動物と菌類の起源

 動物と菌類の起源に関する研究(Ocaña-Pallarès et al., 2022)が公表されました。動物と菌類の形態は根本的に異なりますが、両者はオピストコンタ(Opisthokonta)という同じ真核生物の巨大系統群内で進化し、菌類は植物よりも動物の方と近縁です。この研究は、オピストコンタの系統発生できわめて重要な位置を占める4例の新規ゲノムを含むデータセットの使用により、オピストコンタの分岐以降の、後生動物と菌類の出現に伴う遺伝的変化の軌跡を再構築しました。

 その結果、動物がその多細胞性に機能的に重要な遺伝子の蓄積後に初めて出現したことと、この傾向は後生動物以前の祖先で始まり、後に後生動物の基部で加速したこととが明らかになりました。これに対して、菌類以前の祖先は、大半の機能カテゴリーの純減を経ており、こうした分類には後生動物への進化の道筋で獲得されたものも含まれていました。幅広い機能水準において、菌類ゲノムは後生動物の遺伝子一覧と比べて、含まれる代謝遺伝子の比率が高く、オピストコンタの最終共通祖先からの乖離はより小さいことも明らかになりました。

 後生動物と菌類では、遺伝子獲得機構にも相違が見られました。後生動物では遺伝子融合がより多く見られる一方で、菌類および原生生物では遺伝子獲得の大部分が水平伝播として検出されました。これは、後生動物では生殖細胞系列の隔離のために伝播の重要性が低い、と見る長年の考え方と一致します。まとめると、この研究は、動物と菌類が、それぞれの起源をさかのぼる、2つの対照的な遺伝的変化の軌跡の下で進化した、と示しています。したがって、明確に分化した2つのゲノム環境の漸進的確立が、後生動物と菌類が出現するための舞台を整えた、と考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:動物と菌類の起源をさかのぼるゲノムの異なる軌跡

進化学:動物と菌類は出現前から違う道を歩んでいた

 菌類は、植物よりも動物に近縁である。ではなぜ、動物と菌類の見た目はこれほどまでに違うのか。今回、動物と菌類の遺伝的特徴をそれらの起源より前にさかのぼって調べた結果、動物は多細胞性の選択、菌類は代謝への特化という異なる進化の軌跡をたどったことが明らかになった。



参考文献:
Ocaña-Pallarès E. et al.(2022): Divergent genomic trajectories predate the origin of animals and fungi. Nature, 609, 7928, 747–753.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05110-4

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