蚊の学習
蚊の学習に関する研究(Sougoufara et al., 2022)が公表されました。殺虫剤は、蚊が媒介する病気の感染拡大を抑えるために用いられています。過去数十年間で、殺虫剤耐性を獲得した蚊が増加していますが、それが、どの程度蚊の行動に起因するのかは分かっていません。この研究は、蚊を駆除するための一般的な殺虫剤(マラチオン、プロポクスル、デルタメトリン、ペルメトリン、ラムダ-シハロトリン)を用いて、デング熱とジカ熱と西ナイル熱を媒介するネッタイシマカ(Aedes aegypti)とネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)の雌を非致死量の殺虫剤に曝露させました。この研究は次に、これらの蚊を同じ殺虫剤に再び曝露して、摂食や休息をしなくなるのかどうか調べ、これが蚊の生存に影響するのか、評価しました。
殺虫剤処理したネットを通らなければ食物源に到達できないよう、設定された実験が行なわれました。事前に殺虫剤に曝露された蚊は、殺虫剤に曝露されていない蚊よりも殺虫剤処理されたネットを通らない割合が高い、と示されました。このネットを通ったのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカでは15.4%、ネッタイイエカでは12.1%となり、殺虫剤に曝露されていないネッタイシマカでは57.7%、ネッタイイエカでは54.4%でした。また、殺虫剤処理されたネットを用いて蚊を殺虫剤に曝露し、その後の生存率を比較すると、事前に殺虫剤に曝露された蚊の生存率は、曝露されなかった蚊の2倍以上でした。事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの38.3%とネッタイイエカの32.1%が生存したのに対して、曝露されなかったネッタイシマカの11.5%とネッタイイエカの12.9%のみが生存しました。
さらにこの研究は、殺虫剤の匂いのする容器ではなく、対照物質の匂いのする容器で休息する蚊の割合は、事前に殺虫剤に曝露された蚊の方が、曝露されなかった蚊よりも高かった、と明らかにしました。殺虫剤の匂いのしない容器で休息したのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカでは75.7%、ネッタイイエカでは83.1%となり、曝露されなかったネッタイシマカでは50.2%、ネッタイイエカでは50.4%でした。これらの知見から、非致死量の殺虫剤に事前に曝露された蚊は、これらの殺虫剤からの回避を学び、その結果として、より安全な食物源と休息場所を探し出して生き延びることができ、繁殖したと考えられる、と示唆されます。この研究は、こうした蚊の行動により蚊に対する殺虫剤の有効性が低下するかもしれない、と示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
生物学:非致死量の殺虫剤に一度曝露された蚊は殺虫剤を避けることを学ぶ
殺虫剤に一度曝露された雌の蚊は、殺虫剤を避けることを学ぶことを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。著書たちは、こうした蚊の行動により、蚊に対する殺虫剤の有効性が低下するかもしれないと示唆している。
殺虫剤は、蚊が媒介する病気の感染拡大を抑えるために用いられている。この数十年間で、殺虫剤耐性を獲得した蚊が増加しているが、それが、どの程度蚊の行動によっているのかは分かっていない。
今回、Frederic Tripetたちは、蚊を駆除するための一般的な殺虫剤(マラチオン、プロポクスル、デルタメトリン、ペルメトリン、ラムダ-シハロトリン)を用いて、デング熱、ジカ熱、西ナイル熱を媒介するネッタイシマカ(Aedes aegypti)とネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)の雌を非致死量の殺虫剤に曝露した。次に、これらの蚊を同じ殺虫剤に再び曝露して、摂食や休息をしなくなるかどうかを調べ、これが蚊の生存に影響するかを評価した。
殺虫剤処理したネットを通らなければ食物源に到達できないように設定した実験が行われた。事前に殺虫剤に曝露された蚊は、殺虫剤に曝露されていない蚊よりも殺虫剤処理されたネットを通らない割合が高かった。このネットを通ったのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの15.4%とネッタイイエカの12.1%、殺虫剤に曝露されていないネッタイシマカの57.7%とネッタイイエカの54.4%だった。また、殺虫剤処理されたネットを用いて蚊を殺虫剤に曝露し、その後の生存率を比較すると、事前に殺虫剤に曝露された蚊の生存率は、曝露されなかった蚊の2倍以上だった。事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの38.3%とネッタイイエカの32.1%が生存したのに対して、曝露されなかったネッタイシマカの11.5%とネッタイイエカの12.9%のみが生存した。
さらにTripetたちは、殺虫剤の匂いのする容器ではなく、対照物質の匂いのする容器で休息する蚊の割合が、事前に殺虫剤に曝露された蚊の方が、曝露されなかった蚊よりも高かったことを明らかにした。殺虫剤の匂いのしない容器で休息したのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの75.7%とネッタイイエカの83.1%、曝露されなかったネッタイシマカの50.2%とネッタイイエカの50.4%だった。
今回の知見から、非致死量の殺虫剤に事前に曝露された蚊は、これらの殺虫剤を避けることを学び、その結果として、より安全な食物源と休息場所を探し出して、生き延びることができ、繁殖したと考えられることが示唆されている。
参考文献:
Sougoufara S. et al.(2022): Standardised bioassays reveal that mosquitoes learn to avoid compounds used in chemical vector control after a single sub-lethal exposure. Scientific Reports, 12, 2206.
https://doi.org/10.1038/s41598-022-05754-2
殺虫剤処理したネットを通らなければ食物源に到達できないよう、設定された実験が行なわれました。事前に殺虫剤に曝露された蚊は、殺虫剤に曝露されていない蚊よりも殺虫剤処理されたネットを通らない割合が高い、と示されました。このネットを通ったのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカでは15.4%、ネッタイイエカでは12.1%となり、殺虫剤に曝露されていないネッタイシマカでは57.7%、ネッタイイエカでは54.4%でした。また、殺虫剤処理されたネットを用いて蚊を殺虫剤に曝露し、その後の生存率を比較すると、事前に殺虫剤に曝露された蚊の生存率は、曝露されなかった蚊の2倍以上でした。事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの38.3%とネッタイイエカの32.1%が生存したのに対して、曝露されなかったネッタイシマカの11.5%とネッタイイエカの12.9%のみが生存しました。
さらにこの研究は、殺虫剤の匂いのする容器ではなく、対照物質の匂いのする容器で休息する蚊の割合は、事前に殺虫剤に曝露された蚊の方が、曝露されなかった蚊よりも高かった、と明らかにしました。殺虫剤の匂いのしない容器で休息したのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカでは75.7%、ネッタイイエカでは83.1%となり、曝露されなかったネッタイシマカでは50.2%、ネッタイイエカでは50.4%でした。これらの知見から、非致死量の殺虫剤に事前に曝露された蚊は、これらの殺虫剤からの回避を学び、その結果として、より安全な食物源と休息場所を探し出して生き延びることができ、繁殖したと考えられる、と示唆されます。この研究は、こうした蚊の行動により蚊に対する殺虫剤の有効性が低下するかもしれない、と示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
生物学:非致死量の殺虫剤に一度曝露された蚊は殺虫剤を避けることを学ぶ
殺虫剤に一度曝露された雌の蚊は、殺虫剤を避けることを学ぶことを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。著書たちは、こうした蚊の行動により、蚊に対する殺虫剤の有効性が低下するかもしれないと示唆している。
殺虫剤は、蚊が媒介する病気の感染拡大を抑えるために用いられている。この数十年間で、殺虫剤耐性を獲得した蚊が増加しているが、それが、どの程度蚊の行動によっているのかは分かっていない。
今回、Frederic Tripetたちは、蚊を駆除するための一般的な殺虫剤(マラチオン、プロポクスル、デルタメトリン、ペルメトリン、ラムダ-シハロトリン)を用いて、デング熱、ジカ熱、西ナイル熱を媒介するネッタイシマカ(Aedes aegypti)とネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)の雌を非致死量の殺虫剤に曝露した。次に、これらの蚊を同じ殺虫剤に再び曝露して、摂食や休息をしなくなるかどうかを調べ、これが蚊の生存に影響するかを評価した。
殺虫剤処理したネットを通らなければ食物源に到達できないように設定した実験が行われた。事前に殺虫剤に曝露された蚊は、殺虫剤に曝露されていない蚊よりも殺虫剤処理されたネットを通らない割合が高かった。このネットを通ったのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの15.4%とネッタイイエカの12.1%、殺虫剤に曝露されていないネッタイシマカの57.7%とネッタイイエカの54.4%だった。また、殺虫剤処理されたネットを用いて蚊を殺虫剤に曝露し、その後の生存率を比較すると、事前に殺虫剤に曝露された蚊の生存率は、曝露されなかった蚊の2倍以上だった。事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの38.3%とネッタイイエカの32.1%が生存したのに対して、曝露されなかったネッタイシマカの11.5%とネッタイイエカの12.9%のみが生存した。
さらにTripetたちは、殺虫剤の匂いのする容器ではなく、対照物質の匂いのする容器で休息する蚊の割合が、事前に殺虫剤に曝露された蚊の方が、曝露されなかった蚊よりも高かったことを明らかにした。殺虫剤の匂いのしない容器で休息したのは、事前に殺虫剤に曝露されたネッタイシマカの75.7%とネッタイイエカの83.1%、曝露されなかったネッタイシマカの50.2%とネッタイイエカの50.4%だった。
今回の知見から、非致死量の殺虫剤に事前に曝露された蚊は、これらの殺虫剤を避けることを学び、その結果として、より安全な食物源と休息場所を探し出して、生き延びることができ、繁殖したと考えられることが示唆されている。
参考文献:
Sougoufara S. et al.(2022): Standardised bioassays reveal that mosquitoes learn to avoid compounds used in chemical vector control after a single sub-lethal exposure. Scientific Reports, 12, 2206.
https://doi.org/10.1038/s41598-022-05754-2
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