大相撲春場所千秋楽

 今場所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により調整の遅れが伝えられていた照ノ富士関が、先場所の負傷の影響もあって6日目から休場となり、横綱不在となりました。照ノ富士関の状態はたいへん心配で、今後復活できずに引退に追い込まれる可能性も低くはないように思います。そうすると、横綱不在が長期化するかもしれず、その意味で通常ならば大関陣に期待が寄せられるところですが、大関3人のうち正代関と貴景勝関がカド番で、正代関は初日から4連敗となり大関からの陥落は確実と考えていたところ、中盤から盛り返して何とか9勝6敗と勝ち越し、カド番を脱出しました。正代関は今後もしばらくは大関の座を維持できそうですが、毎場所のように優勝争いに絡むことはとても無理でしょう。

 貴景勝関も8勝7敗と何とか勝ち越してカド番を脱出しましたが、押し相撲で不安定なところがある以上に、組むと四つ相撲の幕下力士並みの実力しかなさそうなので、横綱昇進は難しいでしょう。それでも、まだ若いだけに、大怪我をしなければ長く大関の座を保ちそうです。ただ、貴景勝関は怪我が多いだけに、近いうちに大関から陥落しても不思議ではありません。新大関の御嶽海関は序盤からなかなか好調でしたが、終盤に失速して11勝4敗で場所を追えました。御嶽海関は勢いに乗ると強く、照ノ富士関が復帰できなければ2場所連続優勝して横綱昇進もあるかもしれませんが、今年(2022年)12月に30歳を迎えるだけに、仮に横綱に昇進したとしても、長くは現役を続けられないでしょう。

 優勝争いは、高安関が初日から10連勝とずっと引っ張る形で進みましたが、終盤になって重圧からか失速気味となり、千秋楽を迎えた時点では、2敗の高安関と若隆景関、3敗の琴ノ若関に優勝の可能性が残されました。まず琴ノ若関が豊昇龍関と対戦し、下手投げで敗れて優勝争いから脱落しました。豊昇龍関は新三役で8勝7敗と勝ち越し、やはり将来の横綱の最有力候補は豊昇龍関だと思います。豊昇龍関には、何とか年内に大関に昇進してもらいたいものです。次に高安関が阿炎関と対戦し、圧倒されて送り倒しで負けました。高安関は明らかに固くなっている感じで、本当に勝負弱いと思います。高安関には13勝の壁があり、今場所も12勝止まりでした。

 最後に若隆景関が結びの一番で正代関と対戦し、先に上手を取って有利な体勢を作ったのかと思いましたが、正代関が上手を取れないまま出ていき、寄り切って勝ち、若隆景関と高安関の優勝決定戦となりました。優勝決定戦では、激しい攻防の末に若隆景関が苦しい体勢から高安関に勝ち、初優勝を果たしました。両者ともに千秋楽で負けての優勝決定戦となり、この点はやや残念でしたが、優勝決定戦は見ごたえのある相撲でした。若隆景関は先場所まで三役経験が1場所だけで、有力な大関候補とは考えていませんでしたが、今場所は覚醒した感があります。ただ若隆景関は、結びの一番では固くなっていただろうとはいえ内容が悪かったこともあり、これが今場所だけの勢いなのか、本当に急激に強くなったのかは、来場所を見ないと判断の難しいところです。

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