脊椎動物における音声コミュニケーションの起源

 脊椎動物における音声コミュニケーションの起源に関する研究(Jorgewich-Cohen et al., 2022)が公表されました。音声コミュニケーションは、多くの脊椎動物の行動(子育てや配偶者の誘引を容易にするための行動など)の基盤となっています。以前の研究で、音声コミュニケーションはいくつかの分類群で独立して進化した、と示唆されていましたが、この適応に共通の起源があった可能性は充分に解明されていません。系統発生解析では音声コミュニケーションの進化的起源に関する知見が得られていますが、これまでの試みでは、カメやその他の爬虫類などの主要な動物種が無発声(音声によるコミュニケーションができない)動物と考えられていたため、その音声録音が研究には用いられていませんでした。

 この研究はこうした動物の音声コミュニケーション能力を評価するため、4つの脊椎動物クレード(カメとムカシトカゲとアシナシイモリとハイギョ)の53種について、音声録音と行動記録を実施しました。その結果、記録された全ての動物種が、多様な音声レパートリーを有しており、一定種類の音(チーッチーッという音、カチッという音や複雑な音色など)を発する、と判明しました。次に、これらの記録が、魚類以外の脊椎動物の全ての分類群(1800種)の音声コミュニケーションの進化史に関するデータと結合されました。この研究は、こうした分析に基づいて、鼻呼吸する全ての脊椎動物については、音声コミュニケーションの共通起源が約4億700万年前にあった、との見解を提示しています。この研究によって得られた知見は、音声コミュニケーションの起源に関する手がかりとなり、多様な動物分類群における音声コミュニケーションに関する知識を深めています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:脊椎動物における音声コミュニケーションの起源の推定

 これまで無発声動物と考えられていた53種の動物の発声を初めて録音した記録について報告する論文がNature Communications に掲載される。今回の研究では、この録音記録に基づいた分析が行われ、鼻呼吸をする脊椎動物の音声コミュニケーションの起源が、約4億700万年前の共通祖先である可能性が示唆されている。

 音声コミュニケーションは、多くの脊椎動物の行動(子育てや配偶者の誘引を容易にするための行動など)の基盤をなしている。以前の研究で、音声コミュニケーションが、いくつかの分類群で独立して進化したことが示唆されていたが、この適応に共通の起源があったという可能性は、十分に解明されていない。系統発生解析を行うと、音声コミュニケーションの進化的起源に関する知見が得られるが、これまでの試みでは、カメやその他の爬虫類などの主要な動物種が無発声動物(音声によるコミュニケーションができない)と考えられていたためにその音声録音が研究に用いられなかった。

 こうした動物の音声コミュニケーション能力を評価するため、今回、Gabriel Jorgewich-Cohenたちは、4つの脊椎動物クレード(カメ、ムカシトカゲ、アシナシイモリ、ハイギョ)の53種について、音声録音と行動記録を実施した。その結果、記録された全ての動物種が、多様な音声レパートリーを有しており、一定種類の音(チーッチーッという音、カチッという音や複雑な音色など)を発することが判明した。次に、これらの記録が、魚類以外の脊椎動物の全ての分類群(1800種)の音声コミュニケーションの進化史に関するデータと結合された。Jorgewich-Cohenたちは、こうした分析に基づいて、鼻呼吸する全ての脊椎動物については、音声コミュニケーションの共通起源が約4億700万年前にあったという考え方を示している。

 今回の研究によって得られた知見は、音声コミュニケーションの起源に関する手掛かりとなり、多様な動物分類群における音声コミュニケーションに関する知識を深めている。



参考文献:
Jorgewich-Cohen G. et al.(2022): Common evolutionary origin of acoustic communication in choanate vertebrates. Nature Communications, 13, 6089.
https://doi.org/10.1038/s41467-022-33741-8

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