白亜紀末の大量絶滅をもたらした小惑星が衝突した季節
白亜紀末の大量絶滅をもたらした小惑星が衝突した季節に関する研究(During et al., 2022)が報道されました。約6600万年前に起きた白亜紀–古第三紀の大量絶滅は、現在のユカタン半島でのチクシュルーブ小惑星衝突が契機となりました。この事象はきわめて選択的な絶滅を引き起こし、それにより、全ての非鳥類型恐竜類、翼竜類、アンモナイト類、厚歯二枚貝(ルディスト)類、大多数の海生爬虫類を含む生物種の約76%が絶滅しました。この衝突の年代およびその影響に関する研究はおもに1000年単位の時間規模行なわれており、衝突が起きた季節は絞り込まれていません。
この研究は、中生代が終焉した日に死んだ魚類を調べることで、白亜紀–古第三紀の大量絶滅を引き起こした衝突が北半球の春に起きたことを明らかにします。アメリカ合衆国ノースダコタ州タニスの後期白亜紀の堆積層から出土した濾過摂食魚類(チョウザメ類とヘラチョウザメ類)の保存状態がきわめて良好な軟骨膜骨と皮骨の骨組織構造および安定同位体記録から、白亜紀末の数年間の1年周期性が明らかになりました。これらの魚の鰓には、小惑星の衝突による残骸が詰まっていましたが、これより下流の消化器系からは見つかりませんでした。これは、小惑星の衝突により引き起こされた静振(湖沼などの水面が衝突によって振動すること)によって河川が突然増水し、これらの魚がほぼ瞬時に死滅したことを示唆しています。
生殖、摂餌、冬眠、夏眠の季節的時期や持続期間などの1年を周期とする生活環は、白亜紀最後の生物クレード(単系統群)の間で大きく異なっていました。存状態がきわめて良好なこれに魚類の化石骨内部の独特な三次元成長パターンから、白亜紀–古第三紀の大量絶滅を引き起こした天体衝突は、春に繁殖して子孫を残した多くの北半球の生物種が特に影響を受けやすい時期と重なった、と考えられます。この研究は、チクシュルーブ衝突の時期が北半球の春および南半球の秋だったと推測されるため、白亜紀–古第三紀境界を越える生物の選択的生存に大きな影響を与えた、と主張します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化:恐竜時代が終わったのは北半球の春だった
恐竜の時代だった中生代を終わらせたチクシュルーブ小惑星の衝突は、北半球の春に起こったことを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、その後に起こった絶滅のパターンを説明するために役立ち、地球の歴史におけるこの極めて重要な瞬間の理解を深めるものとなる。
今から約6600万年前、現在のメキシコのユカタン半島に大型の小惑星が衝突し、全生物種の76%(非鳥類型恐竜、翼竜類、アンモナイト類を含む)が死滅する大量絶滅事象が起こった。この事象の時期を調べたこれまでの研究では、1000年の時間スケールに焦点が当てられていたため、どの季節に小惑星の衝突があったのかは分かっていない。今回、Melanie Duringたちは、この問題を解決するために、小惑星の衝突があった日に大量に死滅した濾過摂食魚(チョウザメ類とヘラチョウザメ類)の遺骸を調べた。これらの魚類の化石骨は保存状態が良好で、その内部には独特な三次元成長パターンが観察され、季節変化の記録が得られた。この観察結果は、炭素同位体データと組み合わせると、これらの魚類が北半球の春に死んだことを示唆している。
これらの濾過摂食魚の遺骸は、米国ノースダコタ州の後期白亜紀の堆積層で発見された。これらの魚の鰓には、小惑星の衝突による残骸が詰まっていたが、これより下流の消化器系からは見つからなかった。これは、小惑星の衝突によって引き起こされた静振(湖沼などの水面が衝突によって振動すること)によって河川が突然増水し、これらの魚がほぼ瞬時に死滅したことを示唆している。この壊滅的な天体衝突は、春に繁殖して子孫を残した多くの北半球の生物種が特に影響を受けやすい時期と重なったと考えられる。Duringたちは、南半球の生態系にとって天体衝突が起こったのは秋であり、その回復の速さは、北半球の生態系の最大2倍に達したと考えられると指摘している。
生物地球化学:中生代は北半球の春に終焉した
生物地球化学:春の奔流
今回、恐竜の時代を突然終わらせたチクシュルーブの衝突が、北半球の春に起こったことが示された。この知見は、北米の白亜紀最後の堆積物において、津波に起因する突然の河川の逆流の痕跡の中に並んで発見された、濾過摂食性のチョウザメ類およびヘラチョウザメ類の大量死の遺骸群集の分析により得られたもので、これらの魚類の鰓耙には衝突で生じた岩屑が見つかったが、それより先の消化器系には岩屑は見られなかった。骨の成長を調べた結果、これらの魚が死んだのは春であったことが示唆された。チクシュルーブの衝突が北半球の春に起きたことが、その後の生物相の繁栄に直接影響を及ぼした可能性がある。
参考文献:
During MAD. et al.(2022): The Mesozoic terminated in boreal spring. Nature, 603, 7899, 91–94.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04446-1
この研究は、中生代が終焉した日に死んだ魚類を調べることで、白亜紀–古第三紀の大量絶滅を引き起こした衝突が北半球の春に起きたことを明らかにします。アメリカ合衆国ノースダコタ州タニスの後期白亜紀の堆積層から出土した濾過摂食魚類(チョウザメ類とヘラチョウザメ類)の保存状態がきわめて良好な軟骨膜骨と皮骨の骨組織構造および安定同位体記録から、白亜紀末の数年間の1年周期性が明らかになりました。これらの魚の鰓には、小惑星の衝突による残骸が詰まっていましたが、これより下流の消化器系からは見つかりませんでした。これは、小惑星の衝突により引き起こされた静振(湖沼などの水面が衝突によって振動すること)によって河川が突然増水し、これらの魚がほぼ瞬時に死滅したことを示唆しています。
生殖、摂餌、冬眠、夏眠の季節的時期や持続期間などの1年を周期とする生活環は、白亜紀最後の生物クレード(単系統群)の間で大きく異なっていました。存状態がきわめて良好なこれに魚類の化石骨内部の独特な三次元成長パターンから、白亜紀–古第三紀の大量絶滅を引き起こした天体衝突は、春に繁殖して子孫を残した多くの北半球の生物種が特に影響を受けやすい時期と重なった、と考えられます。この研究は、チクシュルーブ衝突の時期が北半球の春および南半球の秋だったと推測されるため、白亜紀–古第三紀境界を越える生物の選択的生存に大きな影響を与えた、と主張します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化:恐竜時代が終わったのは北半球の春だった
恐竜の時代だった中生代を終わらせたチクシュルーブ小惑星の衝突は、北半球の春に起こったことを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、その後に起こった絶滅のパターンを説明するために役立ち、地球の歴史におけるこの極めて重要な瞬間の理解を深めるものとなる。
今から約6600万年前、現在のメキシコのユカタン半島に大型の小惑星が衝突し、全生物種の76%(非鳥類型恐竜、翼竜類、アンモナイト類を含む)が死滅する大量絶滅事象が起こった。この事象の時期を調べたこれまでの研究では、1000年の時間スケールに焦点が当てられていたため、どの季節に小惑星の衝突があったのかは分かっていない。今回、Melanie Duringたちは、この問題を解決するために、小惑星の衝突があった日に大量に死滅した濾過摂食魚(チョウザメ類とヘラチョウザメ類)の遺骸を調べた。これらの魚類の化石骨は保存状態が良好で、その内部には独特な三次元成長パターンが観察され、季節変化の記録が得られた。この観察結果は、炭素同位体データと組み合わせると、これらの魚類が北半球の春に死んだことを示唆している。
これらの濾過摂食魚の遺骸は、米国ノースダコタ州の後期白亜紀の堆積層で発見された。これらの魚の鰓には、小惑星の衝突による残骸が詰まっていたが、これより下流の消化器系からは見つからなかった。これは、小惑星の衝突によって引き起こされた静振(湖沼などの水面が衝突によって振動すること)によって河川が突然増水し、これらの魚がほぼ瞬時に死滅したことを示唆している。この壊滅的な天体衝突は、春に繁殖して子孫を残した多くの北半球の生物種が特に影響を受けやすい時期と重なったと考えられる。Duringたちは、南半球の生態系にとって天体衝突が起こったのは秋であり、その回復の速さは、北半球の生態系の最大2倍に達したと考えられると指摘している。
生物地球化学:中生代は北半球の春に終焉した
生物地球化学:春の奔流
今回、恐竜の時代を突然終わらせたチクシュルーブの衝突が、北半球の春に起こったことが示された。この知見は、北米の白亜紀最後の堆積物において、津波に起因する突然の河川の逆流の痕跡の中に並んで発見された、濾過摂食性のチョウザメ類およびヘラチョウザメ類の大量死の遺骸群集の分析により得られたもので、これらの魚類の鰓耙には衝突で生じた岩屑が見つかったが、それより先の消化器系には岩屑は見られなかった。骨の成長を調べた結果、これらの魚が死んだのは春であったことが示唆された。チクシュルーブの衝突が北半球の春に起きたことが、その後の生物相の繁栄に直接影響を及ぼした可能性がある。
参考文献:
During MAD. et al.(2022): The Mesozoic terminated in boreal spring. Nature, 603, 7899, 91–94.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04446-1
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