顔の絵文字は人間の感情を上手く伝えている

 顔の絵文字の人間の感情を伝える機能についての研究(Kutsuzawa et al., 2022)が公表されました。絵文字は世界中で感情を伝えるために使われており、研究にも用いられてきましたが、絵文字がヒトの感情状態にどの程度正確に対応するかについては、あまり分かっていません。この研究は、日本在住の20~39歳の被験者1082人にツイッター上の顔の絵文字74点を見せました。この研究は、絵文字に表現された感情を解釈するため、被験者に対して、絵文字の解釈を不快から快までの9段階評価(感情価)、感情の強度を弱から強までの9段階評価(覚醒度)で示すように依頼しました。

 その結果、これらの絵文字は、6つの異なる集団(強い不快感情から強い快感情まで)にまとめられました。緊張やストレスを伝える強い不快感情の絵文字には、怒った顔、疲れた顔、恐怖で叫んでいる顔などが含まれていました。高揚感や興奮を伝える強い快感情の絵文字には、ニヤリとした顔、ハート形の目で笑っている顔、投げキスをする顔などが含まれていました。中間的で覚醒度の低い絵文字の例としては、少し不機嫌そうな顔や少し微笑んだ顔などがありました。

 この研究は、口の形と目の形の違いにより、絵文字が快感情として評価される度合いは異なるかもしれない、との見解を提示しています。たとえば、上目遣いでニヤニヤしている顔は快感情と評価され、目を尖らせて怒った顔は不快感情と評価されました。覚醒度が最も高い絵文字には、不快感情の絵文字でも快感情の絵文字でも多くの場合、涙やハート形の目などの付属物が含まれていました。この研究は、絵文字が静止画であることを考えると、付属物の追加が感情の強さの認識に役立つかもしれない、との見解を提示しています。

 この研究は、絵文字が、これまでに報告されていたよりもきめ細かくヒトの感情状態を表示でき、ヒトの感情を評価しようとする研究では、絵文字を使うことで、参加者との関わりを高め、言葉の壁を克服するという利益が得られる、と結論づけています。こうした絵文字への反応に地域差や性差や年齢差があるのか、進化的基盤があるのか、といった観点からの研究の進展も期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


技術:顔の絵文字は人間の感情をうまく伝えている

 日本在住の被験者にヒトの顔の絵文字を見せて、絵文字に表現された感情を評価させる調査から、絵文字はヒトのさまざまな感情(「ストレスを感じている」から「とてもうれしい」まで)を包括的に表現していることが明らかになった。この研究結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。

 絵文字は、世界中で感情を伝えるために使われており、研究にも用いられてきたが、絵文字がヒトの感情状態にどの程度正確に対応するかについてはあまり分かっていない。

 今回、産業技術総合研究所の沓澤岳(くつざわ・がく)たちは、日本在住の20~39歳の被験者1082人にツイッター上の顔の絵文字74点を見せた。沓澤たちは、絵文字に表現された感情を解釈するため、被験者に対して、絵文字の解釈を不快から快までの9段階評価(感情価)、感情の強度を弱から強までの9段階評価(覚醒度)で示すように依頼した。その結果、これらの絵文字は、6つの異なるグループ(強い不快感情から強い快感情まで)にまとめられた。

 緊張やストレスを伝える強い不快感情の絵文字には、怒った顔、疲れた顔、恐怖で叫んでいる顔などが含まれていた。高揚感や興奮を伝える強い快感情の絵文字には、ニヤリとした顔、ハート形の目で笑っている顔、投げキスをする顔などが含まれていた。中間的で覚醒度の低い絵文字の例としては、少し不機嫌そうな顔や少しほほ笑んだ顔などがあった。

 沓澤たちは、口の形と目の形の違いによって、絵文字が快感情として評価される度合いが異なる可能性があるという見解を示している。例えば、上目遣いでニヤニヤしている顔は快感情と評価され、目を尖らせて怒った顔は不快感情と評価された。覚醒度が最も高い絵文字には、不快感情の絵文字でも快感情の絵文字でも、涙やハート形の目などの付属物が含まれていることが多かった。沓澤たちは、絵文字が静止画であることを考えると、付属物の追加が感情の強さの認識に役立つ可能性があるという考えを示している。

 沓澤たちは、絵文字が、これまでに報告されていたよりもきめ細かくヒトの感情状態を表示でき、ヒトの感情を評価しようとする研究では、絵文字を使うことで、参加者との関わりを高め、言葉の壁を克服するという利益が得られると結論付けている。



参考文献:
Kutsuzawa G. et al.(2022): Classification of 74 facial emoji’s emotional states on the valence-arousal axes. Scientific Reports, 12, 398.
https://doi.org/10.1038/s41598-021-04357-7

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