大河ドラマ『どうする家康』第1回「どうする桶狭間」

 いよいよ今年(2023年)の大河ドラマが始まりました。今年は戦国時代の「三傑」の一人である徳川家康が主人公で、「三傑」の残り二人の織田信長と豊臣秀吉はもちろん、今川義元と武田信玄も登場しますし、おそらく後半には伊達政宗と真田信繁(本作では真田幸村との表記が採用されるかもしれませんが)も登場するでしょうから、戦国時代もの大河ドラマの総決算といった感があります。徳川家康が大河ドラマで主人公となる作品は1983年放送の『徳川家康』以来40年振りで、この時はその後3年連続して近現代もので戦国時代は取り上げられませんでしたから、今回も今後数年間大河ドラマで戦国時代が取り上げられないかもしれません。すでに来年の大河ドラマは紫式部を主人公とする『光る君へ』と発表されており、今後はこれまであまり扱われなかった時代の作品が増えるのかもしれません。

 本作と主人公が同じとなる1983年放送の大河ドラマ『徳川家康』は、とくに三方ヶ原の戦いまではかなり駆け足気味で、小牧・長久手の戦いも意外とあっさり風味でしたが、事蹟がよく知られており、当時としては長命だった家康を主人公として1年間の大河ドラマの枠で描こうとなると、駆け足気味の印象になるのは仕方のないところでしょうか。『徳川家康』は、家康と妻子(妻の築山殿と息子の信康)との関係および大賀弥四郎(これは後世に伝わった名で、じっさいは大岡弥四郎)の動向や、小牧・長久手の戦いの後から家康が上洛するまでの家康と秀吉との駆け引きや、秀吉の死から関ヶ原の戦いまでの家康と石田三成の駆け引きや、大坂の陣前夜あたりから家康の死までは割と丁寧に描かれていました。すでに雑誌などで築山殿の最期が本作の山場になると明かされていますが、その他に家康のどの時期を重視して描くのか、という点も注目されます。

 その点で注目していたのは、父親である松平広忠の配役発表が放送開始の直前までなかったことで、あるいは父親の死後から物語が始まるのかな、とも考えていましたが、まさか初回でいきなり桶狭間の戦いが描かれるとは予想していませんでした。ただ、織田信秀も家康の子役も登場すると発表されているので、桶狭間の戦いの後に家康の幼少期にさかのぼって改めて話が始まるか、家康の幼少期は回想として描かれるのかもしれません。初回も少し家康の幼少期の回想はありましたが、家康は織田家の人質となり、その時知り合った信長を恐れている、という設定のようです。

 初回は、まず桶狭間の戦いのさいに松平元康(徳川家康)が大高城にいる場面から始まり、その後がオープニングでした。オープニングは、どうも響いてくる感じがしない曲で、背景の映像でクレジットが見えづらいこともあり、正直なところ改善してもらいたいものです。オープニングの後は、1556年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)に戻り、駿府での家康の様子が描かれましたが、現在なら中学生に相当する年齢の家康は実に頼りなく、優秀なところも描かれたとはいえ、これまで創作で描かれてきた家康像の多くとは大いに異なるようで、ここからどのように天下人へとなるのかが、本作の見どころとなりそうです。

 それにしても、確かに家康は江戸時代に神格化されており、それは近現代にかなり相対化されただろうとはいえ、まだ神格化の影響はあるでしょうから、それをさらに相対化しようとするような人物造形にも意味はあると思いますが、今川義元が討ち取られてからの狼狽と失踪など、初回を視聴した限りでは、やや行き過ぎのように感じました。正直なところ、かなり不安な始まりでしたが、今川義元の教えが天下人となった後の家康にとって大きな意味を有することになりそうですし、初回から終盤に向けての布石は打たれているように思うので、序盤で見切ることなく、長い目で見ていくと楽しめるかな、と期待しています。

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