白亜紀の鳥類化石により見直される鳥類の進化
白亜紀の鳥類化石を報告した研究(Benito et al., 2022)が公表されました。骨口蓋は、現生鳥類の最も古く分岐した2つのクレード(単系統群)であると新顎類(現生鳥類のほぼ全て)と古顎類(ヒクイドリやダチョウやシギダチョウ科など)を判別する特徴です。新顎類は口蓋骨が癒合しておらず、頭蓋が概して動的で、口蓋に関節があるのに対して、古顎類は頭蓋が比較的固定されており、翼状骨と口蓋骨が癒合して単一の要素を構成し、口蓋に柔軟な関節がなく、この状態は長年、新鳥類(Neornithes)と呼ばれるクラウン群鳥類(関連記事)の祖先的なものと考えられてきました。しかし、口蓋部分は壊れやすく、新鳥類の起源に近い分類群の口蓋の化石証拠は乏しいので、新鳥類の口蓋の祖先的状態に関する強力な推論が妨げられてきました。
この研究は、現生の新顎類クレードであるキジカモ類(キジ類およびカモ類)のものに極めてよく似た翼状骨を有する、6700万年前頃となる後期白亜紀の有歯オルニトゥラエ類(Ornithurae)の新たな分類群を報告します。新属新種のジュナヴィス・フィナリデンス(Janavis finalidens)は、全体的な形態が、中生代のよく知られたオルニトゥラエ類であるイクチオルニス(Ichthyornis)におおむね類似しているものの、ジュナヴィス・フィナリデンスの方がはるかに大型で、頭蓋後方の骨の含気性が著しく高い、と明らかになりました。ジュナヴィス・フィナリデンスは、イクチオルニス以外では既知で最初の充分に描写されたイクチオルニス類(Ichthyornithes)に位置づけられ、このクレードが白亜紀の末まで存続したことが明確に実証されました。
ジュナヴィス・フィナリデンスは、中生代の非クラウン群オルニトゥラエ類の少なくとも一部には、解剖学的に新顎類的な口蓋が存在したことを裏づけています。これは、現生のキジカモ類のものに似た翼状骨がクラウン群鳥類の祖先形質である可能性を示唆しています。この知見は、イクチオルニス類の口蓋に関する最近の証拠と合わせて、クラウン群鳥類の祖先的な口蓋についての長年の想定を覆すもので、「偽歯鳥類(ペラゴルニス類)」など新生代初期のいくつかの奇妙な鳥類で主張されている、キジカモ類との類縁性の再評価を促すことになるでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
化石:鳥類の進化を見直すきっかけになるかもしれない白亜紀の鳥の化石
白亜紀の歯の生えた鳥の化石に現生鳥類(ニワトリ、アヒルなど)と同じ特徴が見られたという意外な発見を報告するDaniel Fieldたちの論文が、Natureに掲載される。この発見は、鳥類の起源に関する長年の仮説に異議を唱えるものであり、鳥類の進化と分類について再考を促すものとなる可能性がある。
現生鳥類は、2つの基本的な分類群(古顎類と新顎類)のいずれかに属している。古顎類(ヒクイドリ、ダチョウ、シギダチョウ科など)は、頭蓋の骨格が厳密な接合によって互いに連結されており、口蓋に柔軟な関節がない。新顎類(ニワトリやアヒルをはじめとした全ての現生鳥類種を含む)は、頭蓋の骨格がかなり緩い接合によって連結されており、口蓋に関節がある。鳥類の祖先(例えば獣脚類恐竜)は、融合した口蓋を持っていたため、これまでは古顎類の頭蓋骨を持つ鳥類から新顎類が進化したと考えられていた。ただし、口蓋部分は壊れやすく、化石記録において良好な状態で保存されることがほとんどなかったため、この仮説を検証することは困難だった。Fieldたちの論文では、6700万年前の鳥類種(Janavis finalidens)の部分的な骨格が記述され、その口蓋が陸鳥や水鳥の現生種とほとんど区別できないという観察結果が示されている。このことは、新顎類の頭蓋骨を持つ鳥類が最初に進化し、そこから古顎類が派生したことを示唆している。
J. finalidensは、象徴的な歯の生えた海鳥イクチオルニスの最も近縁な鳥類種であることが知られているが、その体重は、これまでで最大のイクチオルニスの化石標本の2倍以上であった可能性がある。また、今回の研究は、魚鳥上目が、白亜紀の末期まで生き残り、最終的には白亜紀末の鳥類様恐竜の大量絶滅の際に死に絶えたことを示している。
古生物学:クラウン群鳥類祖先が新顎類的であったことを裏付ける白亜紀のオルニトゥラエ類
古生物学:クラウン群鳥類の祖先は新顎類に近かった
今回、後期白亜紀の新種の化石鳥類が記載され、その口蓋の特徴が新顎類のものに似ていることが示された。この結果は、鳥類の分類を根底から見直す必要性を示唆している。
参考文献:
Benito J. et al.(2022): Cretaceous ornithurine supports a neognathous crown bird ancestor. Nature, 612, 7938, 100–105.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05445-y
この研究は、現生の新顎類クレードであるキジカモ類(キジ類およびカモ類)のものに極めてよく似た翼状骨を有する、6700万年前頃となる後期白亜紀の有歯オルニトゥラエ類(Ornithurae)の新たな分類群を報告します。新属新種のジュナヴィス・フィナリデンス(Janavis finalidens)は、全体的な形態が、中生代のよく知られたオルニトゥラエ類であるイクチオルニス(Ichthyornis)におおむね類似しているものの、ジュナヴィス・フィナリデンスの方がはるかに大型で、頭蓋後方の骨の含気性が著しく高い、と明らかになりました。ジュナヴィス・フィナリデンスは、イクチオルニス以外では既知で最初の充分に描写されたイクチオルニス類(Ichthyornithes)に位置づけられ、このクレードが白亜紀の末まで存続したことが明確に実証されました。
ジュナヴィス・フィナリデンスは、中生代の非クラウン群オルニトゥラエ類の少なくとも一部には、解剖学的に新顎類的な口蓋が存在したことを裏づけています。これは、現生のキジカモ類のものに似た翼状骨がクラウン群鳥類の祖先形質である可能性を示唆しています。この知見は、イクチオルニス類の口蓋に関する最近の証拠と合わせて、クラウン群鳥類の祖先的な口蓋についての長年の想定を覆すもので、「偽歯鳥類(ペラゴルニス類)」など新生代初期のいくつかの奇妙な鳥類で主張されている、キジカモ類との類縁性の再評価を促すことになるでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
化石:鳥類の進化を見直すきっかけになるかもしれない白亜紀の鳥の化石
白亜紀の歯の生えた鳥の化石に現生鳥類(ニワトリ、アヒルなど)と同じ特徴が見られたという意外な発見を報告するDaniel Fieldたちの論文が、Natureに掲載される。この発見は、鳥類の起源に関する長年の仮説に異議を唱えるものであり、鳥類の進化と分類について再考を促すものとなる可能性がある。
現生鳥類は、2つの基本的な分類群(古顎類と新顎類)のいずれかに属している。古顎類(ヒクイドリ、ダチョウ、シギダチョウ科など)は、頭蓋の骨格が厳密な接合によって互いに連結されており、口蓋に柔軟な関節がない。新顎類(ニワトリやアヒルをはじめとした全ての現生鳥類種を含む)は、頭蓋の骨格がかなり緩い接合によって連結されており、口蓋に関節がある。鳥類の祖先(例えば獣脚類恐竜)は、融合した口蓋を持っていたため、これまでは古顎類の頭蓋骨を持つ鳥類から新顎類が進化したと考えられていた。ただし、口蓋部分は壊れやすく、化石記録において良好な状態で保存されることがほとんどなかったため、この仮説を検証することは困難だった。Fieldたちの論文では、6700万年前の鳥類種(Janavis finalidens)の部分的な骨格が記述され、その口蓋が陸鳥や水鳥の現生種とほとんど区別できないという観察結果が示されている。このことは、新顎類の頭蓋骨を持つ鳥類が最初に進化し、そこから古顎類が派生したことを示唆している。
J. finalidensは、象徴的な歯の生えた海鳥イクチオルニスの最も近縁な鳥類種であることが知られているが、その体重は、これまでで最大のイクチオルニスの化石標本の2倍以上であった可能性がある。また、今回の研究は、魚鳥上目が、白亜紀の末期まで生き残り、最終的には白亜紀末の鳥類様恐竜の大量絶滅の際に死に絶えたことを示している。
古生物学:クラウン群鳥類祖先が新顎類的であったことを裏付ける白亜紀のオルニトゥラエ類
古生物学:クラウン群鳥類の祖先は新顎類に近かった
今回、後期白亜紀の新種の化石鳥類が記載され、その口蓋の特徴が新顎類のものに似ていることが示された。この結果は、鳥類の分類を根底から見直す必要性を示唆している。
参考文献:
Benito J. et al.(2022): Cretaceous ornithurine supports a neognathous crown bird ancestor. Nature, 612, 7938, 100–105.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05445-y
この記事へのコメント