60歳まで減速しないメンタルスピード

 メンタルスピード(心的処理の速度)が60歳まで減速しないことを報告した研究(Krause et al., 2022)が公表されました。加齢につれて、環境中の変化(刺激)に反応する時間は長くなるのが一般的です。こうした反応時間は20歳頃から遅くなっていき、加齢につれて徐々に長くなっていく。この研究は、認知課題に対する反応時間を測定するオンライン実験に参加した100万人以上から得られたデータを解析しました。参加者は、画面上に一瞬表示される単語や画像の選択を、それに反応して正しいキーを押すことで分類するよう、求められました。

 その結果、反応時間は20歳以降に遅くなり始めましたが、それは判断に対する慎重さの高まりや、キーを押すまでの時間といった判断に関与しない過程の遅れに起因する可能性がある、と明らかになりました。一方で、正解に対する何らかの判断を行なう心的過程は60歳まで減速し始めず、60歳以降にじょじょに遅くなっていきました。この研究は、メンタルスピードは加齢につれて遅くなっていくと広く信じられているものの、今回の結果は、人生の大部分において、また一般に職業生活を送る期間において、その仮説が当てはまらない可能性かもしれない、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


老化:メンタルスピードは60歳まで減速しない

 心的処理の速度(メンタルスピード)は60歳まで減速し始めないことが、100万人以上の参加者の解析から明らかとなった。この知見を報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。今回の結果は、メンタルスピードのピークは20歳であるというこれまでの仮説に異議を唱えるものである。

 年を重ねるにつれて、環境中の変化(刺激)に反応する時間は長くなるのが一般的である。こうした反応時間は20歳頃から遅くなっていき、年齢が上がるにつれて徐々に長くなっていく。

 今回、Mischa von Krauseたちは、認知課題に対する反応時間を測定するオンライン実験に参加した100万人以上から得られたデータを解析した。参加者は、画面上に一瞬表示される単語や画像の選択を、それに反応して正しいキーを押すことで分類するように求められた。その結果、反応時間は20歳以降に遅くはなり始めはしたが、それは判断に対する慎重さの高まりや、キーを押すまでの時間といった判断に関与しない過程の遅れに起因する可能性があることが判明した。一方で、正解に対する何らかの判断を行う心的過程は、60歳まで減速し始めることはなく、60歳以降に徐々に遅くなっていった。

 von Krauseたちは、メンタルスピードは年を重ねるにつれて遅くなっていくと広く信じられているが、今回の結果は、人生の大部分において、また一般に職業生活を送る期間において、その仮説が当てはまらない可能性があることを示していると結論付けている。



参考文献:
Krause M, Radev ST, and Voss A.(2022): Mental speed is high until age 60 as revealed by analysis of over a million participants. Nature Human Behaviour, 6, 5, 700–708.
https://doi.org/10.1038/s41562-021-01282-7

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