暁新世において脳より先に筋肉が増えた有胎盤類

 暁新世において有胎盤類で脳より先に筋肉が増えたことを報告する研究(Bertrand et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。哺乳類は脊椎動物の中で体の大きさに占める脳の割合が最も大きいものの、その進化過程は詳細には解明されていません。この研究は、アメリカ合衆国のニューメキシコ州サン・ファン盆地とコロラド州デンバー盆地で最近発見された、暁新世の哺乳類の頭蓋のCTスキャンおよびそれと同年代の他の哺乳類の頭蓋のCTスキャンを用いて、有胎盤類の脳の進化速度の傾向を追跡しました。

 この研究は、脳全体の大きさに加え、大脳新皮質や嗅球といった知覚に関与する個々の頭蓋構成部の大きさを測定し、それらの構成部の経年変化を調べました。その結果、有胎盤類種はまず体が大きくなり、暁新世(6600万~5600万年前頃)において恐竜がいなくなった生態的地位に入って拡大し、それが速かったため、脳の相対的な大きさが縮小しました。続いて始新世(5500万~3400万年前頃)に競合相手で飽和状態の生態系において、認知能力の向上がさらに重要になるにつれて大脳化した、と推測されています。とりわけ始新世の有胎盤類では、嗅球をなおざりに、眼球の動きに関わる大脳新皮質と脳の構成部が大きくなりました。


参考文献:
Bertrand OC. et al.(2022): Brawn before brains in placental mammals after the end-Cretaceous extinction. Science, 376, 6568, 80–85.
https://doi.org/10.1126/science.abl5584

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