『卑弥呼』第97話「遺言」
『ビッグコミックオリジナル』2022年12月5日号掲載分の感想です。前回は、日下(ヒノモト)のフトニ王(記紀の第7代孝霊天皇でしょうか)が後継者のクニクル王子(記紀の孝元天皇、つまり大日本根子彦国牽天皇でしょうか)に、筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)6ヶ国の連合軍には楽勝できる、と伝えたところで終了しました。今回は、宍門(アナト)国のニキツミ王の館を、ミマアキと那(ナ)国の兵2名が訪れる場面から始まります。ニキツミ王の館の衛兵に怪しまれているミマアキは、自分が筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)の日見子(ヒミコ)様(ヤノハ)と那国のウツヒオ王の命により日下(ヒノモト)国の情勢を探る旅に出た一人で、帰国途上に日下の傘下にある吉備(キビ)国と鬼国(キノクニ)の追撃を受けて命からがら逃げてきた、と衛兵に伝えます。宍門は筑紫島と同盟を結んでいるので、宍門のニキツミ王に助太刀を願う、とミマアキに伝えられた衛兵はミマト将軍を呼んできて、父子が久々に再開します。
金砂(カナスナ)国の出雲では、吉備津彦(キビツヒコ)の率いる兵が、事代主(コトシロヌシ)を慕って本殿に多く集まっている民と対峙しており、吉備津彦は配下が民を排除しようとするのを制して、事代主に本殿から出るよう大声で伝えます。さもなければ、本殿の前の民を皆殺しにするよう命じられているが、事代主が投降すれば事代主を斬首することになる、王君(記紀の第7代孝霊天皇と思われるフトニ王)に命だ、それでも大勢の無辜の民が奪われるよりはましだろうから、おとなしく出てくるよう、吉備津彦は事代主に勧告します。すると、事代主が本殿から出てきます。吉備津彦は、民が事代主をおとなしく通すのか、注視しています。
ミマアキは館でニキツミ王に面会し、その場にはミマト将軍と那国のウツヒオ王がいました。ウツヒオ王からトメ将軍の安否を問われたミマアキは、自分は援軍を求めて宍門に来て、トメ将軍たちは金砂国に留まっている、と答え、ウツヒオ王はトメ将軍の無事を知って安堵します。宍門に筑紫島の6ヶ国が集結していることに驚くミマアキに、ミマト将軍はすべて日見子様(ヤノハ)の決断だ、と言います。ヤノハがどこにいるのか尋ねるミマアキに、秘密の作戦を立てて自ら兵を謁見している、とウツヒオ王が答えます。ミマアキが戻ってきたことは、ミマト将軍がヤノハに伝えており、すぐにヤノハが現れます。この戦いの敵の総大将をヤノハに問われたミマアキは、前線の指揮を執るのは吉備津彦で、総大将は日下のフトニ王だろう、と答えます。ヤノハはミマアキに、自分の創った秘密部隊を率いるよう、命じます。何をするのかミマアキに問われたヤノハは、戦を始めて終わらせる役目だ、と答えます。
出雲では、本殿の長い階段を下りて民の目の前にまで来た事代主に、配下のシラヒコは、今なら間に合うので、民に紛れて撤退しよう、と進言します。しかし事代主は、そうなれば自分の民が殺されてしまう、と却下します。それでもシラヒコは、民は事代主の命を守るためには死ねるし、それが本望だ、自分たちが間を稼ぐので逃げるよう、事代主を説得します。自分たちの命はどうなっても構わない、というわけですが、それども事代主は、民に未知を開けるよう命じます。人は必ず死ぬ、というのが大穴遅命(オオアナムチノカミ)少の教えで、自分は神のために死ぬ役だが、民はそうではなく、自分のためにも神のためにも死んではならず、愛する人、つまり妻子や父母や兄妹や隣人のために命を使うよう、事代主は民を説得します。決して神や国のために死んではならない、それは、人が滅びれば国がなくなり、人を護れば国は生きるからで、とにかく生きろ、と事代主は民に呼びかけます。すると民が泣きながら未知を開け、事代主は吉備津彦へと近づいていきます。事代主が民に、生きて、生きる価値の世を創れ、と遺言を伝えるところで、今回は終了です。
今回は、ミマアキとヤノハの再会、および出雲での事代主の決断が描かれました。ヤノハは秘密部隊を結成し、連弩を持たせたのでしょうか、これをどう活用するのか、注目されます。ヤノハは敵の大将を殺さねば平和は訪れない、と考えていますから、吉備津彦ではなくフトニ王の殺害を計画しているように思います。作中設定では、『日本書紀』は基本的に日下の神話と物語に基づいているようなので、最終的には日下側が筑紫島諸国を征服するとも考えられますが、あるいは日下と筑紫島諸国との間で何らかの合意に達して、ヤマト王権につながる巨大な政治勢力が成立する、という話になるのかもしれません。そうだとしても終盤の話でしょうから、当面は日下側と筑紫島諸国および宍門との抗争が続き、それに暈(クマ)が関わってくる、という展開になりそうです。死を覚悟した事代主の運命も気になるところで、トメ将軍はまだ金砂国に留まっているようなので、トメ将軍が事代主を救う展開も考えられます。筑紫島諸国と日下側との戦いは作中でも大きな山場になりそうなので、話がどう展開し、どのような結末になるのか、楽しみです。
金砂(カナスナ)国の出雲では、吉備津彦(キビツヒコ)の率いる兵が、事代主(コトシロヌシ)を慕って本殿に多く集まっている民と対峙しており、吉備津彦は配下が民を排除しようとするのを制して、事代主に本殿から出るよう大声で伝えます。さもなければ、本殿の前の民を皆殺しにするよう命じられているが、事代主が投降すれば事代主を斬首することになる、王君(記紀の第7代孝霊天皇と思われるフトニ王)に命だ、それでも大勢の無辜の民が奪われるよりはましだろうから、おとなしく出てくるよう、吉備津彦は事代主に勧告します。すると、事代主が本殿から出てきます。吉備津彦は、民が事代主をおとなしく通すのか、注視しています。
ミマアキは館でニキツミ王に面会し、その場にはミマト将軍と那国のウツヒオ王がいました。ウツヒオ王からトメ将軍の安否を問われたミマアキは、自分は援軍を求めて宍門に来て、トメ将軍たちは金砂国に留まっている、と答え、ウツヒオ王はトメ将軍の無事を知って安堵します。宍門に筑紫島の6ヶ国が集結していることに驚くミマアキに、ミマト将軍はすべて日見子様(ヤノハ)の決断だ、と言います。ヤノハがどこにいるのか尋ねるミマアキに、秘密の作戦を立てて自ら兵を謁見している、とウツヒオ王が答えます。ミマアキが戻ってきたことは、ミマト将軍がヤノハに伝えており、すぐにヤノハが現れます。この戦いの敵の総大将をヤノハに問われたミマアキは、前線の指揮を執るのは吉備津彦で、総大将は日下のフトニ王だろう、と答えます。ヤノハはミマアキに、自分の創った秘密部隊を率いるよう、命じます。何をするのかミマアキに問われたヤノハは、戦を始めて終わらせる役目だ、と答えます。
出雲では、本殿の長い階段を下りて民の目の前にまで来た事代主に、配下のシラヒコは、今なら間に合うので、民に紛れて撤退しよう、と進言します。しかし事代主は、そうなれば自分の民が殺されてしまう、と却下します。それでもシラヒコは、民は事代主の命を守るためには死ねるし、それが本望だ、自分たちが間を稼ぐので逃げるよう、事代主を説得します。自分たちの命はどうなっても構わない、というわけですが、それども事代主は、民に未知を開けるよう命じます。人は必ず死ぬ、というのが大穴遅命(オオアナムチノカミ)少の教えで、自分は神のために死ぬ役だが、民はそうではなく、自分のためにも神のためにも死んではならず、愛する人、つまり妻子や父母や兄妹や隣人のために命を使うよう、事代主は民を説得します。決して神や国のために死んではならない、それは、人が滅びれば国がなくなり、人を護れば国は生きるからで、とにかく生きろ、と事代主は民に呼びかけます。すると民が泣きながら未知を開け、事代主は吉備津彦へと近づいていきます。事代主が民に、生きて、生きる価値の世を創れ、と遺言を伝えるところで、今回は終了です。
今回は、ミマアキとヤノハの再会、および出雲での事代主の決断が描かれました。ヤノハは秘密部隊を結成し、連弩を持たせたのでしょうか、これをどう活用するのか、注目されます。ヤノハは敵の大将を殺さねば平和は訪れない、と考えていますから、吉備津彦ではなくフトニ王の殺害を計画しているように思います。作中設定では、『日本書紀』は基本的に日下の神話と物語に基づいているようなので、最終的には日下側が筑紫島諸国を征服するとも考えられますが、あるいは日下と筑紫島諸国との間で何らかの合意に達して、ヤマト王権につながる巨大な政治勢力が成立する、という話になるのかもしれません。そうだとしても終盤の話でしょうから、当面は日下側と筑紫島諸国および宍門との抗争が続き、それに暈(クマ)が関わってくる、という展開になりそうです。死を覚悟した事代主の運命も気になるところで、トメ将軍はまだ金砂国に留まっているようなので、トメ将軍が事代主を救う展開も考えられます。筑紫島諸国と日下側との戦いは作中でも大きな山場になりそうなので、話がどう展開し、どのような結末になるのか、楽しみです。
この記事へのコメント