初期哺乳類の生活史
初期哺乳類の生活史に関する研究(Funston et al., 2022)が公表されました。白亜紀末の大量絶滅後、有胎盤哺乳類は急速に多様化して重要な生態的地位を占め、体サイズを増大させましたが、こうした大型化は他の獣類には当てはまりませんでした。この時期に出現した大型草食動物の中では、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られています。汎歯目哺乳類は、進化して多様な形態をとるようになりましたが、始新世に絶滅し、後代の哺乳類との関係は分かっていません。特別に長期化した胎仔の妊娠期間が、有胎盤哺乳類の成功と大型化の要因となった可能性はありますが、初期の有胎盤類の生殖様式はまだ解明されていません。
本論文は、古組織学および地球化学を用いて、真に大きな体サイズを獲得した最初の哺乳類を含むクレード(単系統群)である汎歯類の6200万年前頃の動物について、有胎盤類の生活史の最古の記録を提示します。本論文は、歯の微量元素マッピングの応用範囲を6000万年拡大して出生および離乳の化学マーカーを特定し、それらを歯列の日単位の成長記録に対応させました。パントランブダ・バスモドン(Pantolambda bathmodon)は、妊娠期間が短く(約7ヶ月)、歯の発生が迅速で、授乳期間が短かった(約30~75日間)ことから、非有胎盤哺乳類や中生代の既知の祖先動物とは異なり、ひじょうに早成性だった、と示されました。このような生活史を示す現生哺乳類は存在しません。
これらの結果は、パントランブダ・バスモドンが有胎盤類様の生殖を行ない、体サイズの割に速いペースで生活していたことを実証しています。パントランブダ・バスモドンが有胎盤類の近縁動物を反映していると仮定すると、この知見は、充分に発達した早成性の幼体を産む能力が有胎盤類進化の初期に確立され、新生仔の大型化が初期の有胎盤類の急速な大型化を生じる機構だった可能性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:初期の哺乳類は生活のペースが早く、寿命が短かった
恐竜時代が終わって登場した最初期の大型哺乳類のPantolambda bathmodonは、同程度の体サイズの現生哺乳類と比べて、2倍の速さで成長し、寿命が短かったことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究は、この先史時代の動物種のユニークな生活史に明らかにし、恐竜が絶滅した後、哺乳類がどのようにして優占するようになったのかを説明する上で役立つ。
哺乳類は、恐竜の絶滅に対応して、多様化し、体サイズが大きくなった。この時期に出現した大型草食動物の中で、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られている。汎歯目哺乳類は、進化して多様な形態をとるようになったが、始新世に絶滅し、後代の哺乳類との関係は分かっていない。今回の研究で、Gregory Funston、Steve Brusatteたちは、さまざまな方法(歯の微量元素マッピングを含む)を用いて、6200万年前の汎歯目哺乳類であるPantolambda bathmodonの生活史を解明した。その妊娠期間は約7か月と推定され、同程度の体サイズの現生哺乳類の妊娠期間と一致しているが、P. bathmodonの方が、成長が早く、寿命が短かったことが判明した。幼若体は、かなり発達した状態で生まれ、1~2か月以内に離乳し、10歳になる前に死んでいた。
このような生活史を示す現生哺乳類はいない。P. bathmodonの生殖は、有胎盤哺乳類に似ているが、大きな体サイズにしては、異常に早いペースで生きていた。今回の知見は、長い妊娠期間が6200万年前にすでに存在しており、新生仔の体サイズが大きかったことが、初期の有胎盤哺乳類で観察された急速な成長の一因だったという可能性を示唆している。
進化学:有胎盤哺乳類の生活史の起源
進化学:駆け足で生きた初期の有胎盤類
汎歯類は、恐竜類の後に進化した最古の大型哺乳類の一群である。今回、汎歯類の妊娠期間(約7か月)は同サイズの哺乳類(約42 kg)のものと変わらないが、その生活のペースは、同サイズの現生哺乳類の2倍速かったことが示された。
参考文献:
Funston GF. et al.(2022): The origin of placental mammal life histories. Nature, 610, 7930, 107–111.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05150-w
本論文は、古組織学および地球化学を用いて、真に大きな体サイズを獲得した最初の哺乳類を含むクレード(単系統群)である汎歯類の6200万年前頃の動物について、有胎盤類の生活史の最古の記録を提示します。本論文は、歯の微量元素マッピングの応用範囲を6000万年拡大して出生および離乳の化学マーカーを特定し、それらを歯列の日単位の成長記録に対応させました。パントランブダ・バスモドン(Pantolambda bathmodon)は、妊娠期間が短く(約7ヶ月)、歯の発生が迅速で、授乳期間が短かった(約30~75日間)ことから、非有胎盤哺乳類や中生代の既知の祖先動物とは異なり、ひじょうに早成性だった、と示されました。このような生活史を示す現生哺乳類は存在しません。
これらの結果は、パントランブダ・バスモドンが有胎盤類様の生殖を行ない、体サイズの割に速いペースで生活していたことを実証しています。パントランブダ・バスモドンが有胎盤類の近縁動物を反映していると仮定すると、この知見は、充分に発達した早成性の幼体を産む能力が有胎盤類進化の初期に確立され、新生仔の大型化が初期の有胎盤類の急速な大型化を生じる機構だった可能性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:初期の哺乳類は生活のペースが早く、寿命が短かった
恐竜時代が終わって登場した最初期の大型哺乳類のPantolambda bathmodonは、同程度の体サイズの現生哺乳類と比べて、2倍の速さで成長し、寿命が短かったことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究は、この先史時代の動物種のユニークな生活史に明らかにし、恐竜が絶滅した後、哺乳類がどのようにして優占するようになったのかを説明する上で役立つ。
哺乳類は、恐竜の絶滅に対応して、多様化し、体サイズが大きくなった。この時期に出現した大型草食動物の中で、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られている。汎歯目哺乳類は、進化して多様な形態をとるようになったが、始新世に絶滅し、後代の哺乳類との関係は分かっていない。今回の研究で、Gregory Funston、Steve Brusatteたちは、さまざまな方法(歯の微量元素マッピングを含む)を用いて、6200万年前の汎歯目哺乳類であるPantolambda bathmodonの生活史を解明した。その妊娠期間は約7か月と推定され、同程度の体サイズの現生哺乳類の妊娠期間と一致しているが、P. bathmodonの方が、成長が早く、寿命が短かったことが判明した。幼若体は、かなり発達した状態で生まれ、1~2か月以内に離乳し、10歳になる前に死んでいた。
このような生活史を示す現生哺乳類はいない。P. bathmodonの生殖は、有胎盤哺乳類に似ているが、大きな体サイズにしては、異常に早いペースで生きていた。今回の知見は、長い妊娠期間が6200万年前にすでに存在しており、新生仔の体サイズが大きかったことが、初期の有胎盤哺乳類で観察された急速な成長の一因だったという可能性を示唆している。
進化学:有胎盤哺乳類の生活史の起源
進化学:駆け足で生きた初期の有胎盤類
汎歯類は、恐竜類の後に進化した最古の大型哺乳類の一群である。今回、汎歯類の妊娠期間(約7か月)は同サイズの哺乳類(約42 kg)のものと変わらないが、その生活のペースは、同サイズの現生哺乳類の2倍速かったことが示された。
参考文献:
Funston GF. et al.(2022): The origin of placental mammal life histories. Nature, 610, 7930, 107–111.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05150-w
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