『卑弥呼』第85話「使者」
『ビッグコミックオリジナル』2022年5月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが閉じ込められている山社国(ヤマトノクニ)の千穂(現在の高千穂でしょうか)の洞窟の前の巨岩をオオヒコとヌカデたちが取り除き、その呼びかけに気づいたヤノハが、自分はまだ日見子(ヒミコ)のようだ、と呟くところで終了しました。今回は、ヌカデが小さな穴から洞窟内のヤノハに呼びかける場面から始まります。ヌカデは単独でヤノハの近くまで来て、他人に会話を聞かせないようにします。ヌカデに息子のヤエトについて尋ねられたヌカデは、ナツハ(ヤノハの弟のチカラオ)に託した、と答えます。ヤノハはチカラオにヤエトを託すさい、自分の子の証としはて鏡を渡しました。ヤノハが出産したことを他人に知られる危険がなくなったため、ヌカデはヤノハ救出の手段を伝えます。洞窟入口の巨岩を取り除くには数日かかるので、その間は小さな穴から必要な物資を渡す、というわけです。
金砂(カナスナ)国の仁以多地(ニタシキチ)では、事代主(コトシロヌシ)の一行が、阿伊(アイ)の邑の人々の死体を見つけ、事代主は邑長の玉日女(タマヒメ)の身を案じますが、配下の者は、鬼国(キノクニ)の襲撃で亡くなっただろう、と言います。仁以多地が陥落したとなると、鬼国は数日で出雲に攻め入るだろうから、時間がないとの事代主の判断は正しかった、とシラヒコは言います。事代主の一行が吊り橋を渡っていると、大勢の足音が聞こえてきたので、岩の上に隠れます。その後、岩の下の道を100名ほどの兵士(1個中隊)が進みます。鬼国の兵士は全員鉄(カネ)の武器を持っているので、青銅(アオカネ)の武器が主体の自分たちはまともに戦っても勝ち目はない、と事代主は自嘲します。道を進む鬼国の兵士の中に輿があり、隊長らしき人物が乗っています。事代主は、その姿がまさに鬼のようだ、と考えます。事代主の一行は、もう少し歩いて山中で野宿し、翌日は黄砂山(キノスナノヤマ)で一泊して、鬼国の本拠地に翌々日の夜に到着する計画を立てます。事代主の一行は、鬼国の本拠地に到達しますが、そこは倭国では見られない異様な館でした。鬼国の者は、この館を「シラ」とか「シロ」とか呼んでおり、その意味は韓(カラ、朝鮮半島)にある国の名とも、「大きな館」とも言われている、と事代主は配下から伝えられます。事代主は、物見(モノミ、間者)を出して館の周辺を調べるよう配下に命じ、予想通り警護が手薄ならば、「たたら人」を虜にする謀を3日以内に実行する、と配下に伝えます。
千穂では、オオヒコとヌカデの指示により、邑人と兵士が洞窟の前の巨岩を取り除く作業に従事していました。そこへ、山社からイクメが来た、との報せが伝わります。ヌカデとオオヒコはイクメから、出雲の主である事代主より木簡が届き、鬼国が金砂国に侵攻したので筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)に援助を求めてきた、と事情を伝えられます。オオヒコは、厲鬼(レイキ)、つまり疫病がまだ収まっていないのに戦闘を始めるとは非道だ、と憤ります。出雲を含む金砂国と、日見子(ヒミコ)を盟主とする筑紫島の諸国とは同盟関係にはないはずだ、とのヌカデの指摘に対して、援軍を派遣するか否かは日見子(ヤノハ)様が決めることだ、とイクメは答えます。今すぐ日見子様の判断を仰ぎたい、と急ぐイクメに対して、小さな穴を通して話はできるものの、作業を中断することは難しい、とオオヒコは答えます。それでも頼み込むイクメに対して、兵士の夕餉の時間に穴の前に連れていく、とオオヒコは妥協します。イクメは洞窟の巨岩の前に来て、金砂国と出雲の危機にどう対処するのか、ヤノハに尋ねます。参戦すれば多くの血が流れるので、倭から戦をなくそうとする日見子様には難しい決断と思う、と案じるイクメに対して、事代主様は倭の泰平のため不可欠なお方なので答えは決まっている、とヤノハが力強く言うところで今回は終了です。
今回は、鬼国の侵攻による出雲を含む金砂国の危機と、洞窟に閉じ込められたヤノハの救出とが絡み合って進みました。ヤノハが出雲を含む金砂国の危機にどう対処するのか、今回は明示されていませんが、事代主様は倭の泰平のため不可欠なお方なので答えは決まっている、とヤノハは発言していますから、出雲に援軍を送るのでしょう。これまで外部の人々の話でしか出てこなかった鬼国の兵士と隊長が今回初めて登場しましたが、ひじょうに不気味というか異端的な勢力として描かれています。ヤノハの援軍派遣は、日下(ヒノモト)の野心も関わってきて、作中では山場の一つになりそうなので、どう話が進むのか、たいへん楽しみです。
金砂(カナスナ)国の仁以多地(ニタシキチ)では、事代主(コトシロヌシ)の一行が、阿伊(アイ)の邑の人々の死体を見つけ、事代主は邑長の玉日女(タマヒメ)の身を案じますが、配下の者は、鬼国(キノクニ)の襲撃で亡くなっただろう、と言います。仁以多地が陥落したとなると、鬼国は数日で出雲に攻め入るだろうから、時間がないとの事代主の判断は正しかった、とシラヒコは言います。事代主の一行が吊り橋を渡っていると、大勢の足音が聞こえてきたので、岩の上に隠れます。その後、岩の下の道を100名ほどの兵士(1個中隊)が進みます。鬼国の兵士は全員鉄(カネ)の武器を持っているので、青銅(アオカネ)の武器が主体の自分たちはまともに戦っても勝ち目はない、と事代主は自嘲します。道を進む鬼国の兵士の中に輿があり、隊長らしき人物が乗っています。事代主は、その姿がまさに鬼のようだ、と考えます。事代主の一行は、もう少し歩いて山中で野宿し、翌日は黄砂山(キノスナノヤマ)で一泊して、鬼国の本拠地に翌々日の夜に到着する計画を立てます。事代主の一行は、鬼国の本拠地に到達しますが、そこは倭国では見られない異様な館でした。鬼国の者は、この館を「シラ」とか「シロ」とか呼んでおり、その意味は韓(カラ、朝鮮半島)にある国の名とも、「大きな館」とも言われている、と事代主は配下から伝えられます。事代主は、物見(モノミ、間者)を出して館の周辺を調べるよう配下に命じ、予想通り警護が手薄ならば、「たたら人」を虜にする謀を3日以内に実行する、と配下に伝えます。
千穂では、オオヒコとヌカデの指示により、邑人と兵士が洞窟の前の巨岩を取り除く作業に従事していました。そこへ、山社からイクメが来た、との報せが伝わります。ヌカデとオオヒコはイクメから、出雲の主である事代主より木簡が届き、鬼国が金砂国に侵攻したので筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)に援助を求めてきた、と事情を伝えられます。オオヒコは、厲鬼(レイキ)、つまり疫病がまだ収まっていないのに戦闘を始めるとは非道だ、と憤ります。出雲を含む金砂国と、日見子(ヒミコ)を盟主とする筑紫島の諸国とは同盟関係にはないはずだ、とのヌカデの指摘に対して、援軍を派遣するか否かは日見子(ヤノハ)様が決めることだ、とイクメは答えます。今すぐ日見子様の判断を仰ぎたい、と急ぐイクメに対して、小さな穴を通して話はできるものの、作業を中断することは難しい、とオオヒコは答えます。それでも頼み込むイクメに対して、兵士の夕餉の時間に穴の前に連れていく、とオオヒコは妥協します。イクメは洞窟の巨岩の前に来て、金砂国と出雲の危機にどう対処するのか、ヤノハに尋ねます。参戦すれば多くの血が流れるので、倭から戦をなくそうとする日見子様には難しい決断と思う、と案じるイクメに対して、事代主様は倭の泰平のため不可欠なお方なので答えは決まっている、とヤノハが力強く言うところで今回は終了です。
今回は、鬼国の侵攻による出雲を含む金砂国の危機と、洞窟に閉じ込められたヤノハの救出とが絡み合って進みました。ヤノハが出雲を含む金砂国の危機にどう対処するのか、今回は明示されていませんが、事代主様は倭の泰平のため不可欠なお方なので答えは決まっている、とヤノハは発言していますから、出雲に援軍を送るのでしょう。これまで外部の人々の話でしか出てこなかった鬼国の兵士と隊長が今回初めて登場しましたが、ひじょうに不気味というか異端的な勢力として描かれています。ヤノハの援軍派遣は、日下(ヒノモト)の野心も関わってきて、作中では山場の一つになりそうなので、どう話が進むのか、たいへん楽しみです。
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