『卑弥呼』第101話「最後の大嘘」
『ビッグコミックオリジナル』2023年2月5日号掲載分の感想です。前回は、ところで終了しました。今回は、金砂(カナスナ)国の青谷(アオタニ)邑(現在の鳥取市青谷町でしょうか)で、ヤノハとミマト将軍が日下(ヒノモト)国を盟主とする連合軍を迎え撃つための準備を見守っている場面から始まります。ヤノハは木を伐採させ、弓の射程距離を確認していました。その数日前、吉備(キビ)国の萱館(カヤノヤカタ)では、日下からヤノハへ派遣された使者がとフトニ王(大日本根子彦太瓊天皇、つまり記紀の第7代孝霊天皇でしょうか)に謁見しようとしましたが、すでにフトニ王は出立していました。フトニの王君に直接、敵である山社(ヤマト)連合軍の盟主たる日見子(ヒミコ)、つまりヤノハの回答を伝えねばならない、と考えた使者は、館に寄らずにフトニ王を追いかけることにします。しかし、萱館の警固兵は、フトニ王より、数日後に日下からの死者の首が届くので、それを待ってフトニ王一行を追うよう、命じられていました。フトニ王は、使者が敵(山社連合軍)に斬首されると予想していたわけです。使者は、戦になるというフトニ王の推察は正しいが、敵の総大将である日見子は自分を殺さなかったので、急いでフトニ王に会わねばならない、と考えます。兵士の一人は使者に、フトニ王に伝えるべき内容を報告します。伺見(ウカガミ、間者)からの報告によると、2日遅れで伊都(イト)と末盧(マツラ)と宍門(アナト)の連合軍が向かっている、と兵士から聞いた使者は、敵は二手に分かれ、一方は北上して日下連合軍の背後を衝くつもりなのか、と推測します。使者は、敵軍がもうギリギリの距離まで近づいているような気配に怯えていたが、2日の距離なら王君を守るのに充分な時間がある、と安堵します。
青谷では、ヤノハとヌカデが日下連合軍を迎撃するための準備を見守っていました。ヤノハの奇策に感心するヌカデに、ヤノハ自信なさげに、敵がこの策に引っかからねば我々は全滅だ、と言います。嘘とはったりだけで筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)の王たちを手玉に取ったお前ならきっと上手くいく、と言うヌカデに、今度は自信がない、とヤノハは打ち明けます。勝つも負けるもどこか他人事だったヤノハの言葉とは思えない、と言うヌカデに、最初は自分を守るためだけに日見子と嘘をつき、次は赤子を産むため千穂(現在の高千穂でしょうか)で大嘘をついたが、その大切な息子も結局は手放し、自分が守るべきは筑紫島の人々だけになってしまった、とヤノハは嘆息します。もし筑紫島の人々も守れないなら、自分は生きている資格がないので、一世一代、最後の大嘘をついた、たとえ自分が死んでもこの戦いはここで終わらせねばならない、覚悟を示すヤノハに、たった700の兵で1万人の軍勢を食い止めようとしているのだから、思うままにやれ、とヌカデは励まします。ヤノハは、後はフトニ王の背後を衝く総勢300人の友軍の真の目的が知られないことを祈るのみだ、と言います。
吉備と金砂の国境では、日下の使者がフトニ王に謁見していました。フトニ王は、使者がまだ生きていることを意外に思い、死者は、なぜ山社の日見子(ヤノハ)がそうしたのか、意図が分からない、と答えます。フトニ王は、慈悲深さだろうが、それは命取りだ、と言います。背後から伊都と末盧と宍門の300人の兵が迫っている、と使者が報告すると、フトニ王の後継者である息子のクニクル王子(記紀の孝元天皇、つまり大日本根子彦国牽天皇でしょうか)は、フトニ王を挟撃する作戦だと焦り、警固があまりにも手薄なので、本隊に合流するため急ごう、とフトニ王に進言します。しかしフトニ王は、敵の幼稚な作戦を読んでいる、と自信に満ちた表情で語り、あらかじめ軍を二手に分け、5000人の兵は戦場に着いた頃で、残りの5000人の兵はもう1日のところで自分を待っている、とクニクル王子に説明します。つまり、背後を衝く敵を迎え撃つための準備は整っている、というわけで、フトニ王は、全てお見通しだ、と大笑します。
青谷では、丘の上に陣取っていたフトニ王の息子のワカタケ王子(稚武彦命、つまり記紀のワカタケヒコノミコトでしょうか)が、配下の兵から、筑紫島の軍勢の陣地が丘の下にある、と報告を受けました。今すぐ攻めようとするワカタケ王子に、兄の吉備津彦(キビツヒコ)を待たなくてよいのか、と兵が進言します。するとワカタケ王子は、兄は戦場に来る気配がないようだ、と不満気に言います。つまりフトニ王の三男である自分を総大将に任せたのだろう、と言ったワカタケ王子は、兄の吉備津彦は吉備や鬼(キ)を一人で平定したかのように吹きまくっているが、半分は自分の手柄だ、と言って、筑紫島軍の陣地が一望できる場所に案内するよう、兵士に命じます。ワカタケ王子は筑紫島軍が無防備でいることに驚き、500人の兵が丘の上から矢を放ち、残りの4500人の兵は青谷邑の両側から攻め込むよう、兵士に命じます。すると兵士は、弓の射程圏は木が伐採された斜面の中程で、姿を曝せば敵にも射られるので、暗くなるのを待つよう、ワカタケ王子に進言します。するとワカタケ王子は不満気に、部下思いといえば聞こえはよいが、細かい男だ、と言います。ワカタケ王子は、陣地に一人で立っている人物を見て、筑紫島の日見子だろう、と推測します。ワカタケ王子が兵士に、日が沈んだら、直ちに自分が日見子(ヤノハ)を一矢で仕留めよう、と呟くところで今回は終了です。
今回は、山社連合軍と日下連合軍の決戦直前までが描かれました。ヤノハはいつものように周到に策をめぐらせているものの、自信はないようです。ヤノハがこうしたことを言えるのはヌカデしかいないでしょうから、その意味でヌカデの存在は本作において大きいように思います。ヤノハの策がどのようなものなのか、まだ明らかになっておらず、フトニ王の背後を衝く総勢300人の友軍の真の目的も明かされていません。以前、ヤノハは敵の総大将を殺せば戦意は長くくじかれるだろう、と語っており(第93話)、フトニ王を殺害しようとしているのかもしれませんが、今回「真の目的」を知られてはならない、とも語っているので、フトニ王の殺害ではなく、別の計画なのかもしれません。いよいよ次回で山社連合軍と日下連合軍が直接的に戦うことになりそうで、ヤノハの策とともに、本作の山場の一つだろうこの決戦がどのような結末になるのか、たいへん楽しみです。
青谷では、ヤノハとヌカデが日下連合軍を迎撃するための準備を見守っていました。ヤノハの奇策に感心するヌカデに、ヤノハ自信なさげに、敵がこの策に引っかからねば我々は全滅だ、と言います。嘘とはったりだけで筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)の王たちを手玉に取ったお前ならきっと上手くいく、と言うヌカデに、今度は自信がない、とヤノハは打ち明けます。勝つも負けるもどこか他人事だったヤノハの言葉とは思えない、と言うヌカデに、最初は自分を守るためだけに日見子と嘘をつき、次は赤子を産むため千穂(現在の高千穂でしょうか)で大嘘をついたが、その大切な息子も結局は手放し、自分が守るべきは筑紫島の人々だけになってしまった、とヤノハは嘆息します。もし筑紫島の人々も守れないなら、自分は生きている資格がないので、一世一代、最後の大嘘をついた、たとえ自分が死んでもこの戦いはここで終わらせねばならない、覚悟を示すヤノハに、たった700の兵で1万人の軍勢を食い止めようとしているのだから、思うままにやれ、とヌカデは励まします。ヤノハは、後はフトニ王の背後を衝く総勢300人の友軍の真の目的が知られないことを祈るのみだ、と言います。
吉備と金砂の国境では、日下の使者がフトニ王に謁見していました。フトニ王は、使者がまだ生きていることを意外に思い、死者は、なぜ山社の日見子(ヤノハ)がそうしたのか、意図が分からない、と答えます。フトニ王は、慈悲深さだろうが、それは命取りだ、と言います。背後から伊都と末盧と宍門の300人の兵が迫っている、と使者が報告すると、フトニ王の後継者である息子のクニクル王子(記紀の孝元天皇、つまり大日本根子彦国牽天皇でしょうか)は、フトニ王を挟撃する作戦だと焦り、警固があまりにも手薄なので、本隊に合流するため急ごう、とフトニ王に進言します。しかしフトニ王は、敵の幼稚な作戦を読んでいる、と自信に満ちた表情で語り、あらかじめ軍を二手に分け、5000人の兵は戦場に着いた頃で、残りの5000人の兵はもう1日のところで自分を待っている、とクニクル王子に説明します。つまり、背後を衝く敵を迎え撃つための準備は整っている、というわけで、フトニ王は、全てお見通しだ、と大笑します。
青谷では、丘の上に陣取っていたフトニ王の息子のワカタケ王子(稚武彦命、つまり記紀のワカタケヒコノミコトでしょうか)が、配下の兵から、筑紫島の軍勢の陣地が丘の下にある、と報告を受けました。今すぐ攻めようとするワカタケ王子に、兄の吉備津彦(キビツヒコ)を待たなくてよいのか、と兵が進言します。するとワカタケ王子は、兄は戦場に来る気配がないようだ、と不満気に言います。つまりフトニ王の三男である自分を総大将に任せたのだろう、と言ったワカタケ王子は、兄の吉備津彦は吉備や鬼(キ)を一人で平定したかのように吹きまくっているが、半分は自分の手柄だ、と言って、筑紫島軍の陣地が一望できる場所に案内するよう、兵士に命じます。ワカタケ王子は筑紫島軍が無防備でいることに驚き、500人の兵が丘の上から矢を放ち、残りの4500人の兵は青谷邑の両側から攻め込むよう、兵士に命じます。すると兵士は、弓の射程圏は木が伐採された斜面の中程で、姿を曝せば敵にも射られるので、暗くなるのを待つよう、ワカタケ王子に進言します。するとワカタケ王子は不満気に、部下思いといえば聞こえはよいが、細かい男だ、と言います。ワカタケ王子は、陣地に一人で立っている人物を見て、筑紫島の日見子だろう、と推測します。ワカタケ王子が兵士に、日が沈んだら、直ちに自分が日見子(ヤノハ)を一矢で仕留めよう、と呟くところで今回は終了です。
今回は、山社連合軍と日下連合軍の決戦直前までが描かれました。ヤノハはいつものように周到に策をめぐらせているものの、自信はないようです。ヤノハがこうしたことを言えるのはヌカデしかいないでしょうから、その意味でヌカデの存在は本作において大きいように思います。ヤノハの策がどのようなものなのか、まだ明らかになっておらず、フトニ王の背後を衝く総勢300人の友軍の真の目的も明かされていません。以前、ヤノハは敵の総大将を殺せば戦意は長くくじかれるだろう、と語っており(第93話)、フトニ王を殺害しようとしているのかもしれませんが、今回「真の目的」を知られてはならない、とも語っているので、フトニ王の殺害ではなく、別の計画なのかもしれません。いよいよ次回で山社連合軍と日下連合軍が直接的に戦うことになりそうで、ヤノハの策とともに、本作の山場の一つだろうこの決戦がどのような結末になるのか、たいへん楽しみです。
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