ジュラ紀の骨格化石から推測される爬虫類の進化
爬虫類の進化解明の手がかりとなるジュラ紀の骨格化石を報告した研究(Tałanda et al., 2022)が公表されました。有鱗目(トカゲ類とヘビ類)は爬虫類の分類群の一つで、1万を超す現生種が含まれており、その祖先動物は、有鱗類に最も近縁な現生動物であるムカシトカゲ類(Sphenodon)の祖先から2億4000万年以上前に分岐しました。しかし、化石証拠の不足に加えて、有鱗目の系統発生の分子的な説明と形態的な説明との間には深刻な矛盾があり、有鱗類の解剖学的構造の起源や進化的組み立てについて不確実性が生じています。
この研究は、高分解能のシンクロトロン位相コントラスト断層撮影法を用いて記録された、スコットランドのスカイ島で見つかった、1億6700万年前頃となる中期ジュラ紀のステム群有鱗類ベライルシア・グラシリス(Bellairsia gracilis)のほぼ完全な骨格について報告します。ベライルシア・グラシリスには、頭蓋キネシス(多くの現生有鱗類の重要な機能的特徴)に関係する形質や、脳函および肩帯の形質など、クラウン群有鱗類と共通する数々の特徴が見られました。これらの派生形質に加えて、ベライルシア・グラシリスには、翼状骨–鋤骨の接触や、頸部および背側の両方の間椎体の存在など、祖先的なものと推定される特徴も保持されていました。
系統発生学的解析からは、ベライルシア・グラシリスがステム群有鱗類であることを強く裏づける結果が得られ、これは、ベライルシア・グラシリスと現生のヤモリ類に共通して見られるいくつかの特徴が原始形質であることを示唆しており、ヤモリ類が初期に分岐した有鱗類である、という分子系統発生学的な仮説と一致する。この研究は、謎に満ちたオクルデンタビス(Oculudentavis)がステム群有鱗類に類似していることを示す、確信的な裏づけも提示します。今回得られた知見は、懸垂骨や脳函や肩帯の有鱗類様の機能的特徴が、口蓋および脊椎の形質の起源に先行して生じたことを示すとともに、少なくとも1億2000万年前頃となる白亜紀中盤までは、進化したステム群有鱗類が陸上の動物集団の永続的な構成動物であったことを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:ジュラ紀の骨格化石から爬虫類の進化に関する手掛かり
スコットランドの中期ジュラ紀地層から出土した初期爬虫類のほぼ完全な骨格化石について報告するMateusz TałandaとRoger Bensonたちの論文が、Nature に掲載される。この化石は、爬虫類(例えば、トカゲやヘビの現生種)のボディープランの確立につながった数々の解剖学的構造の変化に関する理解を進める可能性がある
有鱗目は、爬虫類の分類群の1つで、約2億4000万年前に生息していた共通祖先から分岐した1万種以上の現生種が含まれている。有鱗目のボディープランの起源と進化に関する我々の理解は、初期の化石記録の空白と、分子的系統解析と形態学的系統解析の仮説に関する論争が続いていることによって制約を受けている。
この論文には、スコットランドのスカイ島で出土した原始有鱗目のBellairsia gracilisの骨格化石について記述されている。この化石は、保存状態が良く、ほぼ完全な骨格が維持されており、約1億6700万年前の中期ジュラ紀のものとされる。Tałandaたちは、高解像度X線画像を用いてB. gracilisの骨格を解析した。その結果、B. gracilisが祖先形質(有鱗目の共通祖先から受け継いだ形質)と派生形質(進化的分岐によって生じた形質)の両方を持っていたことが明らかになり、有鱗目のボディープランの進化を解明するための新たな手掛かりが得られた。この祖先形質は、口蓋と脊椎に見られ、派生形質は、頭部と肩に確認された。
Tałandaたちは、B. gracilisと他の有鱗目化石種の類似性を推定した上で、有鱗目の進化した初期種が、少なくとも中期白亜紀(約1億2000万年前)まで、陸生分類群とともに生息していた可能性が示されていると結論付けている。
古生物学:ステム群トカゲのシンクロトロン断層撮影が明らかにする初期の有鱗類の解剖学的構造
古生物学:ステム群有鱗類のほぼ完全な骨格化石
有鱗類(トカゲ類とヘビ類)の初期の化石記録はまばらにしか存在しない。Bellairsiaはこれまで断片的な化石しか知られていなかったが、今回、スコットランド・スカイ島の中期ジュラ紀層で、新たにBellairsiaのほぼ完全な骨格化石が発見され、シンクロトロン断層撮影による解析の結果、これがステム群有鱗類であることが示された。
参考文献:
Tałanda M. et al.(2022): Synchrotron tomography of a stem lizard elucidates early squamate anatomy. Nature, 611, 7934, 99–104.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05332-6
この研究は、高分解能のシンクロトロン位相コントラスト断層撮影法を用いて記録された、スコットランドのスカイ島で見つかった、1億6700万年前頃となる中期ジュラ紀のステム群有鱗類ベライルシア・グラシリス(Bellairsia gracilis)のほぼ完全な骨格について報告します。ベライルシア・グラシリスには、頭蓋キネシス(多くの現生有鱗類の重要な機能的特徴)に関係する形質や、脳函および肩帯の形質など、クラウン群有鱗類と共通する数々の特徴が見られました。これらの派生形質に加えて、ベライルシア・グラシリスには、翼状骨–鋤骨の接触や、頸部および背側の両方の間椎体の存在など、祖先的なものと推定される特徴も保持されていました。
系統発生学的解析からは、ベライルシア・グラシリスがステム群有鱗類であることを強く裏づける結果が得られ、これは、ベライルシア・グラシリスと現生のヤモリ類に共通して見られるいくつかの特徴が原始形質であることを示唆しており、ヤモリ類が初期に分岐した有鱗類である、という分子系統発生学的な仮説と一致する。この研究は、謎に満ちたオクルデンタビス(Oculudentavis)がステム群有鱗類に類似していることを示す、確信的な裏づけも提示します。今回得られた知見は、懸垂骨や脳函や肩帯の有鱗類様の機能的特徴が、口蓋および脊椎の形質の起源に先行して生じたことを示すとともに、少なくとも1億2000万年前頃となる白亜紀中盤までは、進化したステム群有鱗類が陸上の動物集団の永続的な構成動物であったことを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:ジュラ紀の骨格化石から爬虫類の進化に関する手掛かり
スコットランドの中期ジュラ紀地層から出土した初期爬虫類のほぼ完全な骨格化石について報告するMateusz TałandaとRoger Bensonたちの論文が、Nature に掲載される。この化石は、爬虫類(例えば、トカゲやヘビの現生種)のボディープランの確立につながった数々の解剖学的構造の変化に関する理解を進める可能性がある
有鱗目は、爬虫類の分類群の1つで、約2億4000万年前に生息していた共通祖先から分岐した1万種以上の現生種が含まれている。有鱗目のボディープランの起源と進化に関する我々の理解は、初期の化石記録の空白と、分子的系統解析と形態学的系統解析の仮説に関する論争が続いていることによって制約を受けている。
この論文には、スコットランドのスカイ島で出土した原始有鱗目のBellairsia gracilisの骨格化石について記述されている。この化石は、保存状態が良く、ほぼ完全な骨格が維持されており、約1億6700万年前の中期ジュラ紀のものとされる。Tałandaたちは、高解像度X線画像を用いてB. gracilisの骨格を解析した。その結果、B. gracilisが祖先形質(有鱗目の共通祖先から受け継いだ形質)と派生形質(進化的分岐によって生じた形質)の両方を持っていたことが明らかになり、有鱗目のボディープランの進化を解明するための新たな手掛かりが得られた。この祖先形質は、口蓋と脊椎に見られ、派生形質は、頭部と肩に確認された。
Tałandaたちは、B. gracilisと他の有鱗目化石種の類似性を推定した上で、有鱗目の進化した初期種が、少なくとも中期白亜紀(約1億2000万年前)まで、陸生分類群とともに生息していた可能性が示されていると結論付けている。
古生物学:ステム群トカゲのシンクロトロン断層撮影が明らかにする初期の有鱗類の解剖学的構造
古生物学:ステム群有鱗類のほぼ完全な骨格化石
有鱗類(トカゲ類とヘビ類)の初期の化石記録はまばらにしか存在しない。Bellairsiaはこれまで断片的な化石しか知られていなかったが、今回、スコットランド・スカイ島の中期ジュラ紀層で、新たにBellairsiaのほぼ完全な骨格化石が発見され、シンクロトロン断層撮影による解析の結果、これがステム群有鱗類であることが示された。
参考文献:
Tałanda M. et al.(2022): Synchrotron tomography of a stem lizard elucidates early squamate anatomy. Nature, 611, 7934, 99–104.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05332-6
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