社会的に学習されているかもしれない野生チンパンジーの道具使用
野生チンパンジーの道具使用の社会的学習の可能性を報告した研究(Koops et al., 2022)が公表されました。ヒトは道具使用などの技能を、相互観察により学習します。ヒトの文化は、こうした社会的学習を通して次第に複雑化してきました。しかし、こうした累積的な文化がヒトに特有のものかどうかについては、議論が続いていますい。飼育下の非ヒト類人猿を対象とした過去の実験では、教えられなくても道具を使用し始めることとが分かっていますが、飼育下の非ヒト類人猿はヒトの道具使用を観察しており、そこからこうした行動を学習している可能性があります。
この研究は、長年にわたる野外実験において、ギニアのセリンバラ(Seringbara)村の野生チンパンジーの群れに対して、近隣のチンパンジーの群れが木の実を割るのに使っているものと全く同じ道具を与えました。この研究は、チンパンジーに木の実も与え、その後の様子をカメラトラップにより撮影しました。その結果、チンパンジーたちは当初こそ道具に興味を示したものの、それを使って木の実を割ることはせず、数ヶ月のうちに次第に興味を失っていきました。しかし、6kmしか離れていないギニアのボッソウ(Bossou)村の別のチンパンジーの群れは、道具を使って木の実を割ります。
これらの結果は、チンパンジーの文化の性質に関してさらなる知見をもたらします。チンパンジーの木の実割りは、特定の群れだけが実践する文化的な行動と考えられます。この実験は、こうしたチンパンジー文化の一部が、たとえそれらが道具を与えられたとしても、他のチンパンジーによって容易に獲得されるわけではないことを示唆しています。この研究は、チンパンジーの文化はヒトの文化とひじょうに似ており、社会集団内における学習を通じて発達する可能性がある、と考えています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
人類学:野生チンパンジーの道具の使用は、社会的に学習されている可能性がある
長期におよぶ野外研究から、野生チンパンジーのある集団は、近隣の別の群れが道具を使って木の実を割っている場合でも、木の実を割るための石を与えられても木の実を割らないことを明らかにした論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。この結果は、野生チンパンジーが道具の使用を容易に習得できるわけではないことを示唆しており、またそうした行動が社会的に学習されなければならないことを示唆している可能性がある。
ヒトは、道具の使用などの技能を、互いを観察することで学習する。ヒトの文化は、このような社会的学習を通して次第に複雑化してきた。しかし、こうした累積的な文化がヒトに特有のものかどうかについては議論が続いている。飼育下の類人猿を対象とした過去の実験では、それらが教えられなくても道具を使用し始めることが分かっているが、飼育下の類人猿は、ヒトが道具を使用するところを観察しており、そこからこうした行動を学習している可能性がある。
今回、Kathelijne Koopsたちは、長年にわたる野外実験において、ギニアのセリンバラ村の野生チンパンジーの群れに対し、近隣のチンパンジーの群れが木の実を割るのに使っているのと全く同じ道具を与えた。Koopsたちは、チンパンジーに木の実も与え、その後の様子をカメラトラップを用いて撮影した。その結果、チンパンジーたちは当初、道具に興味を示したものの、それを使って木の実を割ることはせず、数か月のうちに次第に興味を失っていった。しかし、6キロメートルしか離れていないギニアのボッソウ村の別のチンパンジーの群れは、道具を使って木の実を割る。
以上の結果は、チンパンジーの文化の性質に関してさらなる知見をもたらす。チンパンジーの木の実割りは、特定の群れだけが実践する文化的な行動であると考えられる。今回の実験は、こうしたチンパンジー文化の一部は、他のチンパンジーによって、たとえそれらが道具を与えられたとしても、容易に獲得されるわけではないことを示唆している。Koopsたちは、チンパンジーの文化は、ヒトの文化と非常に似ており、社会集団内における学習を通じて発達する可能性があると考えている。
参考文献:
Koops K. et al.(2022): Field experiments find no evidence that chimpanzee nut cracking can be independently innovated. Nature Ecology & Evolution, 6, 4, 487–494.
https://doi.org/10.1038/s41562-021-01272-9
この研究は、長年にわたる野外実験において、ギニアのセリンバラ(Seringbara)村の野生チンパンジーの群れに対して、近隣のチンパンジーの群れが木の実を割るのに使っているものと全く同じ道具を与えました。この研究は、チンパンジーに木の実も与え、その後の様子をカメラトラップにより撮影しました。その結果、チンパンジーたちは当初こそ道具に興味を示したものの、それを使って木の実を割ることはせず、数ヶ月のうちに次第に興味を失っていきました。しかし、6kmしか離れていないギニアのボッソウ(Bossou)村の別のチンパンジーの群れは、道具を使って木の実を割ります。
これらの結果は、チンパンジーの文化の性質に関してさらなる知見をもたらします。チンパンジーの木の実割りは、特定の群れだけが実践する文化的な行動と考えられます。この実験は、こうしたチンパンジー文化の一部が、たとえそれらが道具を与えられたとしても、他のチンパンジーによって容易に獲得されるわけではないことを示唆しています。この研究は、チンパンジーの文化はヒトの文化とひじょうに似ており、社会集団内における学習を通じて発達する可能性がある、と考えています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
人類学:野生チンパンジーの道具の使用は、社会的に学習されている可能性がある
長期におよぶ野外研究から、野生チンパンジーのある集団は、近隣の別の群れが道具を使って木の実を割っている場合でも、木の実を割るための石を与えられても木の実を割らないことを明らかにした論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。この結果は、野生チンパンジーが道具の使用を容易に習得できるわけではないことを示唆しており、またそうした行動が社会的に学習されなければならないことを示唆している可能性がある。
ヒトは、道具の使用などの技能を、互いを観察することで学習する。ヒトの文化は、このような社会的学習を通して次第に複雑化してきた。しかし、こうした累積的な文化がヒトに特有のものかどうかについては議論が続いている。飼育下の類人猿を対象とした過去の実験では、それらが教えられなくても道具を使用し始めることが分かっているが、飼育下の類人猿は、ヒトが道具を使用するところを観察しており、そこからこうした行動を学習している可能性がある。
今回、Kathelijne Koopsたちは、長年にわたる野外実験において、ギニアのセリンバラ村の野生チンパンジーの群れに対し、近隣のチンパンジーの群れが木の実を割るのに使っているのと全く同じ道具を与えた。Koopsたちは、チンパンジーに木の実も与え、その後の様子をカメラトラップを用いて撮影した。その結果、チンパンジーたちは当初、道具に興味を示したものの、それを使って木の実を割ることはせず、数か月のうちに次第に興味を失っていった。しかし、6キロメートルしか離れていないギニアのボッソウ村の別のチンパンジーの群れは、道具を使って木の実を割る。
以上の結果は、チンパンジーの文化の性質に関してさらなる知見をもたらす。チンパンジーの木の実割りは、特定の群れだけが実践する文化的な行動であると考えられる。今回の実験は、こうしたチンパンジー文化の一部は、他のチンパンジーによって、たとえそれらが道具を与えられたとしても、容易に獲得されるわけではないことを示唆している。Koopsたちは、チンパンジーの文化は、ヒトの文化と非常に似ており、社会集団内における学習を通じて発達する可能性があると考えている。
参考文献:
Koops K. et al.(2022): Field experiments find no evidence that chimpanzee nut cracking can be independently innovated. Nature Ecology & Evolution, 6, 4, 487–494.
https://doi.org/10.1038/s41562-021-01272-9
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