飲酒や喫煙に関連する遺伝的構造
飲酒や喫煙に関連する遺伝的構造を報告した研究(Saunders et al., 2022)が公表されました。タバコやアルコールの使用は遺伝性の行動で、それぞれ世界の死亡の15%と5.3%に関連していますが、これはおもに疾患や傷害の危険性が広く上昇するためです。これは環境要因(文化的背景や公衆衛生政策など)の影響を受けることもありますが、遺伝的特徴もタバコやアルコールの使用に寄与していることを示す強力な証拠があります。これらの物質の使用は全球的に見られますが、ゲノム規模関連解析(GWAS)は、大部分がヨーロッパ祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)の人を中心に行なわれており、それ以外の集団における飲酒行動や喫煙行動に対する遺伝的寄与は、ほとんど解明されていませんでした。
この研究は、世界規模の祖先系統の4つの主要な勾配(アフリカ、アメリカ、アジア東部、ヨーロッパ)から340万人(約21%が非ヨーロッパ祖先系統)の遺伝的多様性を利用して、タバコアルコールの使用に関連するゲノム座位の発見と精密マッピング(多少の違いを許容しつつ、ヒトゲノム配列内の類似性が高い処理を同定する情報処理)の検出力を高め、祖先系統を考慮したトランスクリプトーム(1細胞中の全mRNAの集合規模関連解析を介してこれらの座位の機能の情報を得て、人口集団内および人口集団間の遺伝的構造とポリジェニックリスクの予測力を評価しました。
その結果、標本規模や遺伝的多様性が増加すると、座位の特定および精密マッピングの分解能が向上すること、と、(2143座位の)3823の関連多様体の大部分が、祖先系統で一貫した効果量を示した、と明らかになりました。しかし、1つの祖先系統で開発された多遺伝子危険性得点(ポリジェニックリスクスコア)は、他の祖先系統ではうまく機能しなかったことから、多遺伝子予測により何らかの利点を得るには、さまざまな祖先系統の標本規模の増加が引き続き必要になる、と浮き彫りになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
遺伝学:飲酒と喫煙に関連する遺伝的バリアントが大規模なゲノムワイド関連解析によって特定された
約340万人を対象とした多人種集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)が実施され、喫煙行動や飲酒行動の遺伝的関連性が4000ほど特定された。この知見は、これらの複雑な行動に対する遺伝的影響の可能性の解明を進めた。今回の研究について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。
喫煙や飲酒は、さまざまな疾患や障害の主要なリスク因子で、環境要因(文化的背景や公衆衛生政策など)の影響を受けることもあるが、遺伝的特徴もタバコやアルコールの使用に寄与していることを示す強力な証拠がある。従来のゲノムワイド関連解析では、多くの人々の遺伝データを比較して喫煙や飲酒に関連する可能性のある遺伝子が特定されたが、主にヨーロッパ系の人々に焦点を合わせていた。一方、それ以外の人種集団における飲酒行動や喫煙行動に対する遺伝的寄与は、ほとんど解明されていなかった。
今回、Scott Vrieze、Dajiang Liuたちは、4つの人種集団(アフリカ系、アメリカ系、東アジア系、ヨーロッパ系)の約340万人を含む60のコホートのゲノムワイド関連解析データをまとめ、解析を行った。研究コホートの20%以上がヨーロッパ系以外の人々によって構成されていた。今回の研究で、喫煙開始年齢や1週間に摂取するアルコール飲料の数などの喫煙行動や飲酒行動に関連する約4000の遺伝的バリアントが特定された。著者は、これらのバリアントの大部分が、異なる人種集団で一貫した影響を示すことを明らかにした。これに対して、ヨーロッパ人のデータを使ってトレーニングされた多遺伝子スコア(複数の遺伝的バリアントの集合的影響に基づいた遺伝的関連性の評価基準)は、ヨーロッパ系以外の人種集団に適用した場合の予測能力が、ヨーロッパ系の人種集団に適用した場合よりも低かった。この知見は、複数の人種集団に適用できる多遺伝子スコアを開発することが未解決の課題であることを示唆している。
今回の研究で得られた知見は、喫煙行動や飲酒行動に関連する遺伝的要因の解明を進め、このような研究におけるサンプルサイズを拡大することと多様な人種集団を検討することの重要性を強調している。
遺伝学:遺伝的多様性によりたばこやアルコールの使用に関する遺伝子発見が促される
遺伝学:遺伝的多様性を利用して物質使用関連座位の特定を改善
今回、最大340万人を対象とした複数の祖先系集団を含むゲノム規模関連メタ解析により、喫煙行動や飲酒行動についての数千の遺伝的関連がマッピングされた。
参考文献:
Saunders GRB. et al.(2022): Genetic diversity fuels gene discovery for tobacco and alcohol use. Nature, 612, 7941, 720–724.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05477-4
この研究は、世界規模の祖先系統の4つの主要な勾配(アフリカ、アメリカ、アジア東部、ヨーロッパ)から340万人(約21%が非ヨーロッパ祖先系統)の遺伝的多様性を利用して、タバコアルコールの使用に関連するゲノム座位の発見と精密マッピング(多少の違いを許容しつつ、ヒトゲノム配列内の類似性が高い処理を同定する情報処理)の検出力を高め、祖先系統を考慮したトランスクリプトーム(1細胞中の全mRNAの集合規模関連解析を介してこれらの座位の機能の情報を得て、人口集団内および人口集団間の遺伝的構造とポリジェニックリスクの予測力を評価しました。
その結果、標本規模や遺伝的多様性が増加すると、座位の特定および精密マッピングの分解能が向上すること、と、(2143座位の)3823の関連多様体の大部分が、祖先系統で一貫した効果量を示した、と明らかになりました。しかし、1つの祖先系統で開発された多遺伝子危険性得点(ポリジェニックリスクスコア)は、他の祖先系統ではうまく機能しなかったことから、多遺伝子予測により何らかの利点を得るには、さまざまな祖先系統の標本規模の増加が引き続き必要になる、と浮き彫りになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
遺伝学:飲酒と喫煙に関連する遺伝的バリアントが大規模なゲノムワイド関連解析によって特定された
約340万人を対象とした多人種集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)が実施され、喫煙行動や飲酒行動の遺伝的関連性が4000ほど特定された。この知見は、これらの複雑な行動に対する遺伝的影響の可能性の解明を進めた。今回の研究について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。
喫煙や飲酒は、さまざまな疾患や障害の主要なリスク因子で、環境要因(文化的背景や公衆衛生政策など)の影響を受けることもあるが、遺伝的特徴もタバコやアルコールの使用に寄与していることを示す強力な証拠がある。従来のゲノムワイド関連解析では、多くの人々の遺伝データを比較して喫煙や飲酒に関連する可能性のある遺伝子が特定されたが、主にヨーロッパ系の人々に焦点を合わせていた。一方、それ以外の人種集団における飲酒行動や喫煙行動に対する遺伝的寄与は、ほとんど解明されていなかった。
今回、Scott Vrieze、Dajiang Liuたちは、4つの人種集団(アフリカ系、アメリカ系、東アジア系、ヨーロッパ系)の約340万人を含む60のコホートのゲノムワイド関連解析データをまとめ、解析を行った。研究コホートの20%以上がヨーロッパ系以外の人々によって構成されていた。今回の研究で、喫煙開始年齢や1週間に摂取するアルコール飲料の数などの喫煙行動や飲酒行動に関連する約4000の遺伝的バリアントが特定された。著者は、これらのバリアントの大部分が、異なる人種集団で一貫した影響を示すことを明らかにした。これに対して、ヨーロッパ人のデータを使ってトレーニングされた多遺伝子スコア(複数の遺伝的バリアントの集合的影響に基づいた遺伝的関連性の評価基準)は、ヨーロッパ系以外の人種集団に適用した場合の予測能力が、ヨーロッパ系の人種集団に適用した場合よりも低かった。この知見は、複数の人種集団に適用できる多遺伝子スコアを開発することが未解決の課題であることを示唆している。
今回の研究で得られた知見は、喫煙行動や飲酒行動に関連する遺伝的要因の解明を進め、このような研究におけるサンプルサイズを拡大することと多様な人種集団を検討することの重要性を強調している。
遺伝学:遺伝的多様性によりたばこやアルコールの使用に関する遺伝子発見が促される
遺伝学:遺伝的多様性を利用して物質使用関連座位の特定を改善
今回、最大340万人を対象とした複数の祖先系集団を含むゲノム規模関連メタ解析により、喫煙行動や飲酒行動についての数千の遺伝的関連がマッピングされた。
参考文献:
Saunders GRB. et al.(2022): Genetic diversity fuels gene discovery for tobacco and alcohol use. Nature, 612, 7941, 720–724.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05477-4
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