先スペイン期アマゾン川流域の集落
先スペイン期アマゾン川流域の集落を報告した研究(Prümers et al., 2022)が公表されました。農業を基盤とする低密度都市の考古学的遺物は、アジア南東部やスリランカや中央アメリカの熱帯林の下に存在する、と報告されています。しかし、アマゾン川流域南部の相互に接続したいくつかの大規模集落を除けば、先スペイン期のアマゾン川流域に関してそうした証拠は見つかっていません。
この研究は、アマゾン川流域南西部のモホス平原のサバンナ–森林モザイクにおける、紀元後500~1400年頃のカサラベ(Casarabe)文化に属する遺跡のライダーデータを提示し、4つの階層で構築される密な集落体系のきわめて大規模な2ヶ所の遺跡(147haおよび315ha)の存在を明らかにします。カサラベ文化に関する理解は、数ヶ所の孤立した集落遺跡から得られた証拠に限られていました。これは、密な植生のため、熱帯林において遺跡の地図の作製が困難だからです。
現在知られている限り、このカサラベ文化地域は約4500km²にわたって広がっており、この研究は、その地域内で6区域を調べ、LiDAR(光検出・測距)と呼ばれる技術を用いて、密集した植生を仮想的に「こすり落とし」て、林冠の下にある土地と考古学的遺跡を可視化しました。その結果、コトカ(Cotoca)とランディヴァル(Landívar)という2ヶ所の大規模集落遺跡と、24ヶ所のそれより小規模な集落遺跡が明らかになりました。このうち、以前から存在が知られていたのは15ヶ所だけでした。コトカでは支配域が約500 km²に及んでいました。
これらの大規模集落遺跡の公共祭祀建造物には階段状の基壇が含まれ、その上にはU字形の構造物、長方形の基壇マウンド、円錐形のピラミッド(高さは最高で22 m)が存在します。この大規模集落遺跡の周囲には同心状に並んだ多角形の土塁があり、これらの遺跡は、より低い階層の遺跡と数kmにわたって延びる直線状の一段高い堤道でつながった中心的な接点となっています。この集落体系は人為的に改変された景観の中にあり、水路および貯水池からなる大規模な水管理基盤を完備していた。この研究は、カサラベ文化の集落パターンが、アマゾン川流域ではこれまで報告されていなかった種類の熱帯低密度都市であることを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
考古学:古代アマゾン文明の建造物を見つけ出す
アマゾン川流域の南西部に西暦500~1400年ごろに存在したとされるカサラベ文化の集落の考古学的遺跡が、新たに11か所見つかった。この知見を報告する論文が、Natureに掲載される。今回の成果は、これまでアマゾン川流域地帯では知られていなかった熱帯での低密度都市生活様式の1つのタイプが発見されたことを意味し、スペイン人が侵略する以前のアマゾン川流域の西部の人口密度が、これまで考えられていたほど低くなかったことを示唆している。
アマゾン川流域で西暦500~1400年ごろに繁栄していたカサラベ文化に関する我々の理解は、数か所の孤立した集落遺跡から得られた証拠に限られている。これは、密な植生のために、熱帯林において遺跡の地図を作製することが難しくなっていることによる。そのため、主要な遺跡における公共祭祀建造物とカサラベの集落の地域的構成に関する我々の知識は限られている。
今回、Heiko Prümersたちは、カサラベ文化圏に属するボリビアのアマゾン川流域のリャノス・デ・モホスの4500平方キロメートルの地域内で、6つの区域を調べた。Prümersたちは、LiDAR(光検出・測距)と呼ばれる技術を用いて、密集した植生をバーチャルに「こすり落とし」て、林冠の下にある土地と考古学的遺跡を可視化した。その結果、2か所の大型集落(コトカ、ランディヴァル)の遺跡と、24か所のそれより小規模な集落の遺跡が発見された。このうち、以前から存在が知られていたのは15か所だけだった。Prümersたちは、盛り土による基礎平場のサイズ、その上に配置された建造物、用水路・貯水池システムなどの要素に基づいて、これらの遺跡を4階層に分類した。建造物には、U字形の構造物、盛り土による長方形の高台、最大22 メートルの高さの円錐ピラミッドが含まれていた。
今回の知見は、スペイン人が侵略する以前のアマゾン川流域の歴史に関する現在の学説に異を唱え、アマゾン川流域における熱帯の古代文明に関する我々の知識を深めるものである。
考古学:ライダーで明らかになったボリビア・アマゾンにおける先スペイン期の低密度都市
Cover Story:隠された宝:ライダーの森林調査であらわになったアマゾン川流域における低密度都市の証拠
カサラベの人々は紀元500〜1400年頃にアマゾン川流域の南西部に住んでいたが、この文化については、考古学的遺物が密林に覆われているためあまり理解されていない。今回H Prümersたちは、ボリビアのアマゾン地域でカサラベの新たな集落を発見したことを報告している。彼らは、ライダーを用いて森林を調べ、2か所の大規模集落(面積はそれぞれ100 haを超える)と24か所のより小さな集落を明らかにした。このうち15か所は、以前に存在が確認されていたものである。表紙は、大規模集落の1つであるCotoca遺跡で、複数のマウンド状の盛土(うち1つは高さが20 mを超える)と長く延びた堤道をはっきりと見ることができる。著者たちは、今回の結果は、アマゾン川流域西部における農業を基盤とする低密度都市の初めての証拠であると述べ、この地域の先スペイン期の人口密度が、これまで考えられていたほど低くはなかったと結論している。
参考文献:
Prümers H. et al.(2022): Lidar reveals pre-Hispanic low-density urbanism in the Bolivian Amazon. Nature, 606, 7913, 325–328.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04780-4
この研究は、アマゾン川流域南西部のモホス平原のサバンナ–森林モザイクにおける、紀元後500~1400年頃のカサラベ(Casarabe)文化に属する遺跡のライダーデータを提示し、4つの階層で構築される密な集落体系のきわめて大規模な2ヶ所の遺跡(147haおよび315ha)の存在を明らかにします。カサラベ文化に関する理解は、数ヶ所の孤立した集落遺跡から得られた証拠に限られていました。これは、密な植生のため、熱帯林において遺跡の地図の作製が困難だからです。
現在知られている限り、このカサラベ文化地域は約4500km²にわたって広がっており、この研究は、その地域内で6区域を調べ、LiDAR(光検出・測距)と呼ばれる技術を用いて、密集した植生を仮想的に「こすり落とし」て、林冠の下にある土地と考古学的遺跡を可視化しました。その結果、コトカ(Cotoca)とランディヴァル(Landívar)という2ヶ所の大規模集落遺跡と、24ヶ所のそれより小規模な集落遺跡が明らかになりました。このうち、以前から存在が知られていたのは15ヶ所だけでした。コトカでは支配域が約500 km²に及んでいました。
これらの大規模集落遺跡の公共祭祀建造物には階段状の基壇が含まれ、その上にはU字形の構造物、長方形の基壇マウンド、円錐形のピラミッド(高さは最高で22 m)が存在します。この大規模集落遺跡の周囲には同心状に並んだ多角形の土塁があり、これらの遺跡は、より低い階層の遺跡と数kmにわたって延びる直線状の一段高い堤道でつながった中心的な接点となっています。この集落体系は人為的に改変された景観の中にあり、水路および貯水池からなる大規模な水管理基盤を完備していた。この研究は、カサラベ文化の集落パターンが、アマゾン川流域ではこれまで報告されていなかった種類の熱帯低密度都市であることを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
考古学:古代アマゾン文明の建造物を見つけ出す
アマゾン川流域の南西部に西暦500~1400年ごろに存在したとされるカサラベ文化の集落の考古学的遺跡が、新たに11か所見つかった。この知見を報告する論文が、Natureに掲載される。今回の成果は、これまでアマゾン川流域地帯では知られていなかった熱帯での低密度都市生活様式の1つのタイプが発見されたことを意味し、スペイン人が侵略する以前のアマゾン川流域の西部の人口密度が、これまで考えられていたほど低くなかったことを示唆している。
アマゾン川流域で西暦500~1400年ごろに繁栄していたカサラベ文化に関する我々の理解は、数か所の孤立した集落遺跡から得られた証拠に限られている。これは、密な植生のために、熱帯林において遺跡の地図を作製することが難しくなっていることによる。そのため、主要な遺跡における公共祭祀建造物とカサラベの集落の地域的構成に関する我々の知識は限られている。
今回、Heiko Prümersたちは、カサラベ文化圏に属するボリビアのアマゾン川流域のリャノス・デ・モホスの4500平方キロメートルの地域内で、6つの区域を調べた。Prümersたちは、LiDAR(光検出・測距)と呼ばれる技術を用いて、密集した植生をバーチャルに「こすり落とし」て、林冠の下にある土地と考古学的遺跡を可視化した。その結果、2か所の大型集落(コトカ、ランディヴァル)の遺跡と、24か所のそれより小規模な集落の遺跡が発見された。このうち、以前から存在が知られていたのは15か所だけだった。Prümersたちは、盛り土による基礎平場のサイズ、その上に配置された建造物、用水路・貯水池システムなどの要素に基づいて、これらの遺跡を4階層に分類した。建造物には、U字形の構造物、盛り土による長方形の高台、最大22 メートルの高さの円錐ピラミッドが含まれていた。
今回の知見は、スペイン人が侵略する以前のアマゾン川流域の歴史に関する現在の学説に異を唱え、アマゾン川流域における熱帯の古代文明に関する我々の知識を深めるものである。
考古学:ライダーで明らかになったボリビア・アマゾンにおける先スペイン期の低密度都市
Cover Story:隠された宝:ライダーの森林調査であらわになったアマゾン川流域における低密度都市の証拠
カサラベの人々は紀元500〜1400年頃にアマゾン川流域の南西部に住んでいたが、この文化については、考古学的遺物が密林に覆われているためあまり理解されていない。今回H Prümersたちは、ボリビアのアマゾン地域でカサラベの新たな集落を発見したことを報告している。彼らは、ライダーを用いて森林を調べ、2か所の大規模集落(面積はそれぞれ100 haを超える)と24か所のより小さな集落を明らかにした。このうち15か所は、以前に存在が確認されていたものである。表紙は、大規模集落の1つであるCotoca遺跡で、複数のマウンド状の盛土(うち1つは高さが20 mを超える)と長く延びた堤道をはっきりと見ることができる。著者たちは、今回の結果は、アマゾン川流域西部における農業を基盤とする低密度都市の初めての証拠であると述べ、この地域の先スペイン期の人口密度が、これまで考えられていたほど低くはなかったと結論している。
参考文献:
Prümers H. et al.(2022): Lidar reveals pre-Hispanic low-density urbanism in the Bolivian Amazon. Nature, 606, 7913, 325–328.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04780-4
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