スピノサウルス科の水中採餌
スピノサウルス科の水中採餌に関する研究(Fabbri et al., 2022)が報道されました。二次的な水生適応は、陸生脊椎動物祖先からの進化において独立して30回以上生じています。数十年来、非鳥類型恐竜はこのパターンの例外と考えられてきました。非鳥類型恐竜類で、部分的に水生あるいは主に水生であったと仮定されている種はごくわずかです。しかし、これらの仮説に関しては、絶滅動物では水生習慣への明らかな解剖学的適応を特定するのが困難なことが主な理由となり、議論が続いています。たとえ、ここ10年間、水かきのような脚部と尾鰭のような尾部を特徴とするスピノサウルス科恐竜の化石が出土しましたが、これらの恐竜の主たる生息場所が陸上だったのか水中だったのかは、不明のままです。
この研究は、現生羊膜類全体に見られる骨密度と水生生態の関係から、絶滅種の水生習慣の信頼性の高い推論が得られることを実証します。水生適応の代理指標としては、骨密度が用いられています。これは、水生の生活様式に適した形状かが明白でない水生動物(カバなど)であっても、骨密度が非常に高いことに基づいています。緻密骨は、水中生活への適応がより明瞭に分かる胴体の特徴(鰭や鰭状の足など)の進化に先立って出現することが多い、と指摘されています。この手法を用いて、非鳥類型恐竜類における水生適応の分布が評価されました。
この研究は、非鳥類型恐竜を含む絶滅種と非絶滅種のさまざまな有羊膜類(哺乳類、トカゲ類、クロコダイル類、鳥類、海生爬虫類、飛翔爬虫類など)の骨380点の密度を分析し、比較しました。その結果、スピノサウルス科において、骨密度の大幅な増加と関連した水生習慣が強く支持されました。骨密度の増加は、より顕著な解剖学的変化の進化に先行しており、このパターンは他の水生爬虫類および水生哺乳類にも認められます。スピノサウルス科恐竜は骨密度が高かったため、水中に入った時の浮力調節をしやすかった可能性があり、これは、スピノサウルスとバリオニクスが水中で採餌していたことと、スコミムスが陸上環境で多く生息していたことと関連している、と示唆されています・以下は水中で軟骨魚類オンコプリスティスを狩るスピノサウルスの想像図です。
スピノサウルス科は、スピノサウルスやバリオニクスの水中採餌行動とスコミムスの非潜水性習慣など、生態が驚くほど異なる水生のスペシャリスト種で構成されていた、と明らかになりました。スピノサウルス科恐竜における水中環境への適応は、前期ジュラ紀の他のテタヌラ類獣脚類からの分岐の後で、前期白亜紀(約1億4500万~1億50万年前)に出現しました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:スピノサウルス科恐竜が水生だった可能性
スピノサウルス科恐竜には水生の生活様式に適応した特徴があったという証拠を示した論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、大部分の非鳥類型恐竜の生活が陸上環境に限定されていたとする仮説に疑問を投げ掛けている。
絶滅種の解剖学的適応を推測することは困難を極める場合があるが、ほぼ水生あるいは半水生と考えられている非鳥類型恐竜種はごく少数だ。ここ10年の間に、水かきのような脚部と尾びれのような尾部を特徴とするスピノサウルス科恐竜の化石が出土したが、これらの恐竜の主たる生息場所が陸上だったのか水中だったのかは不明のままだ。水生適応の代理指標としては、骨密度が用いられている。これは、水生の生活様式に適した形状かが明白でない水生動物(カバなど)であっても、骨密度が非常に高いことに基づいている。緻密骨は、水中生活に適応したことがより明瞭に分かる胴体の特徴(ひれ、ひれ状の足など)の進化に先立って出現することが多い。
今回、Matteo Fabbriたちは、恐竜の水生適応を調べるため、非鳥類型恐竜を含む絶滅種と非絶滅種のさまざまな有羊膜類(哺乳類、トカゲ類、クロコダイル類、鳥類、海生爬虫類、飛翔爬虫類など)の骨380点の密度を分析し、比較した。その結果、捕食性恐竜であるスピノサウルス科恐竜に高密度の骨があることが明らかになり、水中生活に適応していたことが示唆された。Fabbriたちは、スピノサウルス科恐竜は骨密度が高かったため、水中に入った時の浮力調節がしやすかった可能性があり、このことは、スピノサウルスとバリオニクスが水中で採餌していたことと、スコミムスが陸上環境で多く生息していたことと関連していると示唆している。
今回の知見は、水生環境への適応がスピノサウルス科恐竜に現れたのが白亜紀前期(約1億4500万~1億50万年前)のことで、スピノサウルス科恐竜が他の大型肉食恐竜から分岐したジュラ紀前期より後だったことを示唆している。
古生物学:肉食恐竜類における水中採餌
古生物学:骨密度から示されたスピノサウルス類の水生適応
絶滅動物の生活様式を解剖学的特徴から特定するのは難しい。今回M Fabbriたちは、多様な現生羊膜類の骨密度データに基づいて非鳥類型恐竜類の水生適応を評価し、スピノサウルス科恐竜が水中での生活に適応していた可能性を示している。
参考文献:
Fabbri M. et al.(2022): Subaqueous foraging among carnivorous dinosaurs. Nature, 603, 7903, 852–857.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04528-0
この研究は、現生羊膜類全体に見られる骨密度と水生生態の関係から、絶滅種の水生習慣の信頼性の高い推論が得られることを実証します。水生適応の代理指標としては、骨密度が用いられています。これは、水生の生活様式に適した形状かが明白でない水生動物(カバなど)であっても、骨密度が非常に高いことに基づいています。緻密骨は、水中生活への適応がより明瞭に分かる胴体の特徴(鰭や鰭状の足など)の進化に先立って出現することが多い、と指摘されています。この手法を用いて、非鳥類型恐竜類における水生適応の分布が評価されました。
この研究は、非鳥類型恐竜を含む絶滅種と非絶滅種のさまざまな有羊膜類(哺乳類、トカゲ類、クロコダイル類、鳥類、海生爬虫類、飛翔爬虫類など)の骨380点の密度を分析し、比較しました。その結果、スピノサウルス科において、骨密度の大幅な増加と関連した水生習慣が強く支持されました。骨密度の増加は、より顕著な解剖学的変化の進化に先行しており、このパターンは他の水生爬虫類および水生哺乳類にも認められます。スピノサウルス科恐竜は骨密度が高かったため、水中に入った時の浮力調節をしやすかった可能性があり、これは、スピノサウルスとバリオニクスが水中で採餌していたことと、スコミムスが陸上環境で多く生息していたことと関連している、と示唆されています・以下は水中で軟骨魚類オンコプリスティスを狩るスピノサウルスの想像図です。
スピノサウルス科は、スピノサウルスやバリオニクスの水中採餌行動とスコミムスの非潜水性習慣など、生態が驚くほど異なる水生のスペシャリスト種で構成されていた、と明らかになりました。スピノサウルス科恐竜における水中環境への適応は、前期ジュラ紀の他のテタヌラ類獣脚類からの分岐の後で、前期白亜紀(約1億4500万~1億50万年前)に出現しました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:スピノサウルス科恐竜が水生だった可能性
スピノサウルス科恐竜には水生の生活様式に適応した特徴があったという証拠を示した論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、大部分の非鳥類型恐竜の生活が陸上環境に限定されていたとする仮説に疑問を投げ掛けている。
絶滅種の解剖学的適応を推測することは困難を極める場合があるが、ほぼ水生あるいは半水生と考えられている非鳥類型恐竜種はごく少数だ。ここ10年の間に、水かきのような脚部と尾びれのような尾部を特徴とするスピノサウルス科恐竜の化石が出土したが、これらの恐竜の主たる生息場所が陸上だったのか水中だったのかは不明のままだ。水生適応の代理指標としては、骨密度が用いられている。これは、水生の生活様式に適した形状かが明白でない水生動物(カバなど)であっても、骨密度が非常に高いことに基づいている。緻密骨は、水中生活に適応したことがより明瞭に分かる胴体の特徴(ひれ、ひれ状の足など)の進化に先立って出現することが多い。
今回、Matteo Fabbriたちは、恐竜の水生適応を調べるため、非鳥類型恐竜を含む絶滅種と非絶滅種のさまざまな有羊膜類(哺乳類、トカゲ類、クロコダイル類、鳥類、海生爬虫類、飛翔爬虫類など)の骨380点の密度を分析し、比較した。その結果、捕食性恐竜であるスピノサウルス科恐竜に高密度の骨があることが明らかになり、水中生活に適応していたことが示唆された。Fabbriたちは、スピノサウルス科恐竜は骨密度が高かったため、水中に入った時の浮力調節がしやすかった可能性があり、このことは、スピノサウルスとバリオニクスが水中で採餌していたことと、スコミムスが陸上環境で多く生息していたことと関連していると示唆している。
今回の知見は、水生環境への適応がスピノサウルス科恐竜に現れたのが白亜紀前期(約1億4500万~1億50万年前)のことで、スピノサウルス科恐竜が他の大型肉食恐竜から分岐したジュラ紀前期より後だったことを示唆している。
古生物学:肉食恐竜類における水中採餌
古生物学:骨密度から示されたスピノサウルス類の水生適応
絶滅動物の生活様式を解剖学的特徴から特定するのは難しい。今回M Fabbriたちは、多様な現生羊膜類の骨密度データに基づいて非鳥類型恐竜類の水生適応を評価し、スピノサウルス科恐竜が水中での生活に適応していた可能性を示している。
参考文献:
Fabbri M. et al.(2022): Subaqueous foraging among carnivorous dinosaurs. Nature, 603, 7903, 852–857.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04528-0
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