『卑弥呼』第88話「勝利を得る者」
『ビッグコミックオリジナル』2022年6月20日号掲載分の感想です。前回は、菟狭(ウサ、現在の大分県宇佐市でしょうか)の近くに、青銅でも鉄でもない強力な秘密の武器を持っている漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)の村がある、とヤノハが那(ナ)と伊都(イト)と末盧(マツロ)と都萬(トマ)の王に語るところで終了しました。今回は、日見子(ヒミコ)であるヤノハが山社国(ヤマトノクニ)の楼観に那のウツヒオ王と都萬のタケツヌ王を呼び出した場面から始まります。ヤノハは2人の王から、穂波(ホミ)のヲカ王の人となりを聞こうとします。山社と同盟を結んでいる諸国の王のうち、ヲカ王と会ったことがあるのはウツヒオ王とタケツヌ王だけでした。ヲカ王の印象について、ウツヒオ王は戦好きの危険な人物と答え、タケツヌ王は猜疑心が強いと付け加えます。するとヤノハは、ウツヒオ王とタケツヌ王の2人だけで穂波を訪れ、ヲカ王に首を差し出して頂きたい、それ以外、我々の真意を伝える術はない、と言います。
吉備(キビ)国では、日下(ヒノモト)国の家臣となった吉備津彦(キビツヒコ)に捕らわれた事代主(コトシロヌシ)の一行が、トメ将軍とミマアキに救出されましたが、トメ将軍とミマアキは助けたのが出雲の顕人神(アラヒトガミ)である事代主とは知らず、事代主の配下のシラヒコに教えられます。事代主はミマアキに、鬼国(キノクニ)撃退のため日見子殿に援軍を要請したがどうなったのか、と尋ねます。しかし、日下の偵察に行っていたミマアキは知らず、同盟国ではない国に日見子様が派兵するとは思えない、とトメ将軍は言います。すると事代主は、日見子殿は自分と思考や言葉がそっくりの魂の双子なので、挙兵してくれると信じていた、と言います。トメ将軍とミマアキは事代主を金砂(カナスナ)国まで送ろうとしますが、シラヒコは、事代主がこの苦境に陥ったのは金砂国のミクマ王の裏切りのためなので、しばらくは宍門(アナト)のニキツミ王に身を寄せるのがよい、と進言します。しかし、事代主は金砂国に帰ってミクマ王と決着をつけねばならない、と言います。事代主は、あえて危険を冒す者が勝利を得る、と言い、トメ将軍とミマアキは感心します。
ヤノハがウツヒオ王とタケツヌ王に会った数日後、山社では、ヲカ王の返事を待たずに穂波にある漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)の邑に旅立とうするヤノハの身を、いささか無謀ではないか、とイクメが案じていました。ヤノハは、鉄(カネ)の武器に勝てる術を一日も早く漢人の邑で入手しなければ勝利の道はない、と考えていました。イクメはその邑のことを調べており、倭国に機織りを伝えた人々で、倭国に来た理由は不老不死の薬を探すためだ、と言うと、ヤノハは興味を示します。
その数日後、ウツヒオ王とタケツヌ王は穂波でヲカ王と会い、ヲカ王から穂波領内の漢人の邑を訪ねることと、山社・那・都萬・伊都・末盧の合計500人の兵が穂波に入ることについて、了解を得ました。ヲカ王は、供だけで他国の王を訪ねる豪胆さに感心したと言い、穂波の兵100人も加えてもらいたい、と言います。鬼国の動きは喫緊の課題で、その背後には吉備がおり、黒幕は日下だろうから、その勢いを止めねば、最初に戦に巻き込まれるのは穂波になる、というわけです。しかしヲカ王は、鬼国の武器は鉄なので、勝算は五分ではないか、と懸念します。するとウツヒオ王は、日見子様は鉄に勝つには穂波の国境にある漢人の邑の知恵が必要と考えている、と答えます。その邑のことを教えてほしい、とタケツヌ王に頼まれたヲカ王は、あの邑には手を出せない、和議を結んだというより、互いに結界を張ったと言うべきだ、あの邑に戦を仕掛ければ必ず死ぬ、と説明します。ヲカ王は古老から聞いた話をウツヒオ王とタケツヌ王に語ります。400年前、不老不死の薬を求めて最初の漢人が倭国に到来しました。その名は徐福で、徐福は宍門国の近くに浮かぶ島で不死の薬をついに見つけた、と伝わっています。ただの言い伝えだろう、と懐疑的なウツヒオ王とタケツヌ王に対して、自分の祖父も曾祖父もそう考えて漢人の邑に戦いを挑んだが散々な結果に終わった、その邑の者は死なないからだ、とヲカ王は語ります。日見子様がその邑に行こうとしているがどう思うか、とウツヒオ王に問われたヲカ王は、止めねばならない、と答えます。止めなかった場合はどうなるのか、とウツヒオ王に問われたヲカ王は、その邑の者は結界を侵した者を問答無用に殺す、と答えます。ウツヒオ王は出兵の細かい取り決めをとタケツヌ王に任せ、自身は山社に戻って日見子(ヤノハ)を止めようとします。
山社の国境では、ヤノハが輿に乗って漢人の邑へと向かっていました。イクメは、もはやヤノハを止められないと理解しつつも、ウツヒオ王とタケツヌ王の返事を待って出立すべきだったのではないか、と進言します。ウツヒオ王とタケツヌ王ならばもうヲカ王を説得し終わった頃だろう、と言うヤノハに対して、漢人の邑は我々が思う以上に危険かもしれない、とイクメは言います。それでもヤノハは留まらず、あえて危険を冒す者が勝利を得ると常々思っていた、とイクメに語るところで今回は終了です。
今回は、謎めいた漢人の邑を巡る話が中心となりました。穂波のヲカ王に首を差し出すよう、ヤノハはウツヒオ王とタケツヌ王に命じましたが、じっさいはその後に真意を明かし、ウツヒオ王とタケツヌ王は納得して穂波に向かったと思います。その真意も重要だったと思われるので、今後明かされるのでしょう。穂波の国境にある謎めいた漢人の邑については、徐福伝説との関連が明かされました。この漢人の邑がじっさいに不老不死の薬を見つけたという設定ではなく、何か重大な秘密があるのでしょうが、穂波の軍をたびたび撃退した理由がどう説明されるのか、注目されます。この漢人の邑にはヤノハとは旧知の何(ハウ)という漢人がおり、それがヤノハを助けることになるかもしれません。暈(クマ)国の志能備(シノビ)に捕らわれたアカメの運命や、トメ将軍とミマアキの一行が脱出した後の日下の動向も気になりますが、まずは穂波の国境にある漢人の邑をめぐる謎がどう語られるのか、注目されます。
吉備(キビ)国では、日下(ヒノモト)国の家臣となった吉備津彦(キビツヒコ)に捕らわれた事代主(コトシロヌシ)の一行が、トメ将軍とミマアキに救出されましたが、トメ将軍とミマアキは助けたのが出雲の顕人神(アラヒトガミ)である事代主とは知らず、事代主の配下のシラヒコに教えられます。事代主はミマアキに、鬼国(キノクニ)撃退のため日見子殿に援軍を要請したがどうなったのか、と尋ねます。しかし、日下の偵察に行っていたミマアキは知らず、同盟国ではない国に日見子様が派兵するとは思えない、とトメ将軍は言います。すると事代主は、日見子殿は自分と思考や言葉がそっくりの魂の双子なので、挙兵してくれると信じていた、と言います。トメ将軍とミマアキは事代主を金砂(カナスナ)国まで送ろうとしますが、シラヒコは、事代主がこの苦境に陥ったのは金砂国のミクマ王の裏切りのためなので、しばらくは宍門(アナト)のニキツミ王に身を寄せるのがよい、と進言します。しかし、事代主は金砂国に帰ってミクマ王と決着をつけねばならない、と言います。事代主は、あえて危険を冒す者が勝利を得る、と言い、トメ将軍とミマアキは感心します。
ヤノハがウツヒオ王とタケツヌ王に会った数日後、山社では、ヲカ王の返事を待たずに穂波にある漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)の邑に旅立とうするヤノハの身を、いささか無謀ではないか、とイクメが案じていました。ヤノハは、鉄(カネ)の武器に勝てる術を一日も早く漢人の邑で入手しなければ勝利の道はない、と考えていました。イクメはその邑のことを調べており、倭国に機織りを伝えた人々で、倭国に来た理由は不老不死の薬を探すためだ、と言うと、ヤノハは興味を示します。
その数日後、ウツヒオ王とタケツヌ王は穂波でヲカ王と会い、ヲカ王から穂波領内の漢人の邑を訪ねることと、山社・那・都萬・伊都・末盧の合計500人の兵が穂波に入ることについて、了解を得ました。ヲカ王は、供だけで他国の王を訪ねる豪胆さに感心したと言い、穂波の兵100人も加えてもらいたい、と言います。鬼国の動きは喫緊の課題で、その背後には吉備がおり、黒幕は日下だろうから、その勢いを止めねば、最初に戦に巻き込まれるのは穂波になる、というわけです。しかしヲカ王は、鬼国の武器は鉄なので、勝算は五分ではないか、と懸念します。するとウツヒオ王は、日見子様は鉄に勝つには穂波の国境にある漢人の邑の知恵が必要と考えている、と答えます。その邑のことを教えてほしい、とタケツヌ王に頼まれたヲカ王は、あの邑には手を出せない、和議を結んだというより、互いに結界を張ったと言うべきだ、あの邑に戦を仕掛ければ必ず死ぬ、と説明します。ヲカ王は古老から聞いた話をウツヒオ王とタケツヌ王に語ります。400年前、不老不死の薬を求めて最初の漢人が倭国に到来しました。その名は徐福で、徐福は宍門国の近くに浮かぶ島で不死の薬をついに見つけた、と伝わっています。ただの言い伝えだろう、と懐疑的なウツヒオ王とタケツヌ王に対して、自分の祖父も曾祖父もそう考えて漢人の邑に戦いを挑んだが散々な結果に終わった、その邑の者は死なないからだ、とヲカ王は語ります。日見子様がその邑に行こうとしているがどう思うか、とウツヒオ王に問われたヲカ王は、止めねばならない、と答えます。止めなかった場合はどうなるのか、とウツヒオ王に問われたヲカ王は、その邑の者は結界を侵した者を問答無用に殺す、と答えます。ウツヒオ王は出兵の細かい取り決めをとタケツヌ王に任せ、自身は山社に戻って日見子(ヤノハ)を止めようとします。
山社の国境では、ヤノハが輿に乗って漢人の邑へと向かっていました。イクメは、もはやヤノハを止められないと理解しつつも、ウツヒオ王とタケツヌ王の返事を待って出立すべきだったのではないか、と進言します。ウツヒオ王とタケツヌ王ならばもうヲカ王を説得し終わった頃だろう、と言うヤノハに対して、漢人の邑は我々が思う以上に危険かもしれない、とイクメは言います。それでもヤノハは留まらず、あえて危険を冒す者が勝利を得ると常々思っていた、とイクメに語るところで今回は終了です。
今回は、謎めいた漢人の邑を巡る話が中心となりました。穂波のヲカ王に首を差し出すよう、ヤノハはウツヒオ王とタケツヌ王に命じましたが、じっさいはその後に真意を明かし、ウツヒオ王とタケツヌ王は納得して穂波に向かったと思います。その真意も重要だったと思われるので、今後明かされるのでしょう。穂波の国境にある謎めいた漢人の邑については、徐福伝説との関連が明かされました。この漢人の邑がじっさいに不老不死の薬を見つけたという設定ではなく、何か重大な秘密があるのでしょうが、穂波の軍をたびたび撃退した理由がどう説明されるのか、注目されます。この漢人の邑にはヤノハとは旧知の何(ハウ)という漢人がおり、それがヤノハを助けることになるかもしれません。暈(クマ)国の志能備(シノビ)に捕らわれたアカメの運命や、トメ将軍とミマアキの一行が脱出した後の日下の動向も気になりますが、まずは穂波の国境にある漢人の邑をめぐる謎がどう語られるのか、注目されます。
この記事へのコメント