ホオジロザメとの競合によるメガロドンの絶滅

 メガロドン(Otodus megalodon)の絶滅の一因はホホジロザメ(Carcharodon carcharias)との競合かもしれない、と指摘した研究(McCormack et al., 2022)が公表されました。動物の栄養水準は生態系内での位置を示しており、食餌は動物の生活様式や生態を理解する上で重要な役割を果たします。動物の歯が形成されるさいに、亜鉛が歯のエナメル質に取り込まれます。この亜鉛の値は、動物の食餌を解明し、その動物の生態系における栄養水準を推測するための代用指標として使うことができます。これまでに存在した最大級の肉食動物であるメガロドン(ムカシオオホホジロザメ)は、巨大な歯を持つサメで、その絶滅の原因が議論されています。

 この研究は、亜鉛同位体を用いて化石生物の食餌を推測する方法により、メガロドンの絶滅の問題に取り組んでいます。この研究では、(野生のサメと水族館で飼育されているサメを含む)サメの現生20種と(メガドロンを含む)化石13種の歯に含まれる亜鉛同位体の値を集めたデータベースが構築されました。その結果、歯に含まれる亜鉛同位体の値は地質年代を超えて安定しており、それぞれのサメ種の栄養水準も示している、と分かりました。

 この研究は、メガロドンとホオジロザメの亜鉛同位体の値を比較し、この2種のサメが前期鮮新世に同じ地域で生息しており、栄養段階が重複し、同じ食物資源(クジラ目の動物を含む海洋哺乳類)を巡って競合していた可能性がある、と明らかにしました。この研究は、メガロドンの絶滅には気候の変化や環境の変化など複数の原因が考えられると強調する一方で、ホオジロザメとの競合が一因となった可能性も示しています。この研究は、亜鉛同位体がサメ以外の海洋脊椎動物の化石種の食餌や生態や進化を調べるための手法としても有望と結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:メガロドンが絶滅した原因の1つはホオジロザメとの競合かもしれない

 これまでに存在した最大級の肉食動物であるメガロドン(Otodus megalodon、和名ムカシオオホホジロザメ)が絶滅した原因の1つは、ホホジロザメとの食物資源の奪い合いであった可能性を示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、サメの現生種と絶滅種の食餌に関する知識を深める手掛かりになる。

 動物の栄養レベルは、生態系内での位置を示しており、食餌は、動物の生活様式や生態を理解する上で重要な役割を果たす。動物の歯が形成されるとき、亜鉛が歯のエナメル質に取り込まれる。この亜鉛の値は、動物の食餌を解明し、その動物の生態系における栄養レベルを推測するための代用指標として使用できる。メガロドンは、巨大な歯を持つサメで、その絶滅の原因が議論されている。

 今回、Jeremy McCormackたちは、亜鉛同位体を用いて化石生物の食餌を推測する方法を紹介している。今回の研究では、サメの現生種20種(野生のサメと水族館で飼育されているサメを含む)と化石種13種(メガドロンを含む)の歯に含まれる亜鉛同位体の値を集めたデータベースが構築された。その結果、歯に含まれる亜鉛同位体の値は、地質年代を超えて安定しており、それぞれのサメ種の栄養レベルも示していることが分かった。McCormackたちは、メガロドンとホオジロザメの亜鉛同位体の値を比較し、この2種のサメが、前期鮮新世に同じ地域で生息し、栄養段階が重複し、同じ食物資源(クジラ目の動物を含む海洋哺乳類)を巡って競合していた可能性のあることを明らかにした。McCormackたちは、メガロドンの絶滅には気候の変化や環境の変化など複数の原因が考えられると強調する一方で、ホオジロザメとの競合が一因となった可能性も示している。

 McCormackたちは、亜鉛同位体がサメ以外の海洋脊椎動物の化石種の食餌、生態、進化を調べるためのツールとしても有望だと結論付けている。



参考文献:
McCormack J. et al.(2022): Trophic position of Otodus megalodon and great white sharks through time revealed by zinc isotopes. Nature Communications, 13, 2980.
https://doi.org/10.1038/s41467-022-30528-9

この記事へのコメント