初期恐竜の分布を形成した気候帯
初期恐竜の分布を形成した気候帯に関する研究(Griffin et al., 2022)が報道されました。中生代および新生代の陸上生態系を形成することになる脊椎動物の系統は、三畳紀のパンゲア超大陸各地で出現しました。この超大陸において、汎存性の「災害動物相」は、後期三畳紀(カーニアン期、約2億3500万年前)までに固有性の高い集合に取って代わられました。後期三畳紀のパンゲアには分散に対する地理的障壁がほとんど存在しなかったので、この固有性が確立された速さや様式の検証は困難です。
これに代わるものとして、大陸の境界ではなく古緯度気候帯による分布の制御が提唱されています。恐竜類が分散を開始したのは固有性の高かったこの時代であり、そのため、恐竜類によりこの生物地理的パターンの時期と原動力を調べる機会がもたらされます。恐竜類が最初に古緯度に駆動された固有性の下で分散したとすれば、南アメリカ大陸よびインドで発見されている化石群(最初期の恐竜を含む)と同様のものが、アフリカ中南部のカーニアン階の堆積物中にも存在するはずである、という予測は、標本の数を増やすことで検証が可能です。
本論文は、ジンバブエ共和国で発見された新たなカーニアン期の化石群を報告します。この化石群には、新属新種の竜脚形類ムビレサウルス・ラーティ(Mbiresaurus raathi)のほぼ完全な骨格をはじめとする、アフリカ最古の確実な恐竜類が含まれます。この化石群は、恐竜が発見されている他のカーニアン期の化石群と類似しており、これは、パンゲア南部の高緯度地域には同様の脊椎動物相が広がっていたことを示唆しています。最初の恐竜類の分布は古緯度に関連した気候的障壁と相関しており、パンゲアの他地域への恐竜類の分散はその障壁が緩和されるまで遅延されたと考えられることから、現在まで続く陸上動物相の最初の構成は、気候による制御の影響を受けていた、と示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:初期恐竜の分布を形作った気候帯
最初期の恐竜の生息地は、古代のパンゲア超大陸の極南部の温帯地域に限られていたことが、ジンバブエで新たに出土した三畳紀の恐竜の化石群から示唆された。この知見は、パンゲア超大陸全体における恐竜の起源と初期進化に関する知識が深めている。この研究知見を報告する論文が、Nature に掲載される。
高温気候、強い季節性と高い大気中CO2濃度のために、パンゲア超大陸を東西に横切る強い乾燥気候帯と湿潤気候帯が形成されたことが、先行研究で示唆されている。その当時、動物の分散に影響を与える地理的障壁や大陸境界がほとんどなかったため、これらの気候帯が、パンゲア超大陸における初期恐竜の分布に影響を与えた可能性がある。しかし、サンプリングが不十分で最初期の歴史が明確にならないため、後期三畳紀のパンゲア超大陸全体での恐竜の分布を解明することは、困難な課題となっていた。
Christopher Griffinたちは、新たな恐竜化石群をジンバブエで発見し、年代測定により、後期三畳紀(約2億3000万年前のカルニア期)のものと決定した。この化石群には、アフリカで最古のものとされる恐竜の化石が含まれており、首の長い草食恐竜の一種である竜脚類の新種Mbiresaurus raathi のほぼ完全な骨格も含まれていた。Griffinたちは、このアフリカ中南部の化石群が、南米(ブラジルやアルゼンチンを含む)とインドで発見された恐竜化石群に似ていることを明らかにした。このことは、似通った脊椎動物がこの緯度帯に広く分布していたことを示唆している。これらの恐竜の分布は、気候障壁と相関することが判明し、Griffinたちは、パンゲア超大陸の他地域への恐竜の分散は、こうした気候障壁が緩和するまで先送りされたという考えを示している。
Griffinたちは、陸生恐竜と今日まで生き残っているものが多い他の主要な動物分類群(哺乳類、カメ類、両生類、爬虫類など)の初期構成が、気候による制御の影響を受けていたという見解を示している。
古生物学:アフリカ最古の恐竜から明らかになった恐竜分布の初期の抑制
Cover Story:恐竜の分布:ジンバブエの化石によって明らかになった初期の恐竜種の分布域に対する気候的制約
表紙は、ジンバブエ共和国で新たに発見された、約2億3000万年前の草食恐竜Mbiresaurus raathiの想像図である。この竜脚形類の化石は、アフリカの既知最古の恐竜を含む後期三畳紀の化石群の一部を成す。今回C Griffinたちは、ジンバブエ自然史博物館の古生物学者と共に発見したこの化石群について検討している。彼らは、今回の化石群が、後期三畳紀に同じ緯度帯に位置した南米とインドで発見されている類似の化石群と関連しており、恐竜の分布と気候的な障壁が相関していることが示唆されると指摘している。さらに、これはパンゲア超大陸には東西に走る乾燥気候帯や湿潤気候帯が存在したとする考えと一致しており、こうした初期の恐竜の分布域は、気候的な障壁が緩和されるまでパンゲア南部に限定されていたことも示された。
参考文献:
Griffin CT. et al.(2022): Africa’s oldest dinosaurs reveal early suppression of dinosaur distribution. Nature, 609, 7926, 313–319.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05133-x
これに代わるものとして、大陸の境界ではなく古緯度気候帯による分布の制御が提唱されています。恐竜類が分散を開始したのは固有性の高かったこの時代であり、そのため、恐竜類によりこの生物地理的パターンの時期と原動力を調べる機会がもたらされます。恐竜類が最初に古緯度に駆動された固有性の下で分散したとすれば、南アメリカ大陸よびインドで発見されている化石群(最初期の恐竜を含む)と同様のものが、アフリカ中南部のカーニアン階の堆積物中にも存在するはずである、という予測は、標本の数を増やすことで検証が可能です。
本論文は、ジンバブエ共和国で発見された新たなカーニアン期の化石群を報告します。この化石群には、新属新種の竜脚形類ムビレサウルス・ラーティ(Mbiresaurus raathi)のほぼ完全な骨格をはじめとする、アフリカ最古の確実な恐竜類が含まれます。この化石群は、恐竜が発見されている他のカーニアン期の化石群と類似しており、これは、パンゲア南部の高緯度地域には同様の脊椎動物相が広がっていたことを示唆しています。最初の恐竜類の分布は古緯度に関連した気候的障壁と相関しており、パンゲアの他地域への恐竜類の分散はその障壁が緩和されるまで遅延されたと考えられることから、現在まで続く陸上動物相の最初の構成は、気候による制御の影響を受けていた、と示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:初期恐竜の分布を形作った気候帯
最初期の恐竜の生息地は、古代のパンゲア超大陸の極南部の温帯地域に限られていたことが、ジンバブエで新たに出土した三畳紀の恐竜の化石群から示唆された。この知見は、パンゲア超大陸全体における恐竜の起源と初期進化に関する知識が深めている。この研究知見を報告する論文が、Nature に掲載される。
高温気候、強い季節性と高い大気中CO2濃度のために、パンゲア超大陸を東西に横切る強い乾燥気候帯と湿潤気候帯が形成されたことが、先行研究で示唆されている。その当時、動物の分散に影響を与える地理的障壁や大陸境界がほとんどなかったため、これらの気候帯が、パンゲア超大陸における初期恐竜の分布に影響を与えた可能性がある。しかし、サンプリングが不十分で最初期の歴史が明確にならないため、後期三畳紀のパンゲア超大陸全体での恐竜の分布を解明することは、困難な課題となっていた。
Christopher Griffinたちは、新たな恐竜化石群をジンバブエで発見し、年代測定により、後期三畳紀(約2億3000万年前のカルニア期)のものと決定した。この化石群には、アフリカで最古のものとされる恐竜の化石が含まれており、首の長い草食恐竜の一種である竜脚類の新種Mbiresaurus raathi のほぼ完全な骨格も含まれていた。Griffinたちは、このアフリカ中南部の化石群が、南米(ブラジルやアルゼンチンを含む)とインドで発見された恐竜化石群に似ていることを明らかにした。このことは、似通った脊椎動物がこの緯度帯に広く分布していたことを示唆している。これらの恐竜の分布は、気候障壁と相関することが判明し、Griffinたちは、パンゲア超大陸の他地域への恐竜の分散は、こうした気候障壁が緩和するまで先送りされたという考えを示している。
Griffinたちは、陸生恐竜と今日まで生き残っているものが多い他の主要な動物分類群(哺乳類、カメ類、両生類、爬虫類など)の初期構成が、気候による制御の影響を受けていたという見解を示している。
古生物学:アフリカ最古の恐竜から明らかになった恐竜分布の初期の抑制
Cover Story:恐竜の分布:ジンバブエの化石によって明らかになった初期の恐竜種の分布域に対する気候的制約
表紙は、ジンバブエ共和国で新たに発見された、約2億3000万年前の草食恐竜Mbiresaurus raathiの想像図である。この竜脚形類の化石は、アフリカの既知最古の恐竜を含む後期三畳紀の化石群の一部を成す。今回C Griffinたちは、ジンバブエ自然史博物館の古生物学者と共に発見したこの化石群について検討している。彼らは、今回の化石群が、後期三畳紀に同じ緯度帯に位置した南米とインドで発見されている類似の化石群と関連しており、恐竜の分布と気候的な障壁が相関していることが示唆されると指摘している。さらに、これはパンゲア超大陸には東西に走る乾燥気候帯や湿潤気候帯が存在したとする考えと一致しており、こうした初期の恐竜の分布域は、気候的な障壁が緩和されるまでパンゲア南部に限定されていたことも示された。
参考文献:
Griffin CT. et al.(2022): Africa’s oldest dinosaurs reveal early suppression of dinosaur distribution. Nature, 609, 7926, 313–319.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05133-x
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