最大級のウミガメの化石

 最大級のウミガメの化石に関する研究(Castillo-Visa et al., 2022)が公表されました。既知の最大級のウミガメは、白亜紀末期頃には北アメリカ大陸周辺の海域に生息していました。その一例が、古代に絶滅したアーケロン(Archelon)属で、体長は4.6m、体重は3.2tにまで成長していました。これとは対照的に、既知のヨーロッパのウミガメは、絶滅種も現生種も甲羅長が1.5mを超えていたものはありません。

 本論文は、スペイン北東部のカル・トラデス(Cal Torrades)化石域で新たに発見されたウミガメの標本の遺骨について報告しています。このウミガメはレヴィアンタノケリス・アエニグマティカ(Leviathanochelys aenigmatica)と命名され、アーケロン属とほぼ同じ大きさと推定されました。2016年から2021年にかけて発掘された遺骸は断片化されていましたが、ほぼ完全な骨盤と背甲(甲羅)の一部から構成され、8360万~7210万年前頃となるカンパニアン期のものと推定されました。この標本には、骨盤の前面から前方に突き出た特徴的な骨の隆起があります。この特徴は、他のウミガメと異なっており、レヴィアンタノケリス・アエニグマティカが古代のウミガメの新しい分類群であることを示しています。この隆起については、呼吸器系に関係している可能性がある、と指摘されています。

 この研究は、骨盤の大きさに基づいて計算し、レヴィアンタノケリス・アエニグマティカの体長が最大3.74mだったかもしれない、と推定しています。また、レヴィアンタノケリス・アエニグマティカの骨盤の幅は最大88.9cmと推定され、アーケロン属の最もよく知られた標本の最大推定値(幅81.0cm)をわずかに上回りました。骨盤の前後の長さは39.5cmと推定され、アーケロン属(長さ46.0cm)よりもわずかに短かいことになります。これにより、レヴィアンタノケリス・アエニグマティカはヨーロッパで発見された最大のウミガメとなり、世界で発見されたウミガメの中で最大級のものとなります。これらの知見は、巨大なウミガメが、北米とヨーロッパの両方で、さまざまな系統において独立に発達したことを示している、と考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:これまでで最大級のウミガメの化石が見つかった

 スペインで発見された古代のカメの新種の化石を調べた研究で、このカメが、史上最大級のウミガメだった可能性が示唆されたことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。このウミガメの推定体長は最大3.74メートルで、これまでにヨーロッパで発見されたウミガメの中で最大のものとされる。

 既知の最大級のウミガメは、白亜紀末期頃には北米大陸周辺の海域に生息していた。その一例が、古代に絶滅したアーケロン属で、体長4.6メートル、体重3.2トンにまで成長していた。これとは対照的に、既知のヨーロッパのウミガメは、絶滅種も現生種も甲羅長が1.5メートルを超えていたものはない。

 この論文で、Àngel H. Luján、Albert Sellésたちは、スペイン北東部のCal Torrades化石域で新たに発見されたウミガメの標本の遺骨について記述している。このウミガメは、Leviathanochelys aenigmaticaと命名され、アーケロン属とほぼ同じ大きさとされた。2016年から2021年にかけて発掘された遺骨は、断片化されていたが、ほぼ完全な骨盤と背甲(甲羅)の一部からなり、8360万~7210万年前のカンパニアン期のものとされた。この標本には、骨盤の前面から前方に突き出た特徴的な骨の隆起がある。この特徴は、他のウミガメと異なっており、Leviathanochelysが古代のウミガメの新しい分類群(群)であることを示している。この隆起については、呼吸器系に関係している可能性があるという見解を論文著者は示している。

 論文著者は、骨盤の大きさに基づいて計算し、Leviathanochelysの体長が最大3.74メートルだったかもしれないと推定している。また、Leviathanochelysの骨盤の幅は、最大88.9センチメートルと推定され、アーケロン属の最もよく知られた標本の最大推定値(幅81.0センチメートル)をわずかに上回った。骨盤の前後の長さは39.5センチメートルと推定され、アーケロン属(長さ46.0センチメートル)よりもわずかに短かった。これにより、Leviathanochelysはヨーロッパで発見された最大のウミガメとなり、世界で発見されたウミガメの中で最大級のものとなる。以上の知見は、巨大なウミガメが、北米とヨーロッパの両方で、さまざまな系統において独立に発達したことを示していると論文著者は考えている。



参考文献:
Castillo-Visa O. et al.(2022): A gigantic bizarre marine turtle (Testudines: Chelonioidea) from the Middle Campanian (Late Cretaceous) of South-western Europe. Scientific Reports, 12, 18322.
https://doi.org/10.1038/s41598-022-22619-w

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