ハナバチの採餌に対する人間活動の影響

 ハナバチの採餌に対する人間活動の影響に関する研究(Goulson, and Nicholls., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ハナバチの効率的な採餌能力は、ハナバチ自身の適応度と野生植物や作物の受粉にとって不可欠です。しかし、この研究は、多数の人間活動が原因でハナバチの採餌は次第に困難になってきている、と指摘します。

 成虫がどれだけ多くの食糧を集められるかが、育てられる幼虫の数の直接的な決定要因であるため、採餌にまつわるこれらの問題はハナバチ全体の生存をも脅かしています。ハナバチは採餌に極めて特化した昆虫ですが、花粉や花密を求めてパッチ上に広く分布する花から花へ飛び回るのは、とりわけ家畜化されたミツバチや野生のマルハナバチといった大きめの種にとって、代償を伴うことがあります。最適とは言えない採餌行動はハナバチの繁栄力に大きな影響を与えかねません。

 この研究は、人新世にハナバチの採餌効率に影響を及ぼしてきた人間活動のさまざまな要因について論じています。たとえば、神経毒性の農薬や汚染物質、増加する電磁放射への暴露、および市街化や工業型農業のさまざまな影響などです。この研究はさらに、こういったストレス要因が組み合わさって、採餌能力をうまく阻止するといったようなハナバチの行動に悪影響を及ぼす仕組みも取り上げています。

 この研究は、市街地におけるこれらの影響を軽減する取り組み、たとえば授粉媒介者に配慮した緑空間の創出や市街地での農薬使用の全国的な禁止令の導入などが、ハナバチ群に対するこれらのストレスを部分的に軽減することに一定の成果を出している、と指摘します。しかし、農地環境において野生の授粉媒介者群やそれらの採餌能力を支える方法を見つけるのは、然としてひじょうに困難であることも指摘されています。


参考文献:
Goulson D, and Nicholls E.(2021): Anthropogenic influences on bee foraging. Science, 375, 6584, 970–972.
https://doi.org/10.1126/science.abn0185

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