45種の言語に対する神経応答パターンの類似性

 45種の言語に対する神経応答パターンの類似性に関する研究(Malik-Moraleda et al., 2022)が公表されました。現在、全世界で7000近くの言語が使われていますが、それよりもはるかに少ない数の言語に関する研究に基づいて、脳内で言語がどのように学習され、処理されるのか、理解されつつあります。この研究は、言語研究における包括性を高めるため、日琉語族を含む12語族の45言語に対する脳の応答に類似点があるのかどうか、調べました。

 この研究では、それぞれの言語の母語話者1~2人に、母語に翻訳された『不思議の国のアリス』の一節を聴かせて、脳内応答を調べました。全ての母語の場合に、脳の左前頭皮質と側頭皮質と頭頂皮質の広い領域が活性化しました。被験者にさまざまな文章を母語で聴かせて測定したところ、この言語関連ネットワークの応答は、右半球よりも左半球で強く、相関度も高い、と明らかになりました。また、この言語関連ネットワークは、空間作業記憶課題や計算課題を実行する時よりも母語を聴く時に応答性が高く、この共通の脳内ネットワークで言語処理が選択的に行なわれている、と示唆されました。

 この研究は、こうした一連の知見が、さまざまな言語の神経処理をさらに詳しく調べるための第一歩であり、今後は、それぞれの言語の母語話者を増やした被験者群が必要になる、と結論づけています。こうした広範な言語に対する神経応答パターンの類似性は、現生人類(Homo sapiens)の起源にまでさかのぼる根深いものであることを意味しており、あるいはネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との共通祖先にまでさかのぼる可能性も考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


神経科学:45種の言語に対する神経応答のパターンが類似している

 言語によって誘発される脳内の神経活動のパターンが、45種の言語で類似していることが明らかになった。この新知見を報告する論文が、Nature Neuroscience に掲載される。

 現在、全世界で7000近くの言語が使われているが、我々は、それよりもはるかに少ない数の言語に関する研究に基づいて、脳内で言語がどのように学習され、処理されるかを理解している。

 今回、Saima Malik-Moraleda、Evelina Fedorenkoたちは、言語研究におけるインクルーシビティーを高めるため、12語族(日琉語族を含む)の45言語に対する脳の応答に類似点があるかどうかを調べた。今回の研究では、それぞれの言語のネイティブスピーカー(1~2人)に母国語に翻訳された『不思議の国のアリス』の一節を聴かせて、脳内応答を調べた。全ての母国語の場合に、脳の左前頭皮質、側頭皮質、頭頂皮質の広い領域が活性化した。被験者にさまざまな文章を母国語で聴かせて測定したところ、この言語関連ネットワークの応答は、右半球よりも左半球で強く、相関度も高かった。また、この言語関連ネットワークは、空間作業記憶課題や計算課題を実行する時よりも母国語を聴く時に応答性が高く、この共通の脳内ネットワークで言語処理が選択的に行われていることが示唆された。

 Malik-Moraledaたちは、この知見が、さまざまな言語の神経処理をさらに詳しく調べるための第一歩であり、今後は、それぞれの言語のネイティブスピーカーを増やした被験者群が必要になると結論付けている。



参考文献:
Malik-Moraleda S. et al.(2022): An investigation across 45 languages and 12 language families reveals a universal language network. Nature Neuroscience, 25, 8, 1014–1019.
https://doi.org/10.1038/s41593-022-01114-5

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