過去5000万年間に何度も海を渡ったシロアリ
レイビシロアリ科の進化に関する研究(Buček et al., 2022)が公表されました。日本語の関連記事もあります。シロアリはゴキブリの一種で、1億5千万年前頃に他のゴキブリ目から分化し、コロニーを形成して社会生活を営むように進化しました(関連記事)。現在、シロアリにはさまざまな種類が存在し、土の中でつながったトンネルの中で数百万匹の大きなコロニーを形成して生活するものもいますが、シロアリの中でも祖先的と考えられているレイビシロアリ科のほとんどは、おもに木材の中で5000匹に満たない小さなコロニーを形成して生息しています。レイビシロアリ科の分子データはほとんどなく、異なる種同士の関係についてわずかに明らかになっていた情報も、外見に基づくものでした。
この研究は包括的な知見を得るため、30年にわたって世界中から数百のレイビシロアリの標本を集め、その中から約120種を選び出しました。その中には、同じ種の標本が異なる場所から複数採取されたものもあり、多様なレイビシロアリ科の1/4以上を占めていました。これらの標本のほとんどがOIST(沖縄科学技術大学院大学)に持ち込まれ、DNAの単離と配列が行なわれました。この研究は、異なる種の遺伝子配列を比較することで、レイビシロアリの広範な系統樹を構築しました。
その結果、レイビシロアリ科はシロアリの中で最も多く海を渡っている、と明らかになりしました。過去5000万年の間に40回以上も海を横断して南アメリカ大陸からアフリカに渡り、新しくコロニーを形成した土地で数百万年かけて多様化し、新しい種が誕生したわけです。レイビシロアリは海を渡るのがとても上手く、それは、棲みかが木で出来ているため小さな船にもなるからです。また、ほとんどの属が南アメリカ大陸で誕生し、そこから分散していったことも分かりました。1種が移動して複数の種に分化するには、数百万年という年月を要します。
さらに、レイビシロアリ科の中には、最近数世紀の間に、ヒトを介して遠くの地に行き着いた種もあることが確認されました。これは、16世紀以降の世界経済の緊密化と関連しているのでしょう。また、この研究は、レイビシロアリが祖先的な生活様式を持つという通説に疑問を呈しており、それは、レイビシロアリ科の最も古く分岐した系統の中には、祖先的な生活様式をとらない種も存在するからです。それらは、複数の木材にまたがる大きなコロニーを形成し、そのコロニーは地中のトンネルでつながっています。
参考文献:
Buček A. et al.(2022): Molecular Phylogeny Reveals the Past Transoceanic Voyages of Drywood Termites (Isoptera, Kalotermitidae) . Molecular Biology and Evolution, 39, 5, msac093.
https://doi.org/10.1093/molbev/msac093
この研究は包括的な知見を得るため、30年にわたって世界中から数百のレイビシロアリの標本を集め、その中から約120種を選び出しました。その中には、同じ種の標本が異なる場所から複数採取されたものもあり、多様なレイビシロアリ科の1/4以上を占めていました。これらの標本のほとんどがOIST(沖縄科学技術大学院大学)に持ち込まれ、DNAの単離と配列が行なわれました。この研究は、異なる種の遺伝子配列を比較することで、レイビシロアリの広範な系統樹を構築しました。
その結果、レイビシロアリ科はシロアリの中で最も多く海を渡っている、と明らかになりしました。過去5000万年の間に40回以上も海を横断して南アメリカ大陸からアフリカに渡り、新しくコロニーを形成した土地で数百万年かけて多様化し、新しい種が誕生したわけです。レイビシロアリは海を渡るのがとても上手く、それは、棲みかが木で出来ているため小さな船にもなるからです。また、ほとんどの属が南アメリカ大陸で誕生し、そこから分散していったことも分かりました。1種が移動して複数の種に分化するには、数百万年という年月を要します。
さらに、レイビシロアリ科の中には、最近数世紀の間に、ヒトを介して遠くの地に行き着いた種もあることが確認されました。これは、16世紀以降の世界経済の緊密化と関連しているのでしょう。また、この研究は、レイビシロアリが祖先的な生活様式を持つという通説に疑問を呈しており、それは、レイビシロアリ科の最も古く分岐した系統の中には、祖先的な生活様式をとらない種も存在するからです。それらは、複数の木材にまたがる大きなコロニーを形成し、そのコロニーは地中のトンネルでつながっています。
参考文献:
Buček A. et al.(2022): Molecular Phylogeny Reveals the Past Transoceanic Voyages of Drywood Termites (Isoptera, Kalotermitidae) . Molecular Biology and Evolution, 39, 5, msac093.
https://doi.org/10.1093/molbev/msac093
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