論文は、IK001のmtDNA配列を報告し、これら2個体【IK001とIK002】間のあり得る関係を検討します。
●標本
図1は、愛知県の渥美半島に位置する伊川津貝塚遺跡の第12穴の場所を示しています。2010年に行なわれた発掘の過程では、5ヶ所の埋葬坑が見つかりました。全ての埋葬坑には、4号を除いて骨格遺骸一式が含まれており、4号埋葬坑には、幼児(IK001)と成人(IK002)の2個体が含まれていました。IK001はIK002の胸部から腹部にかけて横たわっていたので、この両個体間の関係は、通常の考古学に基づいて母(IK002)と子(IK001)と考えられました。以下は本論文の図1です。
IK001のDNAが抽出され、内在性DNAの比率が低い(1.0%未満)ため、各DNAライブラリではDNA抽出の2倍へと入力量が変更されました。古代DNAの特徴である死後損傷が調べられ、図2では、古代DNAの特徴である損傷が青線(グアニンからアデニンへの変化)と赤線(シトシンからチミンへの変化)で示されています。IK001のmtDNA配列の系統樹は、他のmtDNA配列データを用いて、系統解析は、近隣結合(neighbor-joining、略してNJ)法により構築されました。以下は本論文の図2です。
●解析結果
IK001の完全なミトコンドリアゲノム配列が得られ、網羅率の平均深度が258.28倍で、4279233のマッピング(多少の違いを許容しつつ、ヒトゲノム配列内の類似性が高い処理を同定する情報処理)された読み取りが生成されました(図3)。IK001の完全なミトコンドリアゲノムには16571塩基対が含まれ、改定ケンブリッジ参照配列(rCRS)より2塩基対長いことになりますが、これはC領域における追加の2塩基対のためです。信頼性の高い配列により、単一ヌクレオチド変異と同様に正確なミトコンドリアハプロタイプを得ることが可能となりました。IK001のmtDNAハプログループ(mtHg)はM7a1に分類されました(図3)。IK002のmtHgは以前に、N9b1に分類されました。mtHg-M7a1(約7.5%)はmtHg-M7a1(約2.1%)よりも現代日本人では一般的ですが、両者は縄文人【縄文文化関連個体群】ではより一般的でした。したがって、IK001とIK002は異なるmtHgに分類されました。以下は本論文の図3です。
IK001とIK002との間のmtDNAの異なる系統を明らかにするため、日本列島の古代人(関連記事)と現代人を含む系統樹が構築されました(図4)。IK002は縄文時代早期の居家以岩陰遺跡【群馬県長野原町】から発見された8300年前頃の人類遺骸3個体とクラスタ化します(まとまります)。このクラスタはmtHg-N9bに含まれ、縄文時代後期の船泊遺跡【北海道の礼文島】の2個体(関連記事)を含む先行研究の結果と一致します。一方、IK001は縄文時代中期となる千葉市の加曽利貝塚、縄文時代早期となる佐賀市の東名貝塚遺跡(関連記事)、縄文時代前期となる熊本県宇土市の轟貝塚、縄文時代後期となる沖縄県糸満市の摩文仁ハンタ原遺跡の個体群とクラスタ化します。このクラスタはmtHg-M7aに含まれます。以下は本論文の図4です。
●考察
本論文が提示したIK001の完全なミトコンドリアゲノム配列決定は、IK001とIK002の間で観察された埋葬状況から推測される母子関係と矛盾しました。本論文は非母子関係との調査結果に基づいて、二つの可能性を提案します。一方は、成人と子供は遺伝的に完全に無関係である、ということです。もう一方は、両者【IK001とIK002】は母方系統を共有していないものの、依然として親族関係はある、ということです。
前者の可能性については、いくつかの興味深い考古学的データに基づいて推測できます。IK002は「4I」様式の抜歯で、これは渥美半島の縄文時代後期では一般的な習慣でした。1979年の研究では、「4I」様式のヒト遺骸は渥美半島に由来する個体に、別の抜歯様式である「2C」の個体は、外部集団から来て結婚した個体に属していた、と解釈されました。2009年の研究では、(1)mtHg-N9bおよびM7aは日本列島に居住している人々を除いて現代人集団では見つからず、(2)mtHg-N9bとM7aの間には地理的領域で違いがあり、mtHg-N9bが日本列島の東部において一般的なのに対して、mtHg-M7aは日本列島の西部において一般的である、と報告されました。ミトコンドリアゲノムハプロタイプでは、IK001がM7aに分類された一方で、IK002はN9bに分類されました。これは、IK002が渥美半島出身で、IK001が移民だったことを直ちに証明するわけではありませんが、IK001とIK002がそうしたmtHgに含まれる事実は興味深い結果です。
しかし、以前の考古学的研究に基づくと、第二の可能性【IK001とIK002は母方系統を共有していないものの、親族関係はある】の方がより妥当かもしれません。1996年の研究では、年齢差により、成人と子供の二重埋葬は親子ではなく祖父母と孫でもあるかもしれない、と指摘されました。IK001は、乳歯の萌出状態に基づいて約6歳と考えられています。一方、IK002は下顎大臼歯が歯周病のためすでに失われていたので、中年もしくは初老だったようです。縄文時代における女性の初産は早ければ10代後半だったので、縄文時代の女性には30代後半で孫がいたかもしれません。二重埋葬で発掘されたIK001とIK002の年齢さを考えると、IK002が祖母で、IK001が孫だったかもしれません。IK002がIK001の父親の母【父方祖母】だったならば、そのミトコンドリアゲノムがヌクレオチド配列で異なっていたかもしれません。したがって、IK001とIK002は、母方系統を共有していないものの、依然として親族関係にあるかもしれません。
IK001の全ゲノム配列については、DNAの保存状態がひじょうに悪いためまだ得られていないので、IK001とIK002が親族関係にあるのかどうか、結論づけることはできません。IK002は頭から首にかけて赤い顔料が散布されており、IK002の頭は典型的な縄文土器である五貫森様式土器に接していました。これらの発見の考古学的意味はまだ分かりません。縄文時代の精神文化には、再生と循環としての死生観と、生死の系譜観が含まれます。IK001とIK002の二重埋葬は、「縄文人」が直接的な親子関係を超えた系図的つながりを知っていた証拠かもしれません。この仮説を検証するため、近い将来、第12穴区域で発掘された他の4個体の全ゲノム解析が実行され、IK001では核DNA捕獲配列決定が実行されるでしょう。
参考文献:
Waku D. et al.(2022): Complete mitochondrial genome sequencing reveals double-buried Jomon individuals excavated from the Ikawazu shell-mound site were not in a mother–child relationship. Anthropological Science, 130, 1, 39–45.
https://doi.org/10.1537/ase.2012132
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