大相撲初場所千秋楽
先場所に続いて今場所も横綱の照ノ富士関が全休となり、もう横綱昇進前後の強さを取り戻すことは難しいでしょうし、復帰しても横綱に相応しい成績を残せるのか不明で、正直なところ、このまま復帰できずに引退するのではないか、と懸念されます。横綱を長く務められないだろう、と照ノ富士関自身も横綱昇進当初から考えていたでしょうが、横綱として短命に終わったとしても、横綱昇進前後の強さは見事で、白鵬関が衰えて引退した後の横綱の権威を短期間とはいえ保ったのは賞賛に値すると思います。少なくとも、照ノ富士関は弱い横綱として批判されるべきではない、と私は考えています。
照ノ富士関の休場により、今場所も近年ではすっかり恒例になった混戦が予想され、4場所連続の平幕優勝もあるかな、と考えていました。もっとも、先場所まで3場所連続で平幕優勝とはいっても、いずれも三役で勝ち越し経験のある力士ですから、大関から平幕上位までの力の差が以前よりずっと小さくなっており、混戦の中で好調で勢いに乗った力士が優勝している、ということなのだと思います。今場所は関脇と小結が4人ずつという異例の番付でしたが、これも大関から平幕上位までの力量が拮抗しており、混戦状況から抜け出す力士がなかなか現れないからで、三役の地位が「渋滞」していることはこうした状況を表しているのでしょう。
この状況を若手力士のだらしなさに求める見解は相撲関係者や愛好者の間で珍しくないようで、今月(2023年1月)読売新聞に掲載された八角理事長(元横綱の北勝海関)への取材記事や、最近刊行された専門誌の論説によく表れていたように思います。つまり、現在の若手力士には稽古量や意欲が昔の力士と比較して足りないのではないか、というわけです。比較はなかなか難しそうですが、あるいは、そうした側面も否定できないのかもしれません。
しかし、少子高齢化で以前よりも新弟子の素質が劣っているのだとしたら、高齢の関取が幕内で以前より活躍しており、若手力士が突き抜けられないことも頷けないわけではありません。また、以前よりも八百長が激減しているのだとしたら、体力の消耗度合いが大きくなり、負傷しやすくなるという意味で、大関に昇進するような成績を残すことは難しくなっているでしょうし、当然のことながら横綱昇進はそれ以上に難しいわけです。八百長が横行していた時代の基準を若手力士に求めてだらしないと批判するのは、公平ではないでしょう。
正直なところ、八百長なしで1場所15日間(関取)、年間6場所は肉体的にかなりきついと考えるべきで、それで八百長が横行していた頃の大関や横綱に相応しい安定した成績を要求するのは酷ではないか、とも思います。ただ、1場所の日数や年間の場所数を減らせば、相撲関係者の待遇も悪くなるわけで、ますます身体能力の高い若者が入門してこなくなるでしょうから、何とも難しい問題だとは思います。現役時代に八百長をしなかった、と自負している元力士が、ひたすら八百長撲滅を叫び、真剣勝負ならば客を呼べる、というようなことを正論として主張するのには、かなり違和感があります。だからといって、八百長が横行してよい、というわけでもないのが、難しいところです。
優勝争いは、9日目に1敗で単独首位に立った出場力士では番付で最上位となる貴景勝関が、このまま独走するのかとも思ったら、11日目に琴ノ若関、12日目には霧馬山関にも負けて今場所も混戦模様になり、13日目を迎えた時点では阿武咲関が2敗で単独首位に立ちました。3敗の貴景勝関と2敗の阿武咲関は13日目に対戦し、貴景勝関が勝ち、さらに混戦となりました。阿武咲関は14日目に霧馬山関に負けて4敗となり、優勝争いは14日目に3敗を守った琴勝峰関と貴景勝関との千秋楽結びの一番での相星決戦に持ち込まれました。
結びの一番は、貴景勝が琴勝峰関を圧倒して勝ち、12勝3敗で3回目の優勝を果たしました。現時点での力の差がはっきりと出た感じです。貴景勝関は来場所、横綱昇進に挑むことになりますが、横綱が照ノ富士関だけで、いつ引退しても不思議ではないので、昇進基準はやや甘くなるかもしれず、12勝以上での優勝か13勝以上での優勝同点で横綱昇進でしょうか。正直なところ、押し相撲で不安定なところがあり、怪我が多い貴景勝関は横綱に相応しくないと考えているので、豊昇龍関か霧馬山関が貴景勝関の横綱昇進を阻止し、大関から一気に横綱まで昇進してもらいたいものです。
琴勝峰関は伸び悩んでいる感もありましたが、11勝4敗として、これで覚醒するのか、今後が注目されます。まずは三役への昇進と定着が目標となるでしょう。阿武咲関は千秋楽に豊昇龍関と対戦して反則負けで、10勝5敗で終わりました。阿武咲関は21歳で小結に昇進して勝ち越し、期待を集めましたが、その直後の負傷により一度は十両まで落ち、前頭2枚目までしか番付を戻せていませんでした。負傷の影響が長引いたのでしょうが、今場所は12日目に単独首位に立つなど活躍し、今後は三役復帰も期待されます。
豊昇龍関は初日から4連勝で、序盤に強い実力者の玉鷲関を4日目に圧倒した時には、このまま優勝して大関に昇進するのではないか、とさえ思いましたが、5日目から負けが込み、9日目に若元春関に負けて6勝3敗となり、この時に負傷して10日目は休場となりました。今場所は休場かと思ったら、11日目に再出場したものの、やはり明らかに状態が悪く、千秋楽は阿武咲関と対戦して反則勝ちで8勝7敗と辛うじて勝ち越しました。正直なところ、豊昇龍関は休場したままの方がよかったとは思いますが、ともかく今は、この強行出場が今後悪影響を及ぼさないよう、願っています。豊昇龍関は来場所、13勝以上で優勝なら大関に昇進でしょうか。豊昇龍関は確実に以前より強くなっていると思いますから、年内の大関昇進が期待されます。ただ、小結で11勝4敗と二桁勝った霧馬山関の方が、豊昇龍関より先に大関に昇進するかもしれません。
先場所優勝した阿炎関は初日から5連勝で、5日目には豊昇龍関が負けただけに、このまま今場所も優勝して、年内には大関に昇進するのではないか、とも思いましたが、6日目から4連敗となり、何とか千秋楽に勝ち越したものの8勝7敗に終わりました。解説では肘を痛めた可能性が指摘されていましたが、やはり阿炎関は突き押しが基本なだけに、不安定なところがあるのは否めません。しかし、調子がよければ優勝しても不思議ではない力を示したとは思います。若隆景関は14日目に何とか勝ち越し、千秋楽は錦木関に攻め込まれたものの辛うじて勝ち、9勝6敗としました。若隆景関は来場所、全勝優勝でもしない限り大関昇進はないでしょうし、豊昇龍関や霧馬山関や新三役で8勝7敗と勝ち越した琴ノ若関など他にも大関候補がおり、今後も大関昇進は厳しいように思います。ただ、若隆景関は長く三役を務めることはできそうです。
照ノ富士関の休場により、今場所も近年ではすっかり恒例になった混戦が予想され、4場所連続の平幕優勝もあるかな、と考えていました。もっとも、先場所まで3場所連続で平幕優勝とはいっても、いずれも三役で勝ち越し経験のある力士ですから、大関から平幕上位までの力の差が以前よりずっと小さくなっており、混戦の中で好調で勢いに乗った力士が優勝している、ということなのだと思います。今場所は関脇と小結が4人ずつという異例の番付でしたが、これも大関から平幕上位までの力量が拮抗しており、混戦状況から抜け出す力士がなかなか現れないからで、三役の地位が「渋滞」していることはこうした状況を表しているのでしょう。
この状況を若手力士のだらしなさに求める見解は相撲関係者や愛好者の間で珍しくないようで、今月(2023年1月)読売新聞に掲載された八角理事長(元横綱の北勝海関)への取材記事や、最近刊行された専門誌の論説によく表れていたように思います。つまり、現在の若手力士には稽古量や意欲が昔の力士と比較して足りないのではないか、というわけです。比較はなかなか難しそうですが、あるいは、そうした側面も否定できないのかもしれません。
しかし、少子高齢化で以前よりも新弟子の素質が劣っているのだとしたら、高齢の関取が幕内で以前より活躍しており、若手力士が突き抜けられないことも頷けないわけではありません。また、以前よりも八百長が激減しているのだとしたら、体力の消耗度合いが大きくなり、負傷しやすくなるという意味で、大関に昇進するような成績を残すことは難しくなっているでしょうし、当然のことながら横綱昇進はそれ以上に難しいわけです。八百長が横行していた時代の基準を若手力士に求めてだらしないと批判するのは、公平ではないでしょう。
正直なところ、八百長なしで1場所15日間(関取)、年間6場所は肉体的にかなりきついと考えるべきで、それで八百長が横行していた頃の大関や横綱に相応しい安定した成績を要求するのは酷ではないか、とも思います。ただ、1場所の日数や年間の場所数を減らせば、相撲関係者の待遇も悪くなるわけで、ますます身体能力の高い若者が入門してこなくなるでしょうから、何とも難しい問題だとは思います。現役時代に八百長をしなかった、と自負している元力士が、ひたすら八百長撲滅を叫び、真剣勝負ならば客を呼べる、というようなことを正論として主張するのには、かなり違和感があります。だからといって、八百長が横行してよい、というわけでもないのが、難しいところです。
優勝争いは、9日目に1敗で単独首位に立った出場力士では番付で最上位となる貴景勝関が、このまま独走するのかとも思ったら、11日目に琴ノ若関、12日目には霧馬山関にも負けて今場所も混戦模様になり、13日目を迎えた時点では阿武咲関が2敗で単独首位に立ちました。3敗の貴景勝関と2敗の阿武咲関は13日目に対戦し、貴景勝関が勝ち、さらに混戦となりました。阿武咲関は14日目に霧馬山関に負けて4敗となり、優勝争いは14日目に3敗を守った琴勝峰関と貴景勝関との千秋楽結びの一番での相星決戦に持ち込まれました。
結びの一番は、貴景勝が琴勝峰関を圧倒して勝ち、12勝3敗で3回目の優勝を果たしました。現時点での力の差がはっきりと出た感じです。貴景勝関は来場所、横綱昇進に挑むことになりますが、横綱が照ノ富士関だけで、いつ引退しても不思議ではないので、昇進基準はやや甘くなるかもしれず、12勝以上での優勝か13勝以上での優勝同点で横綱昇進でしょうか。正直なところ、押し相撲で不安定なところがあり、怪我が多い貴景勝関は横綱に相応しくないと考えているので、豊昇龍関か霧馬山関が貴景勝関の横綱昇進を阻止し、大関から一気に横綱まで昇進してもらいたいものです。
琴勝峰関は伸び悩んでいる感もありましたが、11勝4敗として、これで覚醒するのか、今後が注目されます。まずは三役への昇進と定着が目標となるでしょう。阿武咲関は千秋楽に豊昇龍関と対戦して反則負けで、10勝5敗で終わりました。阿武咲関は21歳で小結に昇進して勝ち越し、期待を集めましたが、その直後の負傷により一度は十両まで落ち、前頭2枚目までしか番付を戻せていませんでした。負傷の影響が長引いたのでしょうが、今場所は12日目に単独首位に立つなど活躍し、今後は三役復帰も期待されます。
豊昇龍関は初日から4連勝で、序盤に強い実力者の玉鷲関を4日目に圧倒した時には、このまま優勝して大関に昇進するのではないか、とさえ思いましたが、5日目から負けが込み、9日目に若元春関に負けて6勝3敗となり、この時に負傷して10日目は休場となりました。今場所は休場かと思ったら、11日目に再出場したものの、やはり明らかに状態が悪く、千秋楽は阿武咲関と対戦して反則勝ちで8勝7敗と辛うじて勝ち越しました。正直なところ、豊昇龍関は休場したままの方がよかったとは思いますが、ともかく今は、この強行出場が今後悪影響を及ぼさないよう、願っています。豊昇龍関は来場所、13勝以上で優勝なら大関に昇進でしょうか。豊昇龍関は確実に以前より強くなっていると思いますから、年内の大関昇進が期待されます。ただ、小結で11勝4敗と二桁勝った霧馬山関の方が、豊昇龍関より先に大関に昇進するかもしれません。
先場所優勝した阿炎関は初日から5連勝で、5日目には豊昇龍関が負けただけに、このまま今場所も優勝して、年内には大関に昇進するのではないか、とも思いましたが、6日目から4連敗となり、何とか千秋楽に勝ち越したものの8勝7敗に終わりました。解説では肘を痛めた可能性が指摘されていましたが、やはり阿炎関は突き押しが基本なだけに、不安定なところがあるのは否めません。しかし、調子がよければ優勝しても不思議ではない力を示したとは思います。若隆景関は14日目に何とか勝ち越し、千秋楽は錦木関に攻め込まれたものの辛うじて勝ち、9勝6敗としました。若隆景関は来場所、全勝優勝でもしない限り大関昇進はないでしょうし、豊昇龍関や霧馬山関や新三役で8勝7敗と勝ち越した琴ノ若関など他にも大関候補がおり、今後も大関昇進は厳しいように思います。ただ、若隆景関は長く三役を務めることはできそうです。
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