2022年の古人類学界
あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2022年)も古人類学界について振り返っていくことにします。近年ずっと繰り返していますが、今年も古代DNA研究の進展には目覚ましいものがありました。正直なところ、最新の研究動向にまったく追いついていけていないのですが、今後も少しでも多く取り上げていこう、と考えています。当ブログでもそれなりの数の古代DNA研究を取り上げましたが、知っていてもまだ取り上げていない研究も少なくありませんし、何よりも、まだ知らない研究も多いのではないか、と思います。古代DNA研究の目覚ましい進展を踏まえて、今年もネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)といった非現生人類ホモ属(古代型ホモ属、絶滅ホモ属)と、現生人類(Homo sapiens)とに分けます。
(1)非現生人類ホモ属のDNA研究
コーカサスのネアンデルタール人の新たな古代DNAデータを報告した研究は、ネアンデルタール人の包括的なミトコンドリアDNA(mtDNA)系統樹を提示した点でも意義深いと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_3.html
ネアンデルタール人に由来する現代人の遺伝子では、薬物代謝関連のものが報告されています。
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_17.html
ネアンデルタール人の新たなゲノムデータを多数報告した研究は、ネアンデルタール人が父方居住社会だったと推測している点で大いに注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_23.html
論文ではなく一般向け書籍で原書の刊行は2020年(日本語版の刊行は今年)ですが、古代DNA研究だけではなく、総合的にネアンデルタール人を扱った『ネアンデルタール』は、ネアンデルタール人についての最新研究を把握するうえで、現時点だけではなく今後長く最適な日本語で読める概説書になるでしょう。
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_22.html
(2)現生人類の古代DNA研究
●アフリカ
アフリカ最古のゲノムデータを報告した研究は、古代DNAの保存に適していないサハラ砂漠以南のアフリカの人類遺骸からのものだけに、その意義は大きいと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_27.html
近世ポルトガルのアフリカ出身男性個体の学際的研究は、奴隷貿易のさらなる解明に寄与しました。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_6.html
●ユーラシア西部
中期~後期青銅器時代におけるブリテン島への人類の大規模移住を報告した研究と、
https://sicambre.seesaa.net/article/202201article_32.html
アングロ・サクソン時代におけるヨーロッパ大陸部からブリテン島への大規模な移住を報告した研究
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_16.html
によると、ブリテン島では中石器時代~新石器時代、新石器時代~青銅器時代、中期~後期青銅器時代、アングロ・サクソン時代に大きな移住があり、その中にはほぼ置換と言えるものもあったようです。
ブリテン島に関しては、上部旧石器時代後期に異なる遺伝的構成の集団が存在した可能性を指摘した研究も注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_30.html
ブリテン諸島では、オークニー諸島における青銅器時代のヨーロッパ大陸部からの大規模移住と新石器時代男系の存続を報告した研究は、文化とその担い手の遺伝的構成の関係を単純化してはならない、と改めて警告している点でも注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_13.html
アヴァール人に関しては、支配層がユーラシア東部起源だったことを報告した研究と、
https://sicambre.seesaa.net/article/202204article_5.html
ハンガリー征服者の遺伝的起源を報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_29.html
ポンペイの噴火犠牲者のゲノム解析を報告した研究は、噴火の犠牲者のDNA解析が場合によっては可能であることを示した点で、意義深いと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_31.html
ヨーロッパとアジア南西部の初期農耕民の遺伝的起源を報告した研究は、農耕開始前後のユーラシア西部の人類集団の遺伝的構成をより詳しく解明した点で、大いに注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_15.html
その研究でもメソポタミア地域の先史時代のゲノムデータが報告されていますが、新石器時代移行期の上メソポタミア(メソポタミア北部)のゲノムデータを報告した研究も注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_13.html
新石器時代のヨーロッパにおける農耕民と狩猟採集民との相互作用に関する研究からは、各地でその様相に違いがあることが以前から指摘されており、フランス南部に関する研究は新たな事例を報告しました。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_22.html
歴史時代の古代DNA研究も進んでおり、レヴァントのイスラム教初期の被葬者のゲノムデータを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_10.html
中世のイギリスのアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_7.html
同じく中世ヨーロッパでも、ドイツアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_4.html
ユーラシア西部というかヨーロッパは古代DNA研究が最も進展しており、学際的研究も盛んで、シチリア島における中石器時代と新石器時代との間のゲノムと食性の不連続性を報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_18.html
ヨーロッパ南部とアジア南西部の大規模な古代ゲノム研究は、古代DNA研究が最も進んでいるユーラシア西部だからこそ可能になった、と言えるでしょう。
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_11.html
このようにユーラシア西部では古代ゲノムデータの蓄積が進み、完新世のアジア南西部と地中海東部における人類の移動パターンの推測も可能となりました。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_20.html
ヨーロッパにおける乳糖耐性進化の要因を推測した研究は、飢餓や病原体への曝露が増加した環境でのラクターゼ(乳糖分解酵素)活性持続(LP)の可能性を指摘します。
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_23.html
●ユーラシア東部
ヒマラヤ山脈の古代人のゲノムデータを報告した研究は、チベット人集団の祖先に、まだ標本抽出されていない現生人類集団もいることを指摘した点でも注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_18.html
チベット高原については、現代チベット人の形成に重要と思われるトゥプト(Tubo、吐蕃)期の人類遺骸のゲノムデータが報告されたことも注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_27.html
中国南西部で発見された後期更新世人類のゲノムデータを報告した研究は、以前には非現生人類ホモ属の可能性も指摘されていた雲南省の馬鹿洞(Malu Dong、Red Deer Cave)の14000年前頃のホモ属遺骸が、明確にユーラシア東部現生人類の変異内に収まることを示し、部分的な形態に基づく分類の危うさを改めて指摘した点で、意義深いと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_17.html
アジア東部でも古代DNA研究が遅れていた地域と言える朝鮮半島では、三国時代のゲノムデータが相次いで公表され、それは伽耶と
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_5.html
南西部沿岸地域の甕棺に埋葬された個体です。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_1.html
ユーラシア西部と比較して遅れていますが、ユーラシア東部でも学際的研究が進められており、漢代の新疆住民の学際的研究は、遺伝的構成と食性の関連を指摘します。
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_13.html
●アメリカ大陸
カリフォルニア州の先住民の遺伝的連続性を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202204article_3.html
ティワナク遺跡の先コロンブス期人類集団のゲノムデータを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_19.html
ウルグアイの先スペイン期個体のゲノム解析結果を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_3.html
ブラジルの先コロンブス期古代人の新たなゲノムデータを報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_27.html
●アジア南東部島嶼部とワラセアとオセアニア
過去3000年間のワラセアの人口史に関する研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_14.html
ミクロネシアへの人類の5回の主要な移住を報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_7.html
●非ヒト動物の古代DNA解析
日本の後期更新世と中期完新世のオオカミのDNA解析結果を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_25.html
過去10万年間の古代オオカミのゲノムからイヌの起源を推測した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_18.html
ホッキョクグマの古代ゲノムを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_24.html
絶滅したステラーカイギュウのゲノムとその皮膚および寒冷適応の遺伝的基盤を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_9.html
イベリア半島北部の上部旧石器時代のイヌ遺骸について報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_11.html
200万年前頃のグリーンランドの環境DNAを解析した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_13.html
●総説的論文
現生人類の統一的系図を示した論文や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_9.html
遺伝学と考古学の統合から推測される初期現生人類のアフリカからの拡散と分岐を推測した論文や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202204article_27.html
アジアへの現生人類拡散に関する総説や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_11.html
現代人の表現型へのネアンデルタール人の遺伝的影響に関する総説や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_4.html
化石および遺伝的記録からネアンデルタール人と現生人類の相互作用を推測した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_3.html
アフリカの古代DNA研究に関する総説や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_18.html
ワラセアおよびサフル地域の遺伝学的人類史の概説があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_28.html
集団遺伝学と医学における「祖先系統」理解の問題を指摘した研究は、古代DNA研究を理解するうえで重要な問題が示されています。
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_2.html
新書ですが、篠田謙一『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』は近年の古代DNA研究の成果を網羅的にまとめており、たいへん有益です。
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_12.html
(3)新たなホモ属化石やホモ属の分類
フランス地中海地域における5万年以上前の現生人類の存在を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_15.html
レヴァントの前期更新世のホモ属化石を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_8.html
ラオスで発見されたデニソワ人と考えられるホモ属の歯を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_19.html
アフリカ北部の中期石器時代のホモ属の下顎がアフリカ北部における現生人類の長期にわたる進化の連続性を示している、と指摘した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_7.html
上記の3区分に当てはまりませんが、その他には、デニソワ人の痕跡かもしれないチベット高原の中期更新世人類の手と足の痕跡を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_6.html
アフリカ東部で最古級となる現生人類の年代を見直した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_3.html
熱帯林の人類史に関する総説があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_26.html
頭蓋から現生人類の進化を見直した総説的論文と、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_31.html
初期現生人類の頭蓋内進化を見直した研究は、
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_14.html
現代人的な頭蓋形態の変化、とくに球状化について、前者が発達プログラムおよびその根底にある遺伝的調節を、後者が食性と生活様式の違いを重視している点で、注目されます。
現生人類とネアンデルタール人の最終共通祖先がアジア南西部に存在した可能性を指摘した総説も注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_4.html
アフリカ南部のアウストラロピテクス属化石の年代の見直しを見直した研究は、もし提示された年代が妥当ならば、ホモ属出現より前となる初期人類進化史を大きく書き換える可能性があるだけに、たいへん注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_15.html
この他にも取り上げるべき研究は多くあるはずですが、読もうと思っていながらまだ読んでいない論文もかなり多く、古人類学の最新の動向になかなか追いつけていないのが現状で、重要な研究でありながら把握しきれていないものも多いのではないか、と思います。この状況を劇的に改善させられる自信はまったくないので、せめて今年並には本・論文を読み、地道に最新の動向を追いかけていこう、と考えています。なお、過去の回顧記事は以下の通りです。
2006年
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_27.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_28.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_29.html
2007年
https://sicambre.seesaa.net/article/200712article_28.html
2008年
https://sicambre.seesaa.net/article/200812article_25.html
2009年
https://sicambre.seesaa.net/article/200912article_25.html
2010年
https://sicambre.seesaa.net/article/201012article_26.html
2011年
https://sicambre.seesaa.net/article/201112article_24.html
2012年
https://sicambre.seesaa.net/article/201212article_26.html
2013年
https://sicambre.seesaa.net/article/201312article_33.html
2014年
https://sicambre.seesaa.net/article/201412article_32.html
2015年
https://sicambre.seesaa.net/article/201512article_31.html
2016年
https://sicambre.seesaa.net/article/201612article_29.html
2017年
https://sicambre.seesaa.net/article/201712article_29.html
2018年
https://sicambre.seesaa.net/article/201812article_42.html
2019年
https://sicambre.seesaa.net/article/201912article_57.html
2020年
https://sicambre.seesaa.net/article/202012article_40.html
2021年
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_32.html
(1)非現生人類ホモ属のDNA研究
コーカサスのネアンデルタール人の新たな古代DNAデータを報告した研究は、ネアンデルタール人の包括的なミトコンドリアDNA(mtDNA)系統樹を提示した点でも意義深いと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_3.html
ネアンデルタール人に由来する現代人の遺伝子では、薬物代謝関連のものが報告されています。
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_17.html
ネアンデルタール人の新たなゲノムデータを多数報告した研究は、ネアンデルタール人が父方居住社会だったと推測している点で大いに注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_23.html
論文ではなく一般向け書籍で原書の刊行は2020年(日本語版の刊行は今年)ですが、古代DNA研究だけではなく、総合的にネアンデルタール人を扱った『ネアンデルタール』は、ネアンデルタール人についての最新研究を把握するうえで、現時点だけではなく今後長く最適な日本語で読める概説書になるでしょう。
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_22.html
(2)現生人類の古代DNA研究
●アフリカ
アフリカ最古のゲノムデータを報告した研究は、古代DNAの保存に適していないサハラ砂漠以南のアフリカの人類遺骸からのものだけに、その意義は大きいと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_27.html
近世ポルトガルのアフリカ出身男性個体の学際的研究は、奴隷貿易のさらなる解明に寄与しました。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_6.html
●ユーラシア西部
中期~後期青銅器時代におけるブリテン島への人類の大規模移住を報告した研究と、
https://sicambre.seesaa.net/article/202201article_32.html
アングロ・サクソン時代におけるヨーロッパ大陸部からブリテン島への大規模な移住を報告した研究
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_16.html
によると、ブリテン島では中石器時代~新石器時代、新石器時代~青銅器時代、中期~後期青銅器時代、アングロ・サクソン時代に大きな移住があり、その中にはほぼ置換と言えるものもあったようです。
ブリテン島に関しては、上部旧石器時代後期に異なる遺伝的構成の集団が存在した可能性を指摘した研究も注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_30.html
ブリテン諸島では、オークニー諸島における青銅器時代のヨーロッパ大陸部からの大規模移住と新石器時代男系の存続を報告した研究は、文化とその担い手の遺伝的構成の関係を単純化してはならない、と改めて警告している点でも注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_13.html
アヴァール人に関しては、支配層がユーラシア東部起源だったことを報告した研究と、
https://sicambre.seesaa.net/article/202204article_5.html
ハンガリー征服者の遺伝的起源を報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_29.html
ポンペイの噴火犠牲者のゲノム解析を報告した研究は、噴火の犠牲者のDNA解析が場合によっては可能であることを示した点で、意義深いと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_31.html
ヨーロッパとアジア南西部の初期農耕民の遺伝的起源を報告した研究は、農耕開始前後のユーラシア西部の人類集団の遺伝的構成をより詳しく解明した点で、大いに注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_15.html
その研究でもメソポタミア地域の先史時代のゲノムデータが報告されていますが、新石器時代移行期の上メソポタミア(メソポタミア北部)のゲノムデータを報告した研究も注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_13.html
新石器時代のヨーロッパにおける農耕民と狩猟採集民との相互作用に関する研究からは、各地でその様相に違いがあることが以前から指摘されており、フランス南部に関する研究は新たな事例を報告しました。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_22.html
歴史時代の古代DNA研究も進んでおり、レヴァントのイスラム教初期の被葬者のゲノムデータを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_10.html
中世のイギリスのアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_7.html
同じく中世ヨーロッパでも、ドイツアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_4.html
ユーラシア西部というかヨーロッパは古代DNA研究が最も進展しており、学際的研究も盛んで、シチリア島における中石器時代と新石器時代との間のゲノムと食性の不連続性を報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_18.html
ヨーロッパ南部とアジア南西部の大規模な古代ゲノム研究は、古代DNA研究が最も進んでいるユーラシア西部だからこそ可能になった、と言えるでしょう。
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_11.html
このようにユーラシア西部では古代ゲノムデータの蓄積が進み、完新世のアジア南西部と地中海東部における人類の移動パターンの推測も可能となりました。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_20.html
ヨーロッパにおける乳糖耐性進化の要因を推測した研究は、飢餓や病原体への曝露が増加した環境でのラクターゼ(乳糖分解酵素)活性持続(LP)の可能性を指摘します。
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_23.html
●ユーラシア東部
ヒマラヤ山脈の古代人のゲノムデータを報告した研究は、チベット人集団の祖先に、まだ標本抽出されていない現生人類集団もいることを指摘した点でも注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_18.html
チベット高原については、現代チベット人の形成に重要と思われるトゥプト(Tubo、吐蕃)期の人類遺骸のゲノムデータが報告されたことも注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_27.html
中国南西部で発見された後期更新世人類のゲノムデータを報告した研究は、以前には非現生人類ホモ属の可能性も指摘されていた雲南省の馬鹿洞(Malu Dong、Red Deer Cave)の14000年前頃のホモ属遺骸が、明確にユーラシア東部現生人類の変異内に収まることを示し、部分的な形態に基づく分類の危うさを改めて指摘した点で、意義深いと思います。
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_17.html
アジア東部でも古代DNA研究が遅れていた地域と言える朝鮮半島では、三国時代のゲノムデータが相次いで公表され、それは伽耶と
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_5.html
南西部沿岸地域の甕棺に埋葬された個体です。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_1.html
ユーラシア西部と比較して遅れていますが、ユーラシア東部でも学際的研究が進められており、漢代の新疆住民の学際的研究は、遺伝的構成と食性の関連を指摘します。
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_13.html
●アメリカ大陸
カリフォルニア州の先住民の遺伝的連続性を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202204article_3.html
ティワナク遺跡の先コロンブス期人類集団のゲノムデータを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_19.html
ウルグアイの先スペイン期個体のゲノム解析結果を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_3.html
ブラジルの先コロンブス期古代人の新たなゲノムデータを報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_27.html
●アジア南東部島嶼部とワラセアとオセアニア
過去3000年間のワラセアの人口史に関する研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_14.html
ミクロネシアへの人類の5回の主要な移住を報告した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_7.html
●非ヒト動物の古代DNA解析
日本の後期更新世と中期完新世のオオカミのDNA解析結果を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_25.html
過去10万年間の古代オオカミのゲノムからイヌの起源を推測した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_18.html
ホッキョクグマの古代ゲノムを報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_24.html
絶滅したステラーカイギュウのゲノムとその皮膚および寒冷適応の遺伝的基盤を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_9.html
イベリア半島北部の上部旧石器時代のイヌ遺骸について報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_11.html
200万年前頃のグリーンランドの環境DNAを解析した研究があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_13.html
●総説的論文
現生人類の統一的系図を示した論文や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_9.html
遺伝学と考古学の統合から推測される初期現生人類のアフリカからの拡散と分岐を推測した論文や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202204article_27.html
アジアへの現生人類拡散に関する総説や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_11.html
現代人の表現型へのネアンデルタール人の遺伝的影響に関する総説や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_4.html
化石および遺伝的記録からネアンデルタール人と現生人類の相互作用を推測した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202211article_3.html
アフリカの古代DNA研究に関する総説や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_18.html
ワラセアおよびサフル地域の遺伝学的人類史の概説があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202212article_28.html
集団遺伝学と医学における「祖先系統」理解の問題を指摘した研究は、古代DNA研究を理解するうえで重要な問題が示されています。
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_2.html
新書ですが、篠田謙一『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』は近年の古代DNA研究の成果を網羅的にまとめており、たいへん有益です。
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_12.html
(3)新たなホモ属化石やホモ属の分類
フランス地中海地域における5万年以上前の現生人類の存在を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_15.html
レヴァントの前期更新世のホモ属化石を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_8.html
ラオスで発見されたデニソワ人と考えられるホモ属の歯を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202205article_19.html
アフリカ北部の中期石器時代のホモ属の下顎がアフリカ北部における現生人類の長期にわたる進化の連続性を示している、と指摘した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_7.html
上記の3区分に当てはまりませんが、その他には、デニソワ人の痕跡かもしれないチベット高原の中期更新世人類の手と足の痕跡を報告した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202203article_6.html
アフリカ東部で最古級となる現生人類の年代を見直した研究や、
https://sicambre.seesaa.net/article/202202article_3.html
熱帯林の人類史に関する総説があります。
https://sicambre.seesaa.net/article/202206article_26.html
頭蓋から現生人類の進化を見直した総説的論文と、
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_31.html
初期現生人類の頭蓋内進化を見直した研究は、
https://sicambre.seesaa.net/article/202208article_14.html
現代人的な頭蓋形態の変化、とくに球状化について、前者が発達プログラムおよびその根底にある遺伝的調節を、後者が食性と生活様式の違いを重視している点で、注目されます。
現生人類とネアンデルタール人の最終共通祖先がアジア南西部に存在した可能性を指摘した総説も注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202209article_4.html
アフリカ南部のアウストラロピテクス属化石の年代の見直しを見直した研究は、もし提示された年代が妥当ならば、ホモ属出現より前となる初期人類進化史を大きく書き換える可能性があるだけに、たいへん注目されます。
https://sicambre.seesaa.net/article/202207article_15.html
この他にも取り上げるべき研究は多くあるはずですが、読もうと思っていながらまだ読んでいない論文もかなり多く、古人類学の最新の動向になかなか追いつけていないのが現状で、重要な研究でありながら把握しきれていないものも多いのではないか、と思います。この状況を劇的に改善させられる自信はまったくないので、せめて今年並には本・論文を読み、地道に最新の動向を追いかけていこう、と考えています。なお、過去の回顧記事は以下の通りです。
2006年
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_27.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_28.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_29.html
2007年
https://sicambre.seesaa.net/article/200712article_28.html
2008年
https://sicambre.seesaa.net/article/200812article_25.html
2009年
https://sicambre.seesaa.net/article/200912article_25.html
2010年
https://sicambre.seesaa.net/article/201012article_26.html
2011年
https://sicambre.seesaa.net/article/201112article_24.html
2012年
https://sicambre.seesaa.net/article/201212article_26.html
2013年
https://sicambre.seesaa.net/article/201312article_33.html
2014年
https://sicambre.seesaa.net/article/201412article_32.html
2015年
https://sicambre.seesaa.net/article/201512article_31.html
2016年
https://sicambre.seesaa.net/article/201612article_29.html
2017年
https://sicambre.seesaa.net/article/201712article_29.html
2018年
https://sicambre.seesaa.net/article/201812article_42.html
2019年
https://sicambre.seesaa.net/article/201912article_57.html
2020年
https://sicambre.seesaa.net/article/202012article_40.html
2021年
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_32.html
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