パレオスポンディルスと四肢類祖先との類縁性

 パレオスポンディルスと四肢類祖先との類縁性に関する研究(Hirasawa et al., 2022)が公表されました。中期デボン紀のパレオスポンディルス(Palaeospondylus gunni)はきわめて謎の多い化石脊椎動物の一種で、1890年にスコットランドで発見されて以来、その系統的位置は不明なままでした。この化石には奇妙な形態的特徴の組み合わせが見られ、これが既知の脊椎動物形態型の多様性との比較を困難にしてきました。この研究は、シンクロトロン放射光X線マイクロCTを用いて、パレオスポンディルスが肉鰭類であり、ステム群四肢類であった可能性が極めて高いことを示します。

 パレオスポンディルスの骨格は内骨格要素のみで構成されており、肥大軟骨細胞小腔や類骨やわずかな軟骨膜骨が発達していました。歯および皮骨が全く存在しないにもかかわらず、パレオスポンディルスの神経頭蓋はステム群四肢類のエウステノプテロン(Eusthenopteron)およびパンデリクティス(Panderichthys)のものに類似しており、系統解析の結果、パレオスポンディルスはこれら2者の間に位置づけられました。軟骨性の骨格や、有対付属肢の欠如など、パレオスポンディルスの独特な特徴は、クラウン群四肢類の「四肢魚(fishapod)」と呼ばれる絶滅肉鰭類ティクタアリク(Tiktaalik)に似た動物幼生に認められることから、四肢類の基部における予想外の異時性進化が浮き彫りになりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:パレオスポンディルスの形態は四肢類祖先との類縁性を示す

古生物学:パレオスポンディルスの正体が明らかに

 中期デボン紀の魚に似た奇妙な化石脊椎動物パレオスポンディルス(Palaeospondylus gunni)は、100年以上前に最初に報告されて以来、あらゆる分類の試みをはねつけてきた。今回、最先端の画像化技術を用いた新たな試みによって、この奇妙な動物が、「四肢魚(fishapod)」と呼ばれる絶滅肉鰭類ティクタアリク(Tiktaalik)に似た動物の幼生であった可能性が示唆された。



参考文献:
Hirasawa T. et al.(2022): Morphology of Palaeospondylus shows affinity to tetrapod ancestors. Nature, 606, 7912, 109–112.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04781-3

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