3億1900万年前頃の条鰭類魚類の化石化した脳

 3億1900万年前頃の条鰭類魚類の化石化した脳を報告した研究(Figueroa et al., 2023)が公表されました。脳の構造からは、条鰭類魚類の系統間の類縁関係に関して重要な証拠が得られますが、二つの大きな限界のため、この主要な脊椎動物群の神経解剖学的進化の理解が不明瞭になっています。一方は、最初期に分岐した現生系統がそれらの共通祖先から分かれたのが数億年前であり、それらの脳の形態に関するさまざまな側面が、解剖学的構造の他の側面と同様に、祖先的な状態に照らして特殊化していることです。もう一方は、最初期の条鰭類魚類の脳の形態に関して、エンドキャスト(頭蓋内鋳型:頭蓋内空間の天然または仮想の充填物)から得られる大まかな像を超える直接的な制約がないことです。

 この研究は、3億1900万年前頃の条鰭類魚類であるコッコケファルス・ウィルディ(Coccocephalus wildi)における、脳および脳神経の軟部組織の保存について報告します。この保存状態が良好な脊椎動物脳の標本からは、条鰭類魚類系統の初期の神経解剖学的構造を垣間見る窓が得られます。コッコケファルス・ウィルディが示す脳進化パターンは、現生種のみから示唆されるもの以上に複雑で、これは、腕鰭類の派生形質状態を示すとともに、全ての現生条鰭類魚類を統合する形質の起源に時間的な制約を与えます。この知見は、他の動物群について積み重ねられている一連の研究とともに、骨格組織という限られた部分以外の主要な解剖学的体系の初期の進化的構成を理解するうえで、太古の軟部組織の保存が重要であることを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。

古生物学:条鰭類魚類の脳の極めて良好な化石の保存とその進化

古生物学:太古の脳化石から垣間見えた条鰭類魚類の脳の進化

 今回、約3億1900万年前の条鰭類魚類の化石化した脳が発見された。これは既知で最古の脊椎動物脳であり、この最も多様な脊椎動物群の脳の進化に関する重要な手掛かりを保存している。



参考文献:
Figueroa RT. et al.(2023): Exceptional fossil preservation and evolution of the ray-finned fish brain. Nature, 614, 7948, 486–491.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05666-1

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