最古のアシナシイモリ類化石
最古のアシナシイモリ類化石を報告した研究(Kligman et al., 2023)が公表されました。現生の両生類(平滑両生類)は、カエル類(無尾類)とサンショウウオ類(有尾類)から構成されるBatrachia(無尾・有尾類)と、肢がなく蠕虫に似たアシナシイモリ類(無足類)が含まれます。無足類と無尾・有尾類の分岐年代は分子的には古生代と推定されていますが、これまでに発見されているクラウン群平滑両生類の化石は三畳紀のものが最古で、それ以前の化石記録に大きな空白がある、と示唆されています。最近の研究では、単系統の無尾・有尾類がディッソロフス類分椎類の内部に位置づけられましたが、現生のアシナシイモリは四肢のない両生類種で、蠕虫やヘビに似ているものの、アシナシイモリ類はジュラ紀以前の化石が欠如していることから、アシナシイモリ類と無尾・有尾類との類縁関係、およびアシナシイモリ類と古生代の四肢類との近縁性には議論があります。
この研究は、アメリカ合衆国アリゾナ州の後期三畳紀チンル層で発見された、2億2000万年前頃と地質学的に最古のステム群アシナシイモリ類となるクラウン群平滑両生類を報告します。これは、アシナシイモリ類の化石記録を約3500万年さかのぼらせます。この化石は、新属新種のフンクスヴェルミス・ギルモレイ(Funcusvermis gilmorei)と命名されました。この少なくとも76個体となる一連の化石から、初期のアシナシイモリ類の形態的・機能的進化の速度と様式が明らかになり、現生のアシナシイモリの共通祖先に見られる特徴と絶滅した分椎目ディッソロフス科(四肢をもつ両生類)の特徴を併せ持っている一方で、二重の閉顎機構や眼窩の縮小や触手器官といった、現生のアシナシイモリ類に見られる掘削性と関連した筋骨格的特徴が見られず、比較的遅い時期に獲得された、と示されました。以下はフンクスヴェルミス・ギルモレイの想像図(手前、後方は同じ環境に生息した主竜類)です。
これらの化石の出土地は、アシナシイモリ類の起源がパンゲア超大陸の赤道地域にあることを示しており、現生のアシナシイモリ類の生物地理学的分布が、アシナシイモリ類の機能および生理の保存された側面と、プレートテクトニクスによって駆動された分断のパターンを反映している、と示唆されました。この一連の化石からは、アシナシイモリ類に固有な特徴の組み合わせと共に、無尾・有尾類やディッソロフス類分椎類と共通する特徴も明らかになり、これは、現生のアシナシイモリと絶滅した四肢動物の間の空白を埋め、現生両生類がディッソロフス類分椎類(4本の肢を持つ絶滅両生類群)の内部に単一の起源を有する、と裏づける強力な新証拠を提示します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化学:アシナシイモリの最古の化石
蠕虫に似た両生類「アシナシイモリ」の最古の化石について報告する論文が、今週のNatureに掲載される。この知見は、アシナシイモリの起源と両生類の中での位置付けを解明する新たな手掛かりとなっている。
現生のアシナシイモリは、四肢のない両生類種で、蠕虫やヘビに似ている。関連性のある化石が少ないため、アシナシイモリの起源は、ほとんど解明されていない。今回の研究でBen Kligmanたちは、米国アリゾナ州の化石の森国立公園の上部三畳紀チンル層で発見されたアシナシイモリ(少なくとも76個体)の化石化した遺骸の断片を分析した。これらの断片は、2億2000万年前のものとされ、アシナシイモリの化石記録の年代が3500万年もさかのぼった。
この化石生物は、現生のアシナシイモリの共通祖先に見られる特徴と絶滅した分椎目ディッソロフス科(四肢をもつ両生類)の特徴を併せ持っている一方、現生のアシナシイモリが持ついくつかの特徴(例えば触手器官)が見られない。そのため、このアシナシイモリの最古の化石は、現生のアシナシイモリと絶滅した四肢動物の間の空白を埋め、平滑両生亜綱(カエルやサンショウウオも含まれる)におけるアシナシイモリの位置を裏付けるものと言える。
進化学:三畳紀のステム群アシナシイモリ類が裏付ける現生両生類のディッソロフス類起源
Cover Story:ファンキーなワーム:2億2000万年前のアシナシイモリ類化石が両生類の進化のリズムを精緻化する
肢がなく、蠕虫に似た両生類であるアシナシイモリ類の進化上の起源は、よく分かっていない。今回B Kligmanたちは、この問題の解決に役立つ可能性がある、年代が2億2000万年前の既知最古のアシナシイモリ類の化石について報告している。彼らは、米国アリゾナ州にある化石の森国立公園の後期三畳紀のチンル層において、約76個体分のアシナシイモリ類の化石を発見した。Funcusvermis gilmoreiと名付けられたこの新属新種は、現生のアシナシイモリ類の共通祖先に見られる特徴と、ディッソロフス類分椎類という4本の肢を持つ絶滅両生類群に見られる特徴を併せ持つ。しかし、F. gilmoreiは、現生アシナシイモリ類に見られるいくつかの特徴を欠いてもおり、現生アシナシイモリ類と絶滅四肢類の間の空白を埋めるものであることが示唆される。表紙は、F. gilmoreiの想像図で、背景には当時同じ環境に生息していた主竜類のAcaenasuchus geoffreyiが描かれている。
参考文献:
Kligman BT. et al.(2023): Triassic stem caecilian supports dissorophoid origin of living amphibians. Nature, 614, 7946, 102–107.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05646-5
この研究は、アメリカ合衆国アリゾナ州の後期三畳紀チンル層で発見された、2億2000万年前頃と地質学的に最古のステム群アシナシイモリ類となるクラウン群平滑両生類を報告します。これは、アシナシイモリ類の化石記録を約3500万年さかのぼらせます。この化石は、新属新種のフンクスヴェルミス・ギルモレイ(Funcusvermis gilmorei)と命名されました。この少なくとも76個体となる一連の化石から、初期のアシナシイモリ類の形態的・機能的進化の速度と様式が明らかになり、現生のアシナシイモリの共通祖先に見られる特徴と絶滅した分椎目ディッソロフス科(四肢をもつ両生類)の特徴を併せ持っている一方で、二重の閉顎機構や眼窩の縮小や触手器官といった、現生のアシナシイモリ類に見られる掘削性と関連した筋骨格的特徴が見られず、比較的遅い時期に獲得された、と示されました。以下はフンクスヴェルミス・ギルモレイの想像図(手前、後方は同じ環境に生息した主竜類)です。
これらの化石の出土地は、アシナシイモリ類の起源がパンゲア超大陸の赤道地域にあることを示しており、現生のアシナシイモリ類の生物地理学的分布が、アシナシイモリ類の機能および生理の保存された側面と、プレートテクトニクスによって駆動された分断のパターンを反映している、と示唆されました。この一連の化石からは、アシナシイモリ類に固有な特徴の組み合わせと共に、無尾・有尾類やディッソロフス類分椎類と共通する特徴も明らかになり、これは、現生のアシナシイモリと絶滅した四肢動物の間の空白を埋め、現生両生類がディッソロフス類分椎類(4本の肢を持つ絶滅両生類群)の内部に単一の起源を有する、と裏づける強力な新証拠を提示します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化学:アシナシイモリの最古の化石
蠕虫に似た両生類「アシナシイモリ」の最古の化石について報告する論文が、今週のNatureに掲載される。この知見は、アシナシイモリの起源と両生類の中での位置付けを解明する新たな手掛かりとなっている。
現生のアシナシイモリは、四肢のない両生類種で、蠕虫やヘビに似ている。関連性のある化石が少ないため、アシナシイモリの起源は、ほとんど解明されていない。今回の研究でBen Kligmanたちは、米国アリゾナ州の化石の森国立公園の上部三畳紀チンル層で発見されたアシナシイモリ(少なくとも76個体)の化石化した遺骸の断片を分析した。これらの断片は、2億2000万年前のものとされ、アシナシイモリの化石記録の年代が3500万年もさかのぼった。
この化石生物は、現生のアシナシイモリの共通祖先に見られる特徴と絶滅した分椎目ディッソロフス科(四肢をもつ両生類)の特徴を併せ持っている一方、現生のアシナシイモリが持ついくつかの特徴(例えば触手器官)が見られない。そのため、このアシナシイモリの最古の化石は、現生のアシナシイモリと絶滅した四肢動物の間の空白を埋め、平滑両生亜綱(カエルやサンショウウオも含まれる)におけるアシナシイモリの位置を裏付けるものと言える。
進化学:三畳紀のステム群アシナシイモリ類が裏付ける現生両生類のディッソロフス類起源
Cover Story:ファンキーなワーム:2億2000万年前のアシナシイモリ類化石が両生類の進化のリズムを精緻化する
肢がなく、蠕虫に似た両生類であるアシナシイモリ類の進化上の起源は、よく分かっていない。今回B Kligmanたちは、この問題の解決に役立つ可能性がある、年代が2億2000万年前の既知最古のアシナシイモリ類の化石について報告している。彼らは、米国アリゾナ州にある化石の森国立公園の後期三畳紀のチンル層において、約76個体分のアシナシイモリ類の化石を発見した。Funcusvermis gilmoreiと名付けられたこの新属新種は、現生のアシナシイモリ類の共通祖先に見られる特徴と、ディッソロフス類分椎類という4本の肢を持つ絶滅両生類群に見られる特徴を併せ持つ。しかし、F. gilmoreiは、現生アシナシイモリ類に見られるいくつかの特徴を欠いてもおり、現生アシナシイモリ類と絶滅四肢類の間の空白を埋めるものであることが示唆される。表紙は、F. gilmoreiの想像図で、背景には当時同じ環境に生息していた主竜類のAcaenasuchus geoffreyiが描かれている。
参考文献:
Kligman BT. et al.(2023): Triassic stem caecilian supports dissorophoid origin of living amphibians. Nature, 614, 7946, 102–107.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05646-5
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